いつも唐揚げ弁当しか頼まない彼の秘密

加藤ラスク

文字の大きさ
8 / 9

レオナルド

しおりを挟む
「パーティーから追放されちゃったんだよ」
ははは、とレオナルドは頬をカリカリ掻きながら笑っている。

「えぇー!? レオナルド様がクビ? 信じられません。だってレオナルド様は薬学の力で回復アイテム作り放題。火の女神の加護はとても貴重ですし、勇者様との相性もバツグンなはずです!2人でいれば何にも怖くない」

あまりの衝撃に前世の知識でオタク特有の早口でしゃべってしまった。はっと我に返りレオナルド様を見あげてみるとニッコリと笑っている。


「2人、じゃなかったんだよね、パーティー」


そう言われてハッと思い出す。出陣式では勇者ディオの他にいたのはレオナルドとディオの幼なじみのエルナ。
出陣式では私の作った唐揚げ弁当をディオにあげていたっけ。ゲームの中ではもう少し思慮深く思いやりがあった子だったはずだけれど。

話をまとめるとこういうことらしい。

そもそもレオナルドが旅立つことになったのは毎日エルナが店に通い詰めて来たことがきっかけだった。
最初は軽くあしらっていたものの、なぜかレオナルド様の秘密を知っており、半ば脅される形で同行することになったそうだ。

エルナはどこに何があるのか、これから何が起きるのかよく知っていた。そして旅先で次々と強い男性メンバーを仲間にしては骨抜きにしていた。
最初のうちはレオナルドにも猫なで声ですり寄って来たものの、全く相手にしなかったため、次第に諦めていったそうだ。
エルナは行く先々でやりたい放題だった。

そんなある日、戦闘でディオとレオナルドが女神の加護の力を使い敵を一掃した。味方には全く被害は出ず、一瞬で戦闘は終わった。
本来ならば喜ばしいはずなのに、エルナだけは違っていた。

「私が拐われる前に倒しちゃったらダメじゃない!ここでフラグ立てないとドミール様が仲間にならない!レオナルド、あんたのせいよ!あんた全然私の言う事聞かないじゃない。こんな事ならあんたはクビよ!出ていって」


こうして僕はクビになったんだ。クビにしてくれてラッキーだったよ、とレオナルドは笑う。

「でも、どうしてミハルは僕に火の女神の加護がついていることを知っていたのかな?」

笑った表情のまま、レオナルドは続ける。

「もしかして、ミハルも知っているの? この世界がみん救だって」

なぜレオナルドから「みん救」の単語が出てくるの? エルナが話した? 私はエルナみたいに自分の思い通りにしようだなんて思っていない。けれども、もし私もエルナと同じだと思われたら……どうしよう、なんて答えればいいんだろう。

混乱してアワアワしているとレオナルドが私の両肩に手を乗せ今にも泣きそうな顔をしていた。

「お願い、答えて。もし知っていたら伝えたいことがあるんだ。美晴」

久しぶりに呼ばれた前世の名。

「なぜ……その名前を」
「知っているよ。ずっと前から。君に会いたくて毎日唐揚げ弁当を買いに行ってたんだ。覚えているかな。変なオヤジに絡まれたところを助けた日のことを。まさか君が亡くなってしまうとは夢にも思わなかったよ」

目線は、ここではないどこか遠くの世界をみているようだった。その時のことを思い出しているのだろうか。その顔は悲しみで溢れている。

「……!!まさか、唐揚げ王子……? でも、それならなぜあなたも転生を? 亡くなったのは私だけのはずよ」

そう言うと唐揚げ王子、もといレオナルドはそっと両手で私の手を握り、まっすぐ私の目を見つめた。

「僕はね、美晴とずっと一緒にいられるように神様にお願いしたんだ。悔しいけれど前世では守りきれなかった。けれども、運よく美晴の大好きなこの世界で美晴の一番のお気に入りに転生できた。このチャンス逃したくない。どうか美晴をこの先もずっと近くで守らせてほしい。愛しているから」

「前世も今世もずっと守られてばっかりね。でも、本当に嬉しかったの。私も、大好き。あなたのために毎日唐揚げ弁当を作るわ」


二人は前世の分の思いも込めるように、強く抱きしめ合った。




それからしばらくして、レオナルドはお家騒動が落ち着き、晴れて第二王子として正式に城に住むことになった。

畏れ多くも私も一緒に住まないかと誘われ、最初は断っていた。しかし、心労から食欲がなくなってしまった第一王子にレオナルドが唐揚げ弁当を持っていったところ、初めて食べる味に感動し食欲が回復。健康体に戻ったことで正妃様に感謝された。そんなこともあり、なんと王城内に専用の設備が用意され、弁当屋2号店をオープンさせることになったのだ。

今では王城で第二王子の婚約者として暮らしつつ、弁当屋オーナーとして国民の食事を支えている。



「神様、ミハルと巡り合わせてくれてありがとうございます。絶対に大切にします」

レオナルドはニッコリと笑いながら今日も唐揚げ弁当を頬張っている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜

ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」 あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。 「セレス様、行きましょう」 「ありがとう、リリ」 私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。 ある日精霊たちはいった。 「あの方が迎えに来る」 カクヨム/なろう様でも連載させていただいております

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

【完結】公爵子息は私のことをずっと好いていたようです

果実果音
恋愛
私はしがない伯爵令嬢だけれど、両親同士が仲が良いということもあって、公爵子息であるラディネリアン・コールズ様と婚約関係にある。 幸い、小さい頃から話があったので、意地悪な元婚約者がいるわけでもなく、普通に婚約関係を続けている。それに、ラディネリアン様の両親はどちらも私を可愛がってくださっているし、幸せな方であると思う。 ただ、どうも好かれているということは無さそうだ。 月に数回ある顔合わせの時でさえ、仏頂面だ。 パーティではなんの関係もない令嬢にだって笑顔を作るのに.....。 これでは、結婚した後は別居かしら。 お父様とお母様はとても仲が良くて、憧れていた。もちろん、ラディネリアン様の両親も。 だから、ちょっと、別居になるのは悲しいかな。なんて、私のわがままかしらね。

氷の公爵の婚姻試験

潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。

【完結】悪役令嬢の身代わりで処刑されかけた侍女、悪人面強面騎士にさらわれる。

雨宮羽那
恋愛
 侍女リーリエは、処刑される予定の主・エリーゼと容姿がそっくりだったせいで、身代わりとして処刑台へ立たされていた。  (私はエリーゼ様じゃないわ!)と心の中で叫んだ瞬間、前世の記憶がよみがえり、ここが読みかけだった悪役令嬢ものの小説の世界だと気づく。  しかも小説ではエリーゼが処刑されるはずなのに、リーリエが処刑されかけているという最悪の展開。  絶体絶命の瞬間、リーリエの前に現れたのは強面で悪人面の騎士ガウェイン。  彼はなぜかリーリエを抱えあげ連れ去ってしまい――? ◇◇◇◇ ※全5話 ※AI不使用です。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております。

婚約破棄? あら、それって何時からでしたっけ

松本雀
恋愛
――午前十時、王都某所。 エマ=ベルフィールド嬢は、目覚めと共に察した。 「…………やらかしましたわね?」 ◆ 婚約破棄お披露目パーティーを寝過ごした令嬢がいた。 目を覚ましたときには王子が困惑し、貴族たちは騒然、そしてエマ嬢の口から放たれたのは伝説の一言―― 「婚約破棄されに来ましたわ!」 この事件を皮切りに、彼女は悪役令嬢の星として注目され、次々と舞い込む求婚と、空回る王子の再アタックに悩まされることになる。 これは、とある寝坊令嬢の名言と昼寝と誤解に満ちた優雅なる騒動録である。

妻が通う邸の中に

月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。

聖女の力は使いたくありません!

三谷朱花
恋愛
目の前に並ぶ、婚約者と、気弱そうに隣に立つ義理の姉の姿に、私はめまいを覚えた。 ここは、私がヒロインの舞台じゃなかったの? 昨日までは、これまでの人生を逆転させて、ヒロインになりあがった自分を自分で褒めていたのに! どうしてこうなったのか、誰か教えて! ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...