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EP1_1章
1章_6 公都レフコーシャ
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さっぱりとした気持ちで宿を離れ、
中央広場に出た。
外はもう暗くなり始めていて、
街の酒場も賑わいを見せ始めている。
カムランは少し通りの中に入った【カルメオ・バル】
という店に吸い込まれていった。
「いらっしゃい。あー、腹の減った顔だね。
うちは、旨くて、安くて、話の集う店さ。
賊から騎士まで大歓迎。
つまり、あんたにもってこいだ。さあ入んな。」
入るなり、元気なオヤジに出迎えられた。
カムランは、辛口のシェリーに、
羊のリブとポテトのソテーを注文してカウンターに座った。
それから料理が出るまでに五分と待っただろうか。
「ほら出来たぞ兄ちゃん。たらふく食べてくれな!」
オヤジの満面の笑みとともに山盛りのリブが乗った皿が出てきた。
肉汁が浮き出る表面に、爽やかな赤色のベリーソースがかかっている。
ローズマリーも効いていてとても良い香りだ。
半分に切っただけの特大ポテトも食欲をそそる。
目の前の大皿に堪らずリブにかぶりつく。
朝から少しの魚と果物しか口にしていないせいもあってか、
最高に美味しく感じた。
「なんてこった。これはウマイな!」
オヤジは得意げにフフンと笑う。
「当たり前よ。兄ちゃん、初めて見る顔だな。旅人さんかい?」
「旅の商人だよ。行く先々の町で御用聞きってとこだ。
王都からさっき来たばっかりでね。ここは空きっ腹には最高の店だな。」
空腹の体にシェリーが回って上機嫌になる。
話の止まらないオヤジをよそに、山盛りの皿に取り掛かった。
気付けば店も繁盛し始め、
カムランの隣に、長身の男と太った男の二人組が座った。
「おやっさん、ラム酒とチキンのトマト煮込みを二人前!」
既に二件目だろうか、二人とも顔が赤い。
「おお、兄ちゃん、一人で随分食ってるな。成長期だねえ。」
不意に長身の男がカムランにふっかけてくる。
「確かに、この調子だとあんたの隣の兄弟みたいになっちゃうな。」
カムランは隣にいた太った男に笑いかけた。
「ハッハッハ。だってよォ、兄弟!」
二人の男はしばらくゲラゲラ笑っていたが、
いつの間にかカウンターに出されていた料理に気付いて手を付け始めた。
「そういえば、岩旦那の求人、見たかよ。
ひと月の給金が金貨三十五枚だってさ。鍬とスコップ持参で来いって話だ。」
太った男が熱を持って話す。
「ああ、見たさ。ただ、あのケチな野郎が金貨三十五枚、払うかねえ。
それに、鍬とスコップだ?いつの間に農家になったんだ?」
長身の男は肩をすくめた。金貨三十五枚と言えば、大した金額だろう。
カムランはこっそり聞き耳を立てた。
「俺もそうは思った。でも岩旦那ときたら、最近景気良いみたいでよ、
部下にご馳走したって話も聞くし、趣味か知らねえが馬なんか買ったらしいぜ。」
「そんな話になってるのなら、嘘か本当か、旦那の屋敷まで行ってみようか、兄弟。」
太った男の話を聞いて、長身の男も乗り気になっていた。
単なる儲け話か、裏の危ない話か。
何れにせよ、旅疲れでもう眠い。
カムランは今日はこの辺りで切り上げることにした。
銀貨二枚と銅貨六枚。酒三杯にあの量の食事にしてはかなり安く上がっている気がする。
カムランは上機嫌で宿に戻り、
そのままベッドに飛び込んだ。
部屋に戻る途中で、メイドが何か言っていたような気がしたが、
あまりよく聞こえなかった。
一体何の用だっただろうかと思い返すうちにそのまま眠ってしまっていた。
中央広場に出た。
外はもう暗くなり始めていて、
街の酒場も賑わいを見せ始めている。
カムランは少し通りの中に入った【カルメオ・バル】
という店に吸い込まれていった。
「いらっしゃい。あー、腹の減った顔だね。
うちは、旨くて、安くて、話の集う店さ。
賊から騎士まで大歓迎。
つまり、あんたにもってこいだ。さあ入んな。」
入るなり、元気なオヤジに出迎えられた。
カムランは、辛口のシェリーに、
羊のリブとポテトのソテーを注文してカウンターに座った。
それから料理が出るまでに五分と待っただろうか。
「ほら出来たぞ兄ちゃん。たらふく食べてくれな!」
オヤジの満面の笑みとともに山盛りのリブが乗った皿が出てきた。
肉汁が浮き出る表面に、爽やかな赤色のベリーソースがかかっている。
ローズマリーも効いていてとても良い香りだ。
半分に切っただけの特大ポテトも食欲をそそる。
目の前の大皿に堪らずリブにかぶりつく。
朝から少しの魚と果物しか口にしていないせいもあってか、
最高に美味しく感じた。
「なんてこった。これはウマイな!」
オヤジは得意げにフフンと笑う。
「当たり前よ。兄ちゃん、初めて見る顔だな。旅人さんかい?」
「旅の商人だよ。行く先々の町で御用聞きってとこだ。
王都からさっき来たばっかりでね。ここは空きっ腹には最高の店だな。」
空腹の体にシェリーが回って上機嫌になる。
話の止まらないオヤジをよそに、山盛りの皿に取り掛かった。
気付けば店も繁盛し始め、
カムランの隣に、長身の男と太った男の二人組が座った。
「おやっさん、ラム酒とチキンのトマト煮込みを二人前!」
既に二件目だろうか、二人とも顔が赤い。
「おお、兄ちゃん、一人で随分食ってるな。成長期だねえ。」
不意に長身の男がカムランにふっかけてくる。
「確かに、この調子だとあんたの隣の兄弟みたいになっちゃうな。」
カムランは隣にいた太った男に笑いかけた。
「ハッハッハ。だってよォ、兄弟!」
二人の男はしばらくゲラゲラ笑っていたが、
いつの間にかカウンターに出されていた料理に気付いて手を付け始めた。
「そういえば、岩旦那の求人、見たかよ。
ひと月の給金が金貨三十五枚だってさ。鍬とスコップ持参で来いって話だ。」
太った男が熱を持って話す。
「ああ、見たさ。ただ、あのケチな野郎が金貨三十五枚、払うかねえ。
それに、鍬とスコップだ?いつの間に農家になったんだ?」
長身の男は肩をすくめた。金貨三十五枚と言えば、大した金額だろう。
カムランはこっそり聞き耳を立てた。
「俺もそうは思った。でも岩旦那ときたら、最近景気良いみたいでよ、
部下にご馳走したって話も聞くし、趣味か知らねえが馬なんか買ったらしいぜ。」
「そんな話になってるのなら、嘘か本当か、旦那の屋敷まで行ってみようか、兄弟。」
太った男の話を聞いて、長身の男も乗り気になっていた。
単なる儲け話か、裏の危ない話か。
何れにせよ、旅疲れでもう眠い。
カムランは今日はこの辺りで切り上げることにした。
銀貨二枚と銅貨六枚。酒三杯にあの量の食事にしてはかなり安く上がっている気がする。
カムランは上機嫌で宿に戻り、
そのままベッドに飛び込んだ。
部屋に戻る途中で、メイドが何か言っていたような気がしたが、
あまりよく聞こえなかった。
一体何の用だっただろうかと思い返すうちにそのまま眠ってしまっていた。
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