琥珀の夜鷹_ep1. 星降りの守り人

朝河 れい

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EP1_2章

2章_7 エンタール公国悩みの種

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 次のゴンドラを待ってテントに戻ると、
マルスが今朝と同じような恰好で伸びていた。


「早かったんだな。なにか手掛かりは?」
昨日の酒場の一件以来、二人は自然に仕事言葉がとけていた。

「手掛かりなんてあるもんか。
ここについてからついさっきまで、ひたすら肉体労働だ。」

文句たらたらのマルスによれば、
彼らの班は坑道内の採掘ではなく、
守備軍の監視のもとに集めた鉱石をひたすら運搬していたのだという。

もう少し情報交換をしようという意識はあったが、
二人とも今日の作業の内容について話しているうちに眠ってしまった。


翌日も採掘と運搬を繰り返し、新たな発見もないままに時間だけが過ぎていった。


それから三日目の夜番、
カムランとマルスは同じ班に入ることにした。

今日の作業は採掘のようだ。

新月の夜だけあって、
ゴンドラから大穴へ降りる間は班員の顔すらほとんど見えなかった。

坑道での作業に入ると、
カムランたちは初日の太った男と同じ班になっていた。

「おう若いの、三日も持つとはたいしたもんだな。
そっちの小僧は友達か?新入りってなら、
また俺が手ほどきしてやってもいいぜ。」

「いや、こっちの小僧も三日目だ。悪いね。」

カムランがおどけて答えると、
太った男はつまらなそうに作業に戻っていった。

松明で辺りを見回すと、
作業場の端には見覚えのある大樽がある。
どうやらカムランが初日に入った坑道と同じところのようだ。

作業の合間に坑道の奥や班員の動きを確認していたが、
特に変わったこともなかった。

仕方なく作業に戻ると、
突如大穴の方から守備兵たちの慌てた声が聞こえてきた。


「さあ、はやく坑道の避難所へ!」


どうやら宿営地で休む鉱夫に対して呼びかけているようである。

「またか!最近多いな。
こうしょっちゅう出られると仕事どころじゃねえ。」

班員の鉱夫が言うには、
迷い星の出現がこのところ増えているらしい。

怯える鉱夫は不安そうに顔を見合わせる中、
外からも逃げるように鉱夫達が坑道へなだれ込んできた。


カムランは坑道を出て迷い星を追おうとしたが、
作業場に太った男がいないことに気が付いた。


松明をかかげると、大樽の位置がさっきと違う。


カムランはマルスに小声で状況を話し、
マルスに外にいる迷い星の行方を任せ、
カムランは太った男を探すことにした。

隅で縮こまっている班員をよそに、
作業場の奥の大樽を調べる。

よく見てみると、
当初大樽のあった位置の地面に扉があることに気付いた。

班員たちに気付かれないように一旦松明を消し、
扉を開けて下に降り立つと、ほのかに風を感じる。

再び松明を灯すと、
坑道よりもしっかりした造りの通路がカムランの眼前に伸びていた。

通路の地面にはまだ新しいと思われる人の足跡がある。
カムランは延々と続くその足跡を急いで追った。
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