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EP1_1章

1章_7 公都レフコーシャ

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 翌朝、朝食を知らせるメイドのノックで目が覚めた。
既に日は高く昇っており、時計の針は十時を回っていた。


カムランは寝癖のついた髪を押さえてドアを開ける。

「リード様、おはようございます。
朝食をご用意いたしました。お召しに上がりください。」

エマと名乗るそのメイドは、
部屋の机に食事を並べだした。

パンとイチジクのジャム、サラダに南瓜のポタージュ、
山羊のミルクとブルーベリーが上品に並んだ。

カムランは滅多に受けないおもてなしを目の前にし、
気持ちよく朝食に取り掛かった。

エマは部屋から下がろうとしたが、
ここの事について教えてほしい、
というカムランの頼みを快諾し、食事の間二人は色々な話をした。


まず、通貨について。

この街も王都と同じく、
銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚の価値だった。
やはり昨日の酒場は安く上がる店のようだ。

そして、メリッサはこの部屋を二泊とってくれていた。
今回の支払いはメリッサが済ませてくれたそうだが、
一泊金貨三枚という値段を聞いて、
今日のうちに宿を探しておこうとカムランは心に決めた。

他にも、魚は雨季のサルヘナ湖から採れるものが基本で、
あまり数が多くないという食糧事情や、
迷い星の存在により夜間に門外に出ることが原則禁止とされているという話も聞いた。


昨日のちょっとした儲け話に出てきた
「岩旦那」という者については、エマは知らないという。

もっとエマから話を聞いておきたいカムランだったが、
今日の昼に城に来るようにと言っていたメリッサのことを思い出し、
朝食を済ませて顔を洗った。

汚れていた服をエマに預け、
湯治場で寝汗を流すとすぐに部屋に戻って着替えを済ませ、
足早に宿を出る。

エマが言うには、
ここから大公の城までは歩いても十五分ほどだという。
まだ遅れるほどの時間ではないが、
貴族というのはどうにも時間にうるさいものだ。

それを心得ているカムランは、予定より少し早めに城へと向かった。


道のりは単純で、
中央広場からまっすぐに伸びた中央通りをひたすら歩く。

その通りの終点、
日中の間だけ降りているという跳ね橋を渡り、
階段を上るともう門に着いていた。
着くなり門兵に挨拶をして近づく。


「王都からの親書をお渡しに参りました。封緘の印をご確認ください。」
詰問される前にこちらから話しかける。
後ろ暗いことは特にないのだが、怪しまれないための常套手段が、
そのままカムランの癖になっている。

王都で依頼された親書を門兵に見せ、
門を入ってすぐの執務所に親書を引き渡した。

「この中身、見てはいないだろうな?」

「もちろん、王都の封緘書にそんな真似はできませんよ。」

年配の執務官の低い声ににこやかに返答し、
メリッサに召喚されていることを告げた。

こういうことは門兵よりも執務官に尋ねる方が手っ取り早いものだ。

「なるほど、カムラン・リード卿ですな。伺っております。」

カムランの予想通りの返答が返ってきた。
最初のような固さを解いた執務官は、
席を立ってカムランを案内してくれた。


城内は、華やかさはあまりなく、シンプルな造りを感じる。
山脈に囲まれた台地の中央に建つ城ともあれば、
資材を運び込むことすら大仕事だったのだろう。

しかし、各所に備わった見張り塔や石壁の厚みから、
このレフコーシャは防衛要塞として造られていることもよく分かった。


「造りこそ質素だが、この城は建立してもう百年と半世紀になる。
その間、一度たりとも攻められたことの無い、由緒ある城なのです。」

独り言のように、年老いた執務官は話した。

「さあ、此処が謁見の間。入られよ。」

執務官に促され、近衛兵が謁見の間の扉を開いた。
中に進み入り、カムランは玉座の前に傅いた。
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