私の使い魔がたわしだった件

雷庵

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十六話 よう、進路相談第一弾だぜ

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その日の授業を終え家に戻ったアリス。アリスがキッチンに行くと母のキャロットがテーブルに座って編み物をしている。

「おかえりアリス、あとたわし様。今日の授業はどうだったの?」

 編み物に夢中になりつつもアリスに優しい声をかける。この編み物もアリスの学園の教育費の足しになっているとアリスは理解していた。アリスの気持ちの中に[高位の魔法使いの弟子になれば学費がいらない]という学園長の言葉が過る。キャロットはアリスの様子がおかしい事を不審に思い編み物の手を止めアリスを見る。いつものアリスと違って元気がないように見える。

「アリス、なにかあったの? アリスがそんな思い悩んだような顔をするなんて珍しい事よ?」

「学園長が学校でてってもいいぜ! だってよ」

「ちょっと! たわし!? 誤解させるような言い方しないで!?」

 キャロットの目は点になる。

「一体なのがあったの……?」

 アリスは今日あった出来事をキャロットに伝える。キャロットは編み物をテーブルに置くと眉間に皺をよせテーブルで頬杖をつく。

「たわし様が本当に凄いのはわかったわ、でも難しい問題ね。私としてはちゃんと魔法学院を卒業したほうがいいと思うの……でももしもよ? 何かの弾みで王宮勤めになったとしたら、それはそれで凄い事なのも間違いないわ」

「へへーん、さすが姉さん! 話が早い! 俺とアリスちゃんの二人が合わされば無敵なんだぜ?」

 たわしは上機嫌でテーブルの上でクルクルと踊るように回りだす。しかしキャロットはそれを握りしめ持ち上げ、たわしと目を合わせる。

「でもね、あなた達が本当にそんな力があるのなら、間違いなく戦争に参加させられたり、研究材料として使われたりすると思うの。たわし様は歴戦錬磨の猛者だろうから心配してないけど、アリスに人殺しや酷い扱いをされてほしくないの」

「ママ……」

「とはいえ……アリスとたわし様、二人の進路なの。私には魔法使いと使い魔の関係というのがどういうものかわからないけど、話から察するに軽いものじゃないっていうのはわかる。だから……アリスには危ない事をしてほしくないけど、二人で進路を決めたほうがいいわね」

「さすが姉さん! 話が早い!」

 キャロットはたわしをテーブルに戻すと、たわしはアリスの頭の上に飛び乗る。流石に慣れたのかアリスも表情を変える事はなくなった。キャロットは人差し指をアリスとたわしに向けると

「あなた達がどういう道に進もうとかまわない、けど絶対に人の役に立つ為にその力を振るいなさい。いいわね?」

 人の役に立つ……アリスは神妙な表情で考え込む。まだ学校で習う魔法で人の役に立つというのが難しいのもある実情があった。

「極端に言えば魔物や怪物をやっつけるのも人に感謝される仕事だな! そんでお金がもらえるんだから、冒険者! 冒険者がいいぞ!」

「あんたねぇ、なんでそんなに冒険者を勧めるの? そりゃたしかに? 英雄と呼ばれた冒険者もいたし、そういうのは憧れもするけど……でも冒険者は怖いかな」

「ノンノン、いいかい子猫ちゃん? 冒険者になれば各地を回って、毎日が冒険なんだよ! というか俺も冒険したいぜ!」

「あんたねぇ……たわしはそれでいいんだろうけど、私の気持ちは置いてけぼりにしないでほしいんだけど」

「俺も剣と鎧を付けて冒険したいんだよぉぉ!! たのむよぉ、アリスちゃぁん!!」

 たわしが装備できる剣と鎧を想像したキャロットとアリスはつい吹き出し笑い出してしまう。よもやその事を笑われてるとつゆ知らず、いつものノリがウケたのだろうと思いたわしも笑い転げるのであった。

「ふふ、まぁ冒険者も悪くはないわね。安定はしないだろうけれど、今も昔も若い子達に人気の職業だものね。私もパパと知り合う前は冒険者になりたいって思ってたものよ」

「え、ママが!?」

「こう見えても少しは槍を扱えるのよ? お父さん、アリスのおじいちゃんなんだけど、昔はお城の兵士だったの。だから私がお願いして教えてもらった事があってね……まぁ、冒険者になりたいっていったら凄い怒られたけどね。あんなならず者みたいな職業につくんじゃない! って。お堅いお父さんだったのよ」

「じゃぁ今でも練習とかやってるの?」

「まさか、もうしてないわよ。アリスやパパのごはん作ったり、編み物したり忙しいし、武器に頼らなくても生きていけるもの。それより、アリスの進路についてパパにも話は私からしておくから。あと学園長さんにも私から連絡するから、アリスはいつも通りちゃんと魔法学園に通う……って事でやってもらえないかしら?」

 キャロットはアリスに微笑みを浮かべる、アリスもそれにこたえて軽く笑みを浮かべ頷く。それを見るとキャロットは立ち上がりアリスの頭を撫でるとキッチンを後にする。

「うう、家族っていいなぁ! うえーん!」

 すすり泣く声が聞こえてきたと思った矢先たわし様が号泣していた。

「ど、どうしたのたわし!?」

「だってよぉ、俺家族なんていないからこういう温かい空気ってヤツに弱いんだよ……俺も微笑まれてナデナデされたいぜ……」

 アリスはついほほえましく思えてしまった。傍若無人のようなたわしであってもそういう側面があるのか……と思うとたわしのさみしがり屋具合が妙に可愛く思えていた。涙を流すたわしに微笑みながら頭を撫でる。

「これで満足できる?」

 たわしは感極まりアリスの指に抱き着き号泣する。アリスの指は涙と鼻水と涎でベトベトになっていた。汚い……良かれと思ってしてみたが、やめとけばよかった……アリスは微笑みを歪ませながらたわしが落ち着くまで我慢するのであった。
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