リースス・レーニス

大神ヒラメ

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血液

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「んんん!んー!んんんー!」
「口枷してると便利なんだけど何言ってるか分からないんだよなぁ…反応が分からないと実験する意味がないからね。っていうか…フィエルが折った腕どーしよ?痛み止めを投与しちゃうと、試作品の結果が正確に測れないし…ちょっとリスクは高いけど、自然治癒にした方がいいかもね。ここは人体の回復力に任せよう。」
ヴァルトは顎に手を当てて、考えをブツブツと唱えていた。
「さっきパッと見た限りだと、外傷は右腕だけだね。そしたら骨を正しい位置に戻そうか。少し…いや、だいぶ痛いと思うけど…我慢してね。」
そう言うとヴァルトは、グレスの右腕を一気に反対の方向に曲げた。
「んんぅぅゔゔー!!!」
グレスは首を左右に振って、もがき苦しんでいた。
「まぁ痛いよね…でも、ゆっくり戻した方が尚更痛いと思うよ。苦しいと思うけど、今は耐えてね。」
そう言ってヴァルトは右腕の骨を正しい位置に戻すと、副木で患部を固定した。(※副木(ふくぼく)とは、骨折した時に患部を固定するための添え木)
「とりあえず患部は治療したし、あとは…内臓系の状態や体調管理もしたいからな…血液検査するか。違法薬物をやってる可能性もあるからなぁ~。はぁ…実験初日はやる事が多くて大変だよ~。」
ヴァルトはグレスの左腕に駆血帯を巻き、注射器をバットから取り出してグレスの左腕に刺した。
(※駆血帯(くけつたい)とは、採血の時に静脈を膨れ上がらせるために、採血部上方の腕を圧迫させるゴムチューブ)
「暴れないでね~。少しチクッってするけど、我慢だよ~。」
ヴァルトは子供をあやすような優しい口調で、グレスの採血を行った。
5本の注射器にドス黒い血が入ったところで、ヴァルトは採血を終わらせた。
「はいっ、採血できたよ。気持ち悪いとかない?」
ヴァルトは覗き込むようにグレスの顔色を見て、体調を確認した。
「よし、大丈夫だね。」
ヴァルトは駆血帯を左腕から外し、注射器をバットに戻した。
「そしたら…この血を血液検査機器に…」
そう言ってヴァルトは実験室の隅に置いてある機械に血液を入れた。
「ふあぁ~。一段落終わったぁ~。楽しみの前には必ず面倒臭い事があるんだよなぁ…」
ヴァルトはンーッと頭の上で腕を伸ばした。
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