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第一章:視点はだいたい橘礼人
オオカミ使い登場
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「それじゃあ話はこんなものかな。少し長くなっちゃったけど、よろしくね、浜田さん」
「ああ、お前こそ死なないようにせいぜいがんばれよ」
浜田はそう言って扉を閉めた。橘は一度深呼吸をして近くの壁にもたれかかる。
浜田との会話は結果として十分以上かかり、その間ずっとしゃべっていたために疲れたのだ。
少しすると落ち着いたのか、壁から体を離し、リビングへと戻るために歩き出す。と、前を見るとそこには翁の面をかぶり、手に猟銃を持った男が立っていた。
「へ……」
突然の事態にほとんど思考が停止した橘の目の前で、オオカミ使いはゆっくりと、手に持っている猟銃の銃口が橘に向かうように動かしていく。橘は、猟銃が完全に自分に向けられた時点で、ようやく状況を呑み込み、とりあえず走って逃げようとオオカミ使いに背を向けて走り出そうとした。が、次の瞬間、銃声が鳴り響いた。
今度こそ本当にゲームオーバーかな、と橘は思ったが、不思議なことに体のどこもいたくない。オオカミ使いがいた場所を振り返ってみると、そこには、なぜかオオカミ使いではなく如月が立っていた。
「如月さん?」
橘がぼんやりしながら聞くと、如月は走って橘のそばにやってきて、思いっきりびんたした。
「しっかりしなさい、橘君!」
「へ、何? どういうこと?」
まったく何が起こったのかわかっていない橘に、如月が答えようとした瞬間、荒々しく扉が開いて浜田が飛び出してきた。如月がいるのを見て、
「あっちか」
「あっちよ」
と二人だけで短く会話した後、すぐに階段のほうへと駆けて行く。
いまだ事態がわからず混乱中の橘の手を取り、如月も浜田のあとについて走り出した。
「ほら、シャキッとしなさい。私たちも早く追うわよ」
如月の言葉に促されるようにして、とりあえず橘も走り始める。
橘が階段及び、一階の広間が見える場所に来た時に見えたものは、広間をすごい速さで疾走し、地下へと続く階段に向かっていくオオカミ使いと、二階から一階への階段をちょうど下りきった浜田。そして、銃声を聞いてリビングから出てきたのか、沢知を先頭に数人がオオカミ使いを追うように走っていく姿。また、その姿を見ながらリビングの扉周辺をうろうろしている人の姿だった。
橘はようやくここにいたり現状を完全に把握し、オオカミ使いを追うとしている如月を止め、リビングに向かうように言った。如月は特に異論はないようだったので、二人でそのままリビングでたむろしている人々の元まで歩いて行く。
リビングにたどり着くと、橘は扉周辺をうろうろしている四宮に話しかけた。
「みんな無事なの?」
四宮はおろおろとしながら
「あー、えっと、橘か。お前無事だったんだな。俺らは全員無事だぜ。それよりも、お前こそ」
四宮がそこまで言ったところで、望月が話に加わってきた。
「橘君無事だったの! 突然銃声がしたからすごく心配したんだよ。みんなでリビングから出てみたら、翁の仮面をして猟銃を持った男がものすごい勢いで走ってるから、てっきり橘君が撃たれたんじゃないかと思って。上で一体何があったの?」
「ああ、浜田さんと話し終えてリビングに戻ろうとしたら突然目の前にオオカミ使いが現れたんだ。まあ今はその話はいったん後にして、僕たちもオオカミ使いを追いかけた方がいいんじゃないかな。銃声は聞こえてこないから、もしかしたらオオカミ使いをうまく捕まえられたのかもしれないし」
橘はリビング周辺にいる人々にそう言って、オオカミ使いが逃げて行った、地下へと続く階段に向かって歩き出した。
「ああ、お前こそ死なないようにせいぜいがんばれよ」
浜田はそう言って扉を閉めた。橘は一度深呼吸をして近くの壁にもたれかかる。
浜田との会話は結果として十分以上かかり、その間ずっとしゃべっていたために疲れたのだ。
少しすると落ち着いたのか、壁から体を離し、リビングへと戻るために歩き出す。と、前を見るとそこには翁の面をかぶり、手に猟銃を持った男が立っていた。
「へ……」
突然の事態にほとんど思考が停止した橘の目の前で、オオカミ使いはゆっくりと、手に持っている猟銃の銃口が橘に向かうように動かしていく。橘は、猟銃が完全に自分に向けられた時点で、ようやく状況を呑み込み、とりあえず走って逃げようとオオカミ使いに背を向けて走り出そうとした。が、次の瞬間、銃声が鳴り響いた。
今度こそ本当にゲームオーバーかな、と橘は思ったが、不思議なことに体のどこもいたくない。オオカミ使いがいた場所を振り返ってみると、そこには、なぜかオオカミ使いではなく如月が立っていた。
「如月さん?」
橘がぼんやりしながら聞くと、如月は走って橘のそばにやってきて、思いっきりびんたした。
「しっかりしなさい、橘君!」
「へ、何? どういうこと?」
まったく何が起こったのかわかっていない橘に、如月が答えようとした瞬間、荒々しく扉が開いて浜田が飛び出してきた。如月がいるのを見て、
「あっちか」
「あっちよ」
と二人だけで短く会話した後、すぐに階段のほうへと駆けて行く。
いまだ事態がわからず混乱中の橘の手を取り、如月も浜田のあとについて走り出した。
「ほら、シャキッとしなさい。私たちも早く追うわよ」
如月の言葉に促されるようにして、とりあえず橘も走り始める。
橘が階段及び、一階の広間が見える場所に来た時に見えたものは、広間をすごい速さで疾走し、地下へと続く階段に向かっていくオオカミ使いと、二階から一階への階段をちょうど下りきった浜田。そして、銃声を聞いてリビングから出てきたのか、沢知を先頭に数人がオオカミ使いを追うように走っていく姿。また、その姿を見ながらリビングの扉周辺をうろうろしている人の姿だった。
橘はようやくここにいたり現状を完全に把握し、オオカミ使いを追うとしている如月を止め、リビングに向かうように言った。如月は特に異論はないようだったので、二人でそのままリビングでたむろしている人々の元まで歩いて行く。
リビングにたどり着くと、橘は扉周辺をうろうろしている四宮に話しかけた。
「みんな無事なの?」
四宮はおろおろとしながら
「あー、えっと、橘か。お前無事だったんだな。俺らは全員無事だぜ。それよりも、お前こそ」
四宮がそこまで言ったところで、望月が話に加わってきた。
「橘君無事だったの! 突然銃声がしたからすごく心配したんだよ。みんなでリビングから出てみたら、翁の仮面をして猟銃を持った男がものすごい勢いで走ってるから、てっきり橘君が撃たれたんじゃないかと思って。上で一体何があったの?」
「ああ、浜田さんと話し終えてリビングに戻ろうとしたら突然目の前にオオカミ使いが現れたんだ。まあ今はその話はいったん後にして、僕たちもオオカミ使いを追いかけた方がいいんじゃないかな。銃声は聞こえてこないから、もしかしたらオオカミ使いをうまく捕まえられたのかもしれないし」
橘はリビング周辺にいる人々にそう言って、オオカミ使いが逃げて行った、地下へと続く階段に向かって歩き出した。
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