いつも唐揚げ弁当しか頼まない彼の秘密

加藤ラスク

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再会

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目の前にはイスを持ち上げたままのミックが白目を剥いて固まっている。
そしてその後ろにいたのは怒りに満ちた表情のレオナルドだった。

「な……んで? どうして……」


レオナルドはミックの持っていたイスを取り上げゆっくりと床に置いた。そしてミックの首根っこを掴む。レオナルドの方がミックより10センチほど背が高いとはいえ、筋肉モリモリ男を軽々と持ち上げるとは。さすが最強の男。

するとミックが意識を取り戻してしまったようでジタバタと暴れ始めた。

「ミハル、お前みたいなブスが調子になんか乗るんじゃねぇぞ!この機会を逃したら絶対に嫁ぎ先なんて見つからないからな!こんな店すぐに潰れる。お前は俺だけに弁当作ってりゃあいいんだよっ!」

自分が持ち上げられていることに全く気が付かないまま大声で怒鳴り散らしていたが、私の目線が自分に向いていないことに気が付いたようで、ゆっくりと振り返る。

「ミハルに謝れ。ミハルがどれだけこの弁当屋を大切にしているかわからないやつに、ミハルを渡すわけにはいかない」

ドサッとミックを投げ捨てる。

「謝れ」
「誰だテメェ!邪魔するんじゃねぇ!!」

尻もちをついていたミックは起き上がり、レオナルドへ殴りかかろうと拳を振り上げる。

しかしその拳はレオナルドには当たることはない。

ミックの拳を軽く捌き、その隙に腹に一発、後ろ回し蹴りで頭に一発、素早くかつ的確にヒットさせた。
衝撃でミックは壁に打ち付けられ、そのままズルズルと沈んでいく。

「ミハルは素敵な女性だ。侮辱するなんて俺が許さない。ミハルの弁当は絶品だ。俺だけじゃない、町中みんなこの弁当が好きなんだ。ミハルの大切にしているものを守れないやつがミハルを幸せにできるとは思えない。もう二度とミハルに近づくな」

「クソッ」

勝てる相手ではないと悟ったミックが拳を床に叩きつける。その時。

「ミック、ここにいたのか!大変だ、武器屋が火事だぞ、急いで戻れ!」
場の空気を壊すように町の人がやってきて、そのままミックを連れて行ってしまった。



「ごめんね、驚かせちゃったね。大丈夫だった?」

レオナルドは優しい顔で私に手を差し出し、立ち上がらせてくれた。

「あっあの、助けていただいてありがとうございました!」
「いいんだ。唐揚げ弁当を買いに来たらミハルがあの男に詰め寄られてて。噂では付き合い始めたって聞いたからどうしようかと思っていたけど明らかに嫌がっていたから助けに行かないとって」

レオナルドは私に怪我がないことを確認し、良かったと微笑む。

「そうだ、唐揚げ弁当を買いに来たんだった」

そう言われ、私は急いで奥から取り置きしていた唐揚げ弁当を持ってくる。いつもはカウンター越しに手渡ししているが、今日はカウンターをまわって、レオナルドの正面に立つ。
どうぞとお弁当を手渡し、レオナルドが受け取る。しかし私は手をピタッと止めお弁当から離さない。

「レオナルド様は、もうこの店には来ないと思っていました。またお会い出来て嬉しいです。また旅立たれてしまうのですか?」

ずっと思っていた疑問を口に出す。するとレオナルド様は一瞬何かを考えるような素振りをしてからこう答えた。

「実はね、クビになったんだよ」
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