琥珀の夜鷹_ep1. 星降りの守り人

朝河 れい

文字の大きさ
77 / 104
EP1_5章

5章_7 ミラーナ

しおりを挟む
 「ミラーナは、私たちの娘はどこなんだ。」

娘だけでも、密やかに連れ出し、
公王の目の届かないところで健やかに育てたい。

ロクサリオは一縷の望みを、
残された一人娘に繋いだ。


泣き暮らすシンシアの頬に、
最後のキスをする。

去って行こうとする間際、
シンシアが袖をつかんで止める。

《どうかこれを、ミラーナに。
あの子が愛と優しさに守られるように、星の祈りを込めました。》


シンシアは、そう書いた羊皮紙とともに、
手のひらに収まるほどの大きさの化粧箱をロクサリオに手渡した。

それは、かつてロクサリオが贈った、
小さな花をかたどった美しい指輪だ。


たった一夜のうちに、
どうしてこんな思いをしなければならないのか。

下を向けば、涙がこぼれてしまいそうだった。

しかし、ロクサリオは黙ってそれを受け取ると、
シンシアの生家へ急いだ。

シンシアに娘がいたことなど、
今更知られるべきではないのだ。


シンシアの家に着き、ドアを開けると、
玄関にはミラーナがへたり込んでいた。


「お父さま!お帰りなさい!」

来客の顔を見るなり、
ミラーナは花のように可憐に微笑む。

ロクサリオは娘が愛おしくて、
母譲りの綺麗な銀髪を撫で、

突然に手放さなければならなくなったシンシアへの想いを紡ぐように、
暖かく抱き寄せた。

「ああ、ミラーナ。久しぶりに顔を見た。
またきれいになったじゃないか。
今日はプレゼントがあるんだ。
さあ、手を出してごらん。」

目を輝かせて手を差し出すミラーナの左の薬指に、
シンシアに手渡された指輪をはめてみる。

しかし、
一回り大きいその指輪は薬指にはうまくはまらず、
ロクサリオは左の親指にはめてやった。

きれいに収まったその指輪をみて、
ミラーナはしおらしく頬を染めて、
喜びを表現した。

「やっぱり良く似合う。この指輪は、
私たち家族のしるしだから、大事につけておきなさい。
ところで、どうして玄関に居たんだい?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~

ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。 絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。 彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。 営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。 「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」 転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。 だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。 ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。 周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。 「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」 戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。 現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。 「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」 これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...