私の使い魔がたわしだった件

雷庵

文字の大きさ
2 / 20

二話 よう、俺が娘の使い魔だぜ?

しおりを挟む
「アリス、使い魔の召喚は終わったの? ていうか、なんで肩にたわし乗っけてるの」

 少女はうなだれながらたわしを肩にのせて、両親の待つリビングへと戻った。リビングにはアリスと呼ばれた少女の両親が椅子に座っていた。父はさえない男で、母は背は小さいがかわいらしい印象の女性だ。たわしの精霊を召喚した少女[アリス]は疲れ果てたかのように、椅子に座るや否やテーブルに突っ伏した。父は心配そうに声をかける。

「おいおい、アリス大丈夫かい? 使い魔の召喚に失敗したのかい? 魔法使いの血が流れてない家系なんだから無理しなくてもいいんだよ?」

「うっせぇ、俺が使い魔だ! 俺はたわしの精霊! よろしくな!」

 アリスの肩から落ちたたわしが突如叫びだした。驚きのあまり父は椅子から転げ落ち、母は椅子から立ち上がり両手で口を押えるとと異形のものを見るかのような目つきでたわしを凝視する。アリスは力なく上半身を起こし、落胆した様子で

「あー……うん、一応使い魔の召喚は成功したんだ……でもね、犬とか猫とか生き物じゃなくて、出てきたのがたわしの精霊だったの……はぁ」

 と言うとアリスはもう一度深くため息をつく、そしてたわしを眺める……たわしは視線に気づいたのか、アリスに向かって細い指でサムアップを向けると極上の笑顔を作った。それを見てアリスはさらにため息をついた。

「た、たわしの精霊……? 四大元素や光と闇以外に精霊なんていたのね、しらなかったわ……ア、アリス落ち込まないで? ママは応援してるから。ね、トランプ」

「当然だともキャロット、僕たちの愛するアリスだもの。たとえ使い魔召喚が失敗だとしても僕たちの最愛の娘である事は変わりないさ」

 母の名はキャロット、父の名はトランプ。トランプは体を起こし椅子を起こし再び椅子に腰かける。キャロットは先ほどよりはリラックスしているものの、たわしを凝視している。会話を聞いていたたわしの表情は険しい。

「あんたらなぁ、黙って聞いてれば好き勝手いってるが……俺を召喚したのが失敗だっていうのか?」

「違うの?」

 アリスとキャロットとトランプは同時に声を上げた。当然だ、通常の使い魔といえば動物が9割以上を占めている、極稀にモンスターであったり四大元素や光か闇の精霊であったりもするが、生活用品が命をもって使い魔になることは一般的に知られている歴史上ありえないからだ。それがゆえに3人はたわしの存在そのものを失敗と定義する。しかしたわしは腑に落ちないようだ。

「そもそも人間と話せるたわしってすごいと思わね? よく考えてほしい、他の使い魔どもは主人と同種族との意思疎通しかできないだろう。俺は人間の言語を理解し! そして意思疎通できる! どうだ!!」

 たわしがこぶしをにぎり力説する。さらにたわしは気分が乗ってきたようだ。

「そして俺の魔力量はインフィニティー……無限だぜ! マスターの魂の美しさに俺は呼ばれたんだぜ?」

 たわしは良い顔をつくりサムアップと決め顔をアリスに向ける。しかしアリスは盛大なため息をついた。そして怪訝な表情を浮かべる。

「意思疎通できるのはすごいけどさ、魔力無限とか嘘くさいんだけど……」 

「疑うか……いいだろう、おばさん! ちょっ」

 おばさん……その言葉を発するや否やキャロットは無表情で突如たわしを握りしめ自分の顔の近くにもっていく。

「おば、さん、だってぇ? 魔力無限だか精霊だかしらないけど言葉に気をつけなさい? 次言ったら針金ほどいてゴミにしてやるからね」

 アリスとトランプはアチャーという顔をしている。どうやら禁句だったようだ……たわしは顔を青ざめた様子で

「いいすぎました、以後注意します。本当にごめんなさい」

 ならよろしいと、キャロットに笑顔が戻り、たわしは無事テーブルに帰還することができた。以降おばさんという言葉を二度と口にすまいと、心に誓ったたわしであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...