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外見に惑わされない
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「さて、そうは言っても、ライオネルの足取りがつかめないとどうしようもないわ。リオンは何か知っているかしら」
「そうですね……ちょっと小耳に挟んだのですが、キルティ国との国境に近い北ソザーレという小さな村で最近、若い女性たちの目撃情報が上がっています。彼女たちの装いは都会の流行りの服だったとか。北ソザーレは貧しい村ですし、観光名所もありません。流行りもの好きな女性たちが自ら行く場所ではないかと」
「それって、もしかしなくても……」
リオンの言う通り北ソザーレは貧しい村だけれど、農業が盛んで食料には困ることはなく、住民たちも争いは好まない性格のため治安は良かったはず。だからこそ、視察は半年に一度となっていたし、今まではそれで問題はなかった。ただ、今回はそれを逆手に取られてしまい、人身売買の取引現場として使われてしまったようだ。
「最近、ということならばライオネルが絡んでいる線が濃厚ね。とても良い情報だったわ。連れ去られてしまった彼女たちは無事かしら。早く行きましょう、北ソザーレに」
すぐさま出発しようとしたとことで、アルからストップがかかる。
「お待ちください。北ソザーレまでは歩いた場合、一週間ほどかかります。馬車を用意しますので少々お待ちいただけないでしょうか。馬車なら3日もあれば到着できるでしょう」
「わかったわ」
数刻後。
目の前に到着したのは良く言えば年季の入ったシンプルな、悪く言えばボロボロの外装の馬車だ。
「お待たせしました」
アルが馬車から降り、私を中へエスコートするために手を差し出した。
「オイオイ、『ステラ様』をこんなボロっちい馬車に乗せるつもりか?」
「いいのよ、急に頼んでしまったのだもの。空いているのがこれしかなかったのよ、きっと」
「とりあえず、乗ってください」
掴んだアルの手は私よりも一回り大きく、少しごつごつ骨ばって。ふと顔を見てみると、優しい目で微笑んでいる。けれども髪を切ったせいなのか、別人のような、私の知らない男の人のように感じられた。私が知っている、かわいい年下の女の子のようなアルはそこにはもういない。
馬車に乗り込んでみると、外装からは全く想像もできないほど清潔で快適な空間が広がっていた。
「すごいな全然腰が痛くならない……見た目と中身が全然別物のようだ。こんなに内装が凝っているなら外装にも少し金かければいいのに。この馬車の持ち主は見た目には全く興味がないのか?」
リオンはふわふわのクッションを気に入ったようで何度もポフポフ跳ねるように座っている。案外子どものようでかわいらしい。
「見た目がいかにも金持っていますなんて装飾にしたら、強盗してくださいと言っているようなものです。余計なトラブルを防ぐためにも偽装したほうが都合がいいんですよ」
「確かに、強盗に襲われても負けない自信はあるけれど、相手をしている時間がもったいないものね」
「なるほどな」
北ソザーレは王都から距離があることから誘拐された彼女たちを連れて、途中町に立ち寄らなくてはいけないはずなのに、全くそういった情報が上がってこなかった。ということは、その町にライオネルの協力者がいると見て間違いない。
ライオネルは着実に仲間を増やしている。これから出会う人間がそうである可能性を考えないといけない。
「何事もなく、北ソザーレまで到着できればいいわね」
窓の外の景色を眺めながら呟いた声は車輪の音でかき消されていった。
「そうですね……ちょっと小耳に挟んだのですが、キルティ国との国境に近い北ソザーレという小さな村で最近、若い女性たちの目撃情報が上がっています。彼女たちの装いは都会の流行りの服だったとか。北ソザーレは貧しい村ですし、観光名所もありません。流行りもの好きな女性たちが自ら行く場所ではないかと」
「それって、もしかしなくても……」
リオンの言う通り北ソザーレは貧しい村だけれど、農業が盛んで食料には困ることはなく、住民たちも争いは好まない性格のため治安は良かったはず。だからこそ、視察は半年に一度となっていたし、今まではそれで問題はなかった。ただ、今回はそれを逆手に取られてしまい、人身売買の取引現場として使われてしまったようだ。
「最近、ということならばライオネルが絡んでいる線が濃厚ね。とても良い情報だったわ。連れ去られてしまった彼女たちは無事かしら。早く行きましょう、北ソザーレに」
すぐさま出発しようとしたとことで、アルからストップがかかる。
「お待ちください。北ソザーレまでは歩いた場合、一週間ほどかかります。馬車を用意しますので少々お待ちいただけないでしょうか。馬車なら3日もあれば到着できるでしょう」
「わかったわ」
数刻後。
目の前に到着したのは良く言えば年季の入ったシンプルな、悪く言えばボロボロの外装の馬車だ。
「お待たせしました」
アルが馬車から降り、私を中へエスコートするために手を差し出した。
「オイオイ、『ステラ様』をこんなボロっちい馬車に乗せるつもりか?」
「いいのよ、急に頼んでしまったのだもの。空いているのがこれしかなかったのよ、きっと」
「とりあえず、乗ってください」
掴んだアルの手は私よりも一回り大きく、少しごつごつ骨ばって。ふと顔を見てみると、優しい目で微笑んでいる。けれども髪を切ったせいなのか、別人のような、私の知らない男の人のように感じられた。私が知っている、かわいい年下の女の子のようなアルはそこにはもういない。
馬車に乗り込んでみると、外装からは全く想像もできないほど清潔で快適な空間が広がっていた。
「すごいな全然腰が痛くならない……見た目と中身が全然別物のようだ。こんなに内装が凝っているなら外装にも少し金かければいいのに。この馬車の持ち主は見た目には全く興味がないのか?」
リオンはふわふわのクッションを気に入ったようで何度もポフポフ跳ねるように座っている。案外子どものようでかわいらしい。
「見た目がいかにも金持っていますなんて装飾にしたら、強盗してくださいと言っているようなものです。余計なトラブルを防ぐためにも偽装したほうが都合がいいんですよ」
「確かに、強盗に襲われても負けない自信はあるけれど、相手をしている時間がもったいないものね」
「なるほどな」
北ソザーレは王都から距離があることから誘拐された彼女たちを連れて、途中町に立ち寄らなくてはいけないはずなのに、全くそういった情報が上がってこなかった。ということは、その町にライオネルの協力者がいると見て間違いない。
ライオネルは着実に仲間を増やしている。これから出会う人間がそうである可能性を考えないといけない。
「何事もなく、北ソザーレまで到着できればいいわね」
窓の外の景色を眺めながら呟いた声は車輪の音でかき消されていった。
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