27 / 104
EP1_2章
2章_9 星石鉱の守備隊長
しおりを挟む
牡牛が弱ったマルスに狙いを定め、
走り出さんと構えたその時、
守備兵の輪から一騎の騎馬が踊り出た。
相当に急いで来たのか、
馬の息はすっかり上がってしまっている。
「金髪君、なかなか頑張るじゃない。
ウチの兵隊も助けてくれたんだってね。
こんなやつを相手にこれだけやれるなんて。」
流れるように馬から降り立ったのは、
星石鉱の若き守備軍隊長、エルザ・カナリスだった。
牡牛の正体は、
牡牛の目を意味する星、
一等星アルデバラン。
星座に疎いマルスは、
言われて始めて迷い星の正体を知ったのだった。
新たに眼前に現れた、
燃えるような赤色の鎧を見て、
迷い星アルデバランはエルザに狙いを変えた。
エルザに向かって駆けだしたその牡牛は、
今までよりもわずかにスピードが落ちていた。
エルザはそれを見逃さず、
盾の直撃を受けた右前脚を槍で執拗に狙っている。
牡牛もそれに引くことなく、
右脚をかばうように左に旋回しながら襲い掛かった。
エルザは腰のベルトから鞭を取り、
牡牛の残ったツノに鞭を巻き付け、
右手の槍は襲い来る牡牛の眉間ぴったりに狙いを定めて構えをとった。
ツノに巻き付いた鞭のせいで思うように方向の変えられない牡牛は、
自身の目の前に迫る槍の穂先に気付いて足をとめ、
鞭を振りほどこうと暴れた。
エルザはすかさず牡牛の右脚を槍で切り払う。
右脚は根元から切り落とされ、
地響きと共に巨体が地面に沈んだ。
勝敗は決したと皆が安堵する中、
エルザはとどめを刺しに牡牛へと歩み寄る。
牡牛は痛みに呻きながらも、
ギラギラと輝くその右目は相変わらずエルザを睨み付けている。
その右目に槍が向けられた刹那、
牡牛は万力を込めて立ち上がり、
三本の脚でエルザに飛びかかった。
エルザの喉笛を狙うツノは、
一瞬の間に彼女の足元から首へと突き上げられる。
皆が目を覆う中、重く金属のぶつかる音がした。
牡牛とエルザの間に割って入ったマルスの盾が、
牡牛の強襲を防いだのだ。
左腕の盾で牡牛の視線を塞ぎ、
右腕で牡牛の左ツノをがっちりと掴む。
暴れようとする牡牛を盾で抑えつけながら、
右腕で掴んだツノを思い切り引っ張り、
同時に牡牛のこめかみに強烈な膝蹴りを入れた。
耳をつんざくような牡牛の悲鳴と共に、
ボキッと鈍い音をたてて牡牛のもう一方のツノが折れる。
牡牛はついに暴れる力を失い、
地面に突っ伏した。
牡牛が倒れたのとほぼ同時に、
力を使い果たしたマルスもうつ伏せに崩れ落ちた。
「・・・不覚。これじゃ格好もつかないな。
でも、部下たちを可愛がってくれたお礼をしないと。」
不満げな表情のエルザは槍を地面に放り、
腰から長身の剣を抜いた。
その剣は波のように揺れた刃を持ち、
刀身は燃えるような赤色に、
少し青みがかったような美しい色をしている。
「紅の魔剣、フラム=ベイユ。」
エルザがそう呟くと、
それに呼応するように刀身が燃え上がる。
牡牛の右目に振り下ろされたその剣の炎は勢いよく牡牛に広がり、
瞬く間に牡牛を消し去った。
牡牛のいたところには、右目の光の輝きだけが残り、
その光はゆるやかに天へと昇り、
本来のおうし座の位置に収まってゆく。
一等星アルデバランは、
再びその赤い輝きを、夜空に灯した。
その輝きの美しさに、兵たちはひとときの間、目を奪われていた。
走り出さんと構えたその時、
守備兵の輪から一騎の騎馬が踊り出た。
相当に急いで来たのか、
馬の息はすっかり上がってしまっている。
「金髪君、なかなか頑張るじゃない。
ウチの兵隊も助けてくれたんだってね。
こんなやつを相手にこれだけやれるなんて。」
流れるように馬から降り立ったのは、
星石鉱の若き守備軍隊長、エルザ・カナリスだった。
牡牛の正体は、
牡牛の目を意味する星、
一等星アルデバラン。
星座に疎いマルスは、
言われて始めて迷い星の正体を知ったのだった。
新たに眼前に現れた、
燃えるような赤色の鎧を見て、
迷い星アルデバランはエルザに狙いを変えた。
エルザに向かって駆けだしたその牡牛は、
今までよりもわずかにスピードが落ちていた。
エルザはそれを見逃さず、
盾の直撃を受けた右前脚を槍で執拗に狙っている。
牡牛もそれに引くことなく、
右脚をかばうように左に旋回しながら襲い掛かった。
エルザは腰のベルトから鞭を取り、
牡牛の残ったツノに鞭を巻き付け、
右手の槍は襲い来る牡牛の眉間ぴったりに狙いを定めて構えをとった。
ツノに巻き付いた鞭のせいで思うように方向の変えられない牡牛は、
自身の目の前に迫る槍の穂先に気付いて足をとめ、
鞭を振りほどこうと暴れた。
エルザはすかさず牡牛の右脚を槍で切り払う。
右脚は根元から切り落とされ、
地響きと共に巨体が地面に沈んだ。
勝敗は決したと皆が安堵する中、
エルザはとどめを刺しに牡牛へと歩み寄る。
牡牛は痛みに呻きながらも、
ギラギラと輝くその右目は相変わらずエルザを睨み付けている。
その右目に槍が向けられた刹那、
牡牛は万力を込めて立ち上がり、
三本の脚でエルザに飛びかかった。
エルザの喉笛を狙うツノは、
一瞬の間に彼女の足元から首へと突き上げられる。
皆が目を覆う中、重く金属のぶつかる音がした。
牡牛とエルザの間に割って入ったマルスの盾が、
牡牛の強襲を防いだのだ。
左腕の盾で牡牛の視線を塞ぎ、
右腕で牡牛の左ツノをがっちりと掴む。
暴れようとする牡牛を盾で抑えつけながら、
右腕で掴んだツノを思い切り引っ張り、
同時に牡牛のこめかみに強烈な膝蹴りを入れた。
耳をつんざくような牡牛の悲鳴と共に、
ボキッと鈍い音をたてて牡牛のもう一方のツノが折れる。
牡牛はついに暴れる力を失い、
地面に突っ伏した。
牡牛が倒れたのとほぼ同時に、
力を使い果たしたマルスもうつ伏せに崩れ落ちた。
「・・・不覚。これじゃ格好もつかないな。
でも、部下たちを可愛がってくれたお礼をしないと。」
不満げな表情のエルザは槍を地面に放り、
腰から長身の剣を抜いた。
その剣は波のように揺れた刃を持ち、
刀身は燃えるような赤色に、
少し青みがかったような美しい色をしている。
「紅の魔剣、フラム=ベイユ。」
エルザがそう呟くと、
それに呼応するように刀身が燃え上がる。
牡牛の右目に振り下ろされたその剣の炎は勢いよく牡牛に広がり、
瞬く間に牡牛を消し去った。
牡牛のいたところには、右目の光の輝きだけが残り、
その光はゆるやかに天へと昇り、
本来のおうし座の位置に収まってゆく。
一等星アルデバランは、
再びその赤い輝きを、夜空に灯した。
その輝きの美しさに、兵たちはひとときの間、目を奪われていた。
0
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
三年目の離婚から始まる二度目の人生
あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。
三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。
理由はただ一つ。
“飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。
女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。
店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。
だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。
(あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……)
そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。
これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。
今度こそ、自分の人生を選び取るために。
ーーー
不定期更新になります。
全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇
聖女召喚に巻き込まれたけど、僕は聖者で彼女よりも優れた能力を持っていた。
アノマロカリス
ファンタジー
僕の名前は、凱旋寺聖(がいせんじひじり)という厳つい苗字の高校2人生だ。
名前から分かる通り、僕の家は300年続く御寺の一族だ。
その所為か、子供の頃から躾は厳しく育てられた…が、別に跡を継ぐという話は出た事がない。
それもその筈…上に、二人の兄と姉がいるからだ。
なので、兄や姉が後継を拒まない限り、跡目争いに巻き込まれるわけではないのだ。
そんなわけで、厳しく育てられては来たが…抜け道を探しては良く遊んでいた。
…という、日頃の行いが悪い事をしていた所為か…
まさか、あんな事に巻き込まれるなんてなぁ?
この物語はフィクションです。
実在の人物や団体とは一切関係がありません。
『まて』をやめました【完結】
かみい
恋愛
私、クラウディアという名前らしい。
朧気にある記憶は、ニホンジンという意識だけ。でも名前もな~んにも憶えていない。でもここはニホンじゃないよね。記憶がない私に周りは優しく、なくなった記憶なら新しく作ればいい。なんてポジティブな家族。そ~ねそ~よねと過ごしているうちに見たクラウディアが以前に付けていた日記。
時代錯誤な傲慢な婚約者に我慢ばかりを強いられていた生活。え~っ、そんな最低男のどこがよかったの?顔?顔なの?
超絶美形婚約者からの『まて』はもう嫌!
恋心も忘れてしまった私は、新しい人生を歩みます。
貴方以上の美人と出会って、私の今、充実、幸せです。
だから、もう縋って来ないでね。
本編、番外編含め完結しました。ありがとうございます
※小説になろうさんにも、別名で載せています
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ワケあり公子は諦めない
豊口楽々亭
ファンタジー
精霊の加護により平和が守られている、エスメラルダ公国。
この国の公爵家の娘、ローゼリンド公女がある日行方不明になった。
大公子であるヘリオスとの婚約式を控えた妹のために、双子で瓜二つの兄である公子ジークヴァルトが身代わりになることに!?
妹になり代わったまま、幼馴染みのフロレンスと過ごすうち、彼女に惹かれていくジークヴァルト。
そんなある日、ローゼリンドが亡骸となって発見されて……───最愛の妹の死から始まる、死に戻りの物語!!
※なろう、カクヨムでも掲載しております。
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※「なろう」にも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
