私の使い魔がたわしだった件

雷庵

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十八話 よう、アリスちゃんが人類最強になってしまったぜ……

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 アリスは目覚めた、たわしを下敷きにしたままに。そして今まで知りもしなかった知識が頭の中の引き出しから取り出せる感覚になっていた。

「おはよう、アリスちゃんちゃんこ!」

 下敷きになったままたわしはVサインを見せている。アリスはとっさに身を起こすとたわしを持ち上げる。たわしはアリスの重みでぺちゃんこになっていた。

「えっと、こういう時はオールヒールね」

 たわしはニヤリとした。そしてアリスはハッとする。

「え……オールヒールってヒール系の遺失魔法よね……あれでも魔法式が理解できてる……これがたわしの知識なの!?」

「そそ! こう見えて魔法エキスパートだぜ? でもちょっと回復してくれると嬉しいね」

「うん、まってて」

 アリスは目を閉じて知識を手繰る、そしてたわしに向かって指を鳴らすと潰れたたわしはふくよかな姿に戻った。アリスは信じられないという表情でたわしを見つめる。

「遺失魔法の無詠唱発動……それだけじゃない、ダブルキャストもできそう……すごい、私大魔法使いみたい!」

「アリスちゃんはこの世界に唯一無二の存在になっちまった、俺の知る限りこの世界の人間じゃ、すでにアリスちゃんに勝てる相手はいないぜ?」

 アリスは目を見開く、そして興奮しているのか鼻息が荒くなりつつある。

「じゃ、じゃぁ私もテレポーテーション使えるようになったし、つかってみよっと」

「ちょまやめて! 俺の魔力も無限じゃないんだぜ! 知識しか教えてない!」

「あ……そっか」

 アリスはしょぼんとする。なぜなら魔法を使う為の魔力は、たわしの魔力を消費しているのである。アリスの魔力そのものはとても少なく、遺失魔法を行使出来る程の魔力などない。せいぜい中級魔法を2~3回行使すれば枯渇する程度なのだ。

「使ってもいいけど、使いすぎると俺が辛い思いするから気を付けてくれよな」

「うん、わかった。でもたわしを懲らしめたいときはガンガン魔法使えばいいってのもわかったかな」

 たわしは大きくうなだれ大きくため息を吐いた。そして一つ杞憂もあった……幼子の慢心は心の形成を歪めてしまう事があるという事を。しかし深くは考えないことにした。

「この知識とたわしの魔力さえあれば、正直世界を支配できそう」

「まってアリスちゃん、いきなりそんな物騒な事いうと超不安になるんだけど」

 たわしは後悔した、アリスと知識を共有した事を。しかしアリスの無邪気な笑みを見ると嬉しくもあり複雑な気分に陥る。

「俺はアリスちゃんの使い魔だからよ、アリスちゃんがどんな選択しようとついてくぜ」

「ありがとたわし! でも別に今何かしたいって思わないかな……この力で何かを変えたいとも思ってないし、英雄になりたいとも思わないし」

「てっきり魔法知識は全知となったんだから、皆にひけらかすとおもってたぜ」

「は!? たわしじゃあるまいし。私は目立たないで静かに学園生活を送りたいだけなの!」

「知識をひけらかせば、アリスちゃんの愛しのクロードの気を引けるぜぇ?」

 アリスは力の限りたわしを叩き潰す。たわしは声にならない声を上げる。

「あんた、いい加減にしないと張り倒すよ?」

「張り倒す前にいってほしかったぜ……」

 アリスはおもむろに目を閉じて共有された知識を手繰る。

「ちょっとどんな魔法があるかしらべるから、たわしちょっと静かにしてて」

「あいよ」

 アリスの脳裏に様々な知識が浮かび上がってくる。アリスは常々考えていた事があった、[魔法とは何なのか]である。学園で学ぶ内容では 魔法とは大気中のマナに想像の魔法公式を当てはめる事により、マナの魔力反応を引き起こす事で発生する現象 というのが通説だ、しかし実際はルーン文字と言ういくつかの図形の連続を用いて、マナの魔力反応をコントロールするということを知る。

「ねぇたわし? 例えばエナジーアローってルーン文字をこんなかんじで組み合わせて生成されるんだよね?」

「静かにしてって言ったり、質問してみたり、アリスちゃんは子猫ちゃんのように気まぐれだぜ。ちなみに質問はその通りだな、マナのコントロールの基礎さえできていれば、その公式を使うことで誰にでも使えるようにルーン文字が組み込まれてるんだが……俺から言わしてもらえればつまらない公式だぜ。応用性が全くないからな」

 アリスはノートを開くとルーン文字を書き始める。

「うん、逆に言えば簡単な公式だから初級者向けの魔法だよね。でもさ? これってもし公式の中にこのルーン文字を書き加えると……?」

「そうだよ、エネルギーボルトがさらに広範囲化するなぁ」

「じゃぁじゃぁ、さらにこのルーン文字をつけ加えると……エネルギーボルトが中級魔法のエネルギーブラストになるんだよね?」

「原理的にはそうだ……が、エネルギーブラストっていうのはルーン文字が少し違うように作られているな。魔法公式で作られてるし誰にでも使えるように簡単で応用ができない形でつくられてんな」

「え、ってことは……エネルギーブラストに強化して上級魔法のエネルギーエクスプロージョンにするじゃない? 広域化と出力強化、さらに範囲操作を組み合わせたら……少なくともこの世に存在しない魔法になるよね?」

「そうだなぁ、人間が使ってる今の魔法公式というシステムでは存在しないし、ルーン文字を使わないと生成はできないぜ」

 アリスは目を大きく見開く。そしてガッツポーズを小さく作り表情をほころばせる。

「わぁ、わたしがオリジナルの魔法を作ったってことになるんだよね!?」

「そうだぜ! アリスちゃんに不可能はないぜぇ? まぁもっとも、ルーン文字を魔法公式にローカライズしてもアリスちゃんにしか使いこなせないぜ?」

「なんで?」

「ルーン文字と魔法公式は似ているようで全然違う。アリスちゃんのオリジナルの魔法は比較的簡単なルーン文字の組み合わせだが、これを魔法公式に置き換えると膨大な公式と極めて精密なマナ操作を必要とされちゃうんだぜ? 何故ならその魔法を誰にでも簡単に使えるようにローカライズしてないからだ。そしてそのローカライズ技術は俺の知識には入ってないんだぜ?」

「ふーん、まぁでも私とたわしが使えればいっか」

 アリスはふふっと笑みを浮かべ椅子に座ると鼻歌を奏でながら何かを考えていた。そしてたわしはそれを見てまんざらでもない笑みを浮かべていた。
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