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第三章 激闘の魔闘士大会編 中等部1年生
第36話 闇オーラ
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俺はシャイナ・グランテの本気を知らない。
しかし、恐らくオーラ総量が桁違いであるため負けることは無いと考えている。
さらに言えば、怪我をさせないか心配しているくらいだ。
話し合いの進み方によっては棄権を勧めたい。
正直、シャイナとは闘いたくない。
世話になったし、シャイナ・グランテという人物が好きなんだ。
傷つけたくない。
こういった考えで俺とアネモネは国立大学へ来ていた。
コンコンコン
「はい。どうぞ」
寮の一室のリビングに通される。
「失礼します。お忙しいなか、貴重なお時間ありがとうございます。ご無沙汰しています」
「今回はノックしてくれたんですね」
「はい。この前はすいませんでした」
「いえいえ、もう気にしていませんよ」
「前は気にしてたんですね。そんなことより次の試合についてです。いや、それもあるが、まだ隠してただろ?」
「隠していたつもりはありませんよ。まだ教えられる段階ではないと判断して黙ってはいましたが」
「!?どういうことよ?ライが負けてもよかったっていうの?そもそもコーンさんに失礼でしょ?」
アネモネは吠える。
「やっぱりそういうことか。アネモネ、いいんだよ。予想はしていたんだ」
「どういうこと?予想って?」
アネモネは不思議そうな顔をしている。
「考えたんだよ。あと、オリビアもヒントをくれたんだ。サバイバル戦直前に闇オーラの使い方を教えなかったのは危なかったからだろ?」
「そうですよ。少し上手く使えるようになったのはラース辺りに教えてもらったんですか?使える気になっているようですが、非常に危険ですよ。もう使うことはやめておきなさい」
「いや、逆だ。シャイナに怪我をさせたくないから棄権を勧めに来たんだ」
「ライ君ではシャイナに勝てませんよ。魔闘法はそんな単純なものではないんです。ライ君こそ棄権することをおすすめします」
教授も押し返す。
「なるほど、平行線ってことですね。それなら試合で決めるほかないですね。しかし、教授やシャイナには感謝しています。勝っても負けてもこれまで以上の関係を続けさせてください」
俺は丁寧にお願いする。
重要なことだ。
「それを聞いて安心しました。私の一番の心配材料はキミたちとの関係をキープできるかどうかでしたから」
「そうだな。俺たちが研究材料でもあるもんな。こちらこそよろしく」
「そうね。アタシもシャイナとは仲良くしたい。イマイチ信用できない教授はどっちでもいいかな」
アネモネは本音を漏らした。
「あらら。じゃあ、シャイナのおまけでもいいので、仲良くして下さいね」
教授は苦笑した。
「それじゃ、今日は帰るよ。シャイナもお茶ありがと」
「いえ、当日の対戦が楽しみです」
少し時間があいたから少し言葉が少ない。
恥ずかしがり屋な彼女のことだから気にする必要はない。
その場を後にした。
2人で帰りの車の中で話す。
「ねぇ、さっきの、予想してたってのはいつの話?アタシ聞いてないんだけど」
アネモネは少し怒ってる。
「ごめんごめん。元気になってラースの家に行ったときだよ。初め、アネモネはいなかっただろ?だから言うの忘れてたんだよ。それに確信があったわけじゃないしね」
「それはわかったけど、教授は闇オーラの話をしてても良かったんじゃない?」
「いや、教授なりの優しさなんだよ。ギリギリで情報を得て、使うなと言われても使うだろ?過ぎた力は身を滅ぼすものなんだよ。でも、ラースに教えてもらったから使える気になってるけど、まだまだ奥が深いから使うなって言ったんだ。だから棄権しろってなったんだと思うよ?」
「なるほどね。それじゃあ、まだ闇オーラには秘密があるってことよね?」
優等生アネモネは理解が早い。
「みたいだなぁ。でも、それを教えるのは、この大会が終わってからってことなんだろうな。教える気はないけど、試合では見せてくれるかな?」
「それはないんじゃない?そうしちゃうと、また、コーンさんのときみたいに無茶するでしょ?だから、闇オーラの秘密は見せる気もないんじゃない?アタシもあんな無茶はやめてほしいし」
やっぱり、心配だったらしい。
悪いことをしたな。
でも…。
「ごめん。でも、アネモネを守りたかったんだ。それくらいはカッコつけさせてよ」
「かっこよかったから許す」
お許しを頂きました。
ごちそうさまです。
アネモネも16歳だ。
もうお年頃だろう。
よく11歳の見た目のオッサンに飽きないね。
まぁ、俺も0歳の時からずっと好きだから一緒だけどね。
「ありがとうございます」
俺たちは無事自宅に着き、翌日、ラース宅を訪れた。
「オーリービーアーちゃーん、あーそーぼー」
「はーい!って、懐かしいネタだね。1年のときに言ってたよね」
「よく覚えていたな」
「恥ずかしかったから覚えてるよ!」
「ライ、ふざけてないでさっさと本題にはいったら?」
アネモネがイラつきながら言う。
ちょっと嫉妬してる顔だな。
確かにオリビアは美少女だ。
ラースの遺伝子は一切入ってないと言えるほど美少女だ。
おばさん、ありがとう!
でも、俺はアネモネ一筋だ。
前世は恋多き人間だったが、今世はなぜかアネモネ一筋だ。
夢にまで出てくる。
浮気症は転生で治ったらしい。
「ごめんごめん。オリビア、おじさんいる?」
「ごめん、お父さんは仕事で1ヶ月は帰って来ないんだ。あと、多分ライ君が来るからって伝言を預かってるよ」
「伝言?なんて?」
なんだろ?暗号とかめんどくさいのは嫌だな。
「えーっと、『闇オーラの秘密は今は教えられない』だってさ」
「うわー、先回りされてたかー」
「ん?どういうこと?」
オリビアが困っている。
「昨日、おじさんのライバルだった人に会ってたんだけど、その人にも同じことを言われたんだよ」
くやしい。
ラースならあっさり教えてくれると思ってた。
甘かった。
多分、教授から根回しがあったんだろう。
「やられたわね。教授の根回しね」
アネモネも同意見のようだ。
「ライ君の次の闘いに関係あるんだよね?ごめんね。力になれなくて」
オリビアは申し訳なさそうにしている。
何も悪くないのに。
やっぱり、オリビアもかわいいよなぁ。
大人になったら、いい女になるんだろうなぁ。
それでも、自分の子どもを見ているような感覚になる。
アネモネ一筋だ。
「いいよいいよ。それにしても闇オーラの秘密は何なんだろうな?」
「そうね。余計に気になるわね」
アネモネは考え出す。
「しかもそれを使わなくても俺にシャイナは勝てるって言ってたもんな」
「うん。それに、ランク戦であんなふざけた試合ばかりさせられて、ランキングもアテにならないわよ?この前のケンドリックって人よりシャイナが強いから自信あるんでしょうし」
「え、この前の対戦相手より強いの?もうボクじゃついていけない世界じゃないか」
「うーん、そう言わずに、一緒に考えてくれると嬉しいかな?」
「そうだよね。ありがとう!ボクもライ君の力になりたいんだ!」
オリビアが必死に訴えてくる。
どうした?
俺はそのへんの鈍感系ではないぞ?
中身は完全なオッサンだ。
キミにはフォールがいるじゃないか?
そういや、最近見かけないな。
ケンカでもしたのかな?
「ありがとう。それじゃあ、闇オーラについて一緒に考えてくれる?何か気づいたこととか、無いかな?」
「う~ん。そんなにすぐには思いつかないなぁ」
「そりゃそうだよね。ってか、それで思いつくなら俺たちが気づいてるもんね」
「あっ!」
オリビアが閃いたようだ
「お?どした?」
「えっとね、ボクも色々ずっと疑問だったんだよ。だって、お父さんはずっと基礎しか教えてくれないし、その割には、闇オーラとか急に教えてくれるようになったし。だからと言って全て教えてくれているわけでないのは、薄々気づいてたんだ。それで、いくつかお父さんに質問してみたんだけど、その時の様子が少し変だったんだ」
「おお。そりゃ、オリビアも変だと思うよな?それで?どんな質問をしたんだ?」
「うんとね、まず、なぜ闇オーラのことを黙ってたの?って質問したよ」
「ほうほう、いい質問だね。なんて答えたんだい?」
アネモネが食いつく。
「えーっと、危ないからだよって教えてくれたよ。それで、何が危ないのかも聞いたんだけど、前に言ってた、重力で自滅するからだってさ。でも、それだけじゃないと思うんだよね。それで、考えたんだけど、闇オーラの他にも、オーラの蓄積と、オーラ蓄積の加速の二つも教えなかったでしょ?その組み合わせで危険なことが起こるんじゃないかな?」
「あぁ、確かに、そういえば、最近は情報が多すぎて整理してなかったけど、他にも光オーラもあるもんな。その辺りの組み合わせか…」
「その全てか…」
アネモネがつぶやいた。
「全部説はアリだと思うよ。どれか一つでも知れば危険なわけだし」
オリビアが自論を展開する。
「そうだな。光と闇についてはどっちか知ればもう片方も思いつくだろうし、残り二つは危険とは思えない」
俺も一緒に整理する。
「なるほど。この中では、直接危険なのは闇オーラ。すると、闇オーラに他の要素を組み合わせるとさらに危険なのかも知れないね」
アネモネがまとめる。
「簡単に言うと、闇オーラの危険度が加速するってとこかな?」
俺も話を進めるが、座学の苦手なオリビアはそろそろ限界だろう。
「加速といえば、オーラの蓄積加速かな?それと、闇オーラを組み合わせても危険にはならない気がするけどなぁ?」
そんなことはなかった。
ちゃんとついてきていた。
オリビア、ごめん。
「いや、1つとは限らないのでは?例えば、蓄積加速をしながら重力で潰れる体を光オーラで回復するとか?」
「いや、アネモネさん、それじゃ、その場にいるだけだから攻撃にならないよ?」
アネモネにオリビアがツッコむというレアなケースが見られた。
ラッキー。
「そうよね」
ん?
でも、それっぽくない?
アネモネが言ってみた答えが正解に近い気がする。
でも、もう1つ足りないな。
なんだろ?
もう1つ禁止されたような…。
ん?
あ…。
あれか。
子泣き爺作戦だ。
確か、子泣き爺作戦が禁止されたんだ。
それだと、その場にいても重力だけで攻撃できるのか。
「わかったよ。子泣き爺だ」
「コナキジジイ?何それ?」
アネモネが怪訝な顔をしている。
「あぁ、ごめんごめん。それはこっちの話で、さっきのアネモネの答えが正解だ。危険な使い方を思いついたよ。やっぱり全ての組み合わせだな。対戦相手にしがみついて、到底耐えられない重力をかけるんだ。そして、自分のダメージ分は光オーラで回復するんだ。あらかじめ、蓄積加速させておいたオーラで」
2人が驚く。
そして、難しい顔をする。
「ライはそれをやるつもりなの?」
アネモネは難しい顔のまま聞いてくる。
「そうだよ。やめた方がいいよ」
オリビアも同じだ。
「そうだな、やりたくはないけど、世界一のために必要な技術なら身につけないとな」
努めて明るく言う。
「うーん。必要なのかどうかは微妙だよね?だって、抱きつく前提の技って使いにくそうだよ?」
オリビアがド正論で反論してくる。
「確かにそうだけど、それを部分的にできたらどうかな?例えば、踵落としをするときに踵に100倍重力とかかけたら、必ずどこか負傷すると思うんだ」
俺も反論を用意している。
「それを戦闘に組み込むってこと?かなり無理があるわね。今からで間に合うかしら?」
「それじゃあ、闇オーラと並行して土オーラも展開できないかな?ライ君の魔力ならできる気がするんだけど?」
オリビアが遠慮がちに口にする。
「なるほど。それは考えなかったな。並行してオーラの展開ができるんだから闇と土の並行もできそうかもな。やってみようか」
その後、色々と試した。
4属性プラス2属性の展開は可能なのか?
部分的に重力を極端に上げるとどうなるのか?
それを武術に組み込むことは可能なのか?
自爆で負傷した傷はどれくらいの早さで治るのか?
結論としては、できる。
しかし、全てを戦闘に活用するには、かなりのバランス感覚と、自重が必要だ。
調子に乗ればすぐにバランスは崩れる。
一度崩れたバランスは元に戻すまで時間がかかる。
回復が遅れるからだ。
回復が遅れると命取りになる。
実際に死者の出る大会であることは身をもって体験している。
かなりの博打になる。
しかし、練習をしっかりすればなんとかなるんじゃないか?
やってみないとわからない。
完全に博打だ。
いや、長い目で見て、必要な技術であることは確実だ。
実践レベルにならなかった場合は無理しないように自重するしかないだろう。
無責任な巨大すぎる力が破滅を招くことは心に深く刻まれた。
シャイナを失ってまで得る勝利に意味はない。
しかし、今回勝てなくても次回のためにも得たい力だ。
「なぁ、2人はどう思う?俺はこれを使えるようになりたいんだ」
2人にも相談してみる。
「そうね。アタシはライがやらなくても覚えるわよ」
「そうだね。ボクもできるようになりたいな。でも、ボクの魔力量なら厳しいだろうから、お手伝いならできるよ」
「ほんじゃま、やってみっか!」
方向性は決まった。
できるかはやってみなきゃわかんないもんな。
それから、試合までは、ひたすらなるべく出力を高めて攻撃に使えそうなコンビネーションの練習をした。
しかし、恐らくオーラ総量が桁違いであるため負けることは無いと考えている。
さらに言えば、怪我をさせないか心配しているくらいだ。
話し合いの進み方によっては棄権を勧めたい。
正直、シャイナとは闘いたくない。
世話になったし、シャイナ・グランテという人物が好きなんだ。
傷つけたくない。
こういった考えで俺とアネモネは国立大学へ来ていた。
コンコンコン
「はい。どうぞ」
寮の一室のリビングに通される。
「失礼します。お忙しいなか、貴重なお時間ありがとうございます。ご無沙汰しています」
「今回はノックしてくれたんですね」
「はい。この前はすいませんでした」
「いえいえ、もう気にしていませんよ」
「前は気にしてたんですね。そんなことより次の試合についてです。いや、それもあるが、まだ隠してただろ?」
「隠していたつもりはありませんよ。まだ教えられる段階ではないと判断して黙ってはいましたが」
「!?どういうことよ?ライが負けてもよかったっていうの?そもそもコーンさんに失礼でしょ?」
アネモネは吠える。
「やっぱりそういうことか。アネモネ、いいんだよ。予想はしていたんだ」
「どういうこと?予想って?」
アネモネは不思議そうな顔をしている。
「考えたんだよ。あと、オリビアもヒントをくれたんだ。サバイバル戦直前に闇オーラの使い方を教えなかったのは危なかったからだろ?」
「そうですよ。少し上手く使えるようになったのはラース辺りに教えてもらったんですか?使える気になっているようですが、非常に危険ですよ。もう使うことはやめておきなさい」
「いや、逆だ。シャイナに怪我をさせたくないから棄権を勧めに来たんだ」
「ライ君ではシャイナに勝てませんよ。魔闘法はそんな単純なものではないんです。ライ君こそ棄権することをおすすめします」
教授も押し返す。
「なるほど、平行線ってことですね。それなら試合で決めるほかないですね。しかし、教授やシャイナには感謝しています。勝っても負けてもこれまで以上の関係を続けさせてください」
俺は丁寧にお願いする。
重要なことだ。
「それを聞いて安心しました。私の一番の心配材料はキミたちとの関係をキープできるかどうかでしたから」
「そうだな。俺たちが研究材料でもあるもんな。こちらこそよろしく」
「そうね。アタシもシャイナとは仲良くしたい。イマイチ信用できない教授はどっちでもいいかな」
アネモネは本音を漏らした。
「あらら。じゃあ、シャイナのおまけでもいいので、仲良くして下さいね」
教授は苦笑した。
「それじゃ、今日は帰るよ。シャイナもお茶ありがと」
「いえ、当日の対戦が楽しみです」
少し時間があいたから少し言葉が少ない。
恥ずかしがり屋な彼女のことだから気にする必要はない。
その場を後にした。
2人で帰りの車の中で話す。
「ねぇ、さっきの、予想してたってのはいつの話?アタシ聞いてないんだけど」
アネモネは少し怒ってる。
「ごめんごめん。元気になってラースの家に行ったときだよ。初め、アネモネはいなかっただろ?だから言うの忘れてたんだよ。それに確信があったわけじゃないしね」
「それはわかったけど、教授は闇オーラの話をしてても良かったんじゃない?」
「いや、教授なりの優しさなんだよ。ギリギリで情報を得て、使うなと言われても使うだろ?過ぎた力は身を滅ぼすものなんだよ。でも、ラースに教えてもらったから使える気になってるけど、まだまだ奥が深いから使うなって言ったんだ。だから棄権しろってなったんだと思うよ?」
「なるほどね。それじゃあ、まだ闇オーラには秘密があるってことよね?」
優等生アネモネは理解が早い。
「みたいだなぁ。でも、それを教えるのは、この大会が終わってからってことなんだろうな。教える気はないけど、試合では見せてくれるかな?」
「それはないんじゃない?そうしちゃうと、また、コーンさんのときみたいに無茶するでしょ?だから、闇オーラの秘密は見せる気もないんじゃない?アタシもあんな無茶はやめてほしいし」
やっぱり、心配だったらしい。
悪いことをしたな。
でも…。
「ごめん。でも、アネモネを守りたかったんだ。それくらいはカッコつけさせてよ」
「かっこよかったから許す」
お許しを頂きました。
ごちそうさまです。
アネモネも16歳だ。
もうお年頃だろう。
よく11歳の見た目のオッサンに飽きないね。
まぁ、俺も0歳の時からずっと好きだから一緒だけどね。
「ありがとうございます」
俺たちは無事自宅に着き、翌日、ラース宅を訪れた。
「オーリービーアーちゃーん、あーそーぼー」
「はーい!って、懐かしいネタだね。1年のときに言ってたよね」
「よく覚えていたな」
「恥ずかしかったから覚えてるよ!」
「ライ、ふざけてないでさっさと本題にはいったら?」
アネモネがイラつきながら言う。
ちょっと嫉妬してる顔だな。
確かにオリビアは美少女だ。
ラースの遺伝子は一切入ってないと言えるほど美少女だ。
おばさん、ありがとう!
でも、俺はアネモネ一筋だ。
前世は恋多き人間だったが、今世はなぜかアネモネ一筋だ。
夢にまで出てくる。
浮気症は転生で治ったらしい。
「ごめんごめん。オリビア、おじさんいる?」
「ごめん、お父さんは仕事で1ヶ月は帰って来ないんだ。あと、多分ライ君が来るからって伝言を預かってるよ」
「伝言?なんて?」
なんだろ?暗号とかめんどくさいのは嫌だな。
「えーっと、『闇オーラの秘密は今は教えられない』だってさ」
「うわー、先回りされてたかー」
「ん?どういうこと?」
オリビアが困っている。
「昨日、おじさんのライバルだった人に会ってたんだけど、その人にも同じことを言われたんだよ」
くやしい。
ラースならあっさり教えてくれると思ってた。
甘かった。
多分、教授から根回しがあったんだろう。
「やられたわね。教授の根回しね」
アネモネも同意見のようだ。
「ライ君の次の闘いに関係あるんだよね?ごめんね。力になれなくて」
オリビアは申し訳なさそうにしている。
何も悪くないのに。
やっぱり、オリビアもかわいいよなぁ。
大人になったら、いい女になるんだろうなぁ。
それでも、自分の子どもを見ているような感覚になる。
アネモネ一筋だ。
「いいよいいよ。それにしても闇オーラの秘密は何なんだろうな?」
「そうね。余計に気になるわね」
アネモネは考え出す。
「しかもそれを使わなくても俺にシャイナは勝てるって言ってたもんな」
「うん。それに、ランク戦であんなふざけた試合ばかりさせられて、ランキングもアテにならないわよ?この前のケンドリックって人よりシャイナが強いから自信あるんでしょうし」
「え、この前の対戦相手より強いの?もうボクじゃついていけない世界じゃないか」
「うーん、そう言わずに、一緒に考えてくれると嬉しいかな?」
「そうだよね。ありがとう!ボクもライ君の力になりたいんだ!」
オリビアが必死に訴えてくる。
どうした?
俺はそのへんの鈍感系ではないぞ?
中身は完全なオッサンだ。
キミにはフォールがいるじゃないか?
そういや、最近見かけないな。
ケンカでもしたのかな?
「ありがとう。それじゃあ、闇オーラについて一緒に考えてくれる?何か気づいたこととか、無いかな?」
「う~ん。そんなにすぐには思いつかないなぁ」
「そりゃそうだよね。ってか、それで思いつくなら俺たちが気づいてるもんね」
「あっ!」
オリビアが閃いたようだ
「お?どした?」
「えっとね、ボクも色々ずっと疑問だったんだよ。だって、お父さんはずっと基礎しか教えてくれないし、その割には、闇オーラとか急に教えてくれるようになったし。だからと言って全て教えてくれているわけでないのは、薄々気づいてたんだ。それで、いくつかお父さんに質問してみたんだけど、その時の様子が少し変だったんだ」
「おお。そりゃ、オリビアも変だと思うよな?それで?どんな質問をしたんだ?」
「うんとね、まず、なぜ闇オーラのことを黙ってたの?って質問したよ」
「ほうほう、いい質問だね。なんて答えたんだい?」
アネモネが食いつく。
「えーっと、危ないからだよって教えてくれたよ。それで、何が危ないのかも聞いたんだけど、前に言ってた、重力で自滅するからだってさ。でも、それだけじゃないと思うんだよね。それで、考えたんだけど、闇オーラの他にも、オーラの蓄積と、オーラ蓄積の加速の二つも教えなかったでしょ?その組み合わせで危険なことが起こるんじゃないかな?」
「あぁ、確かに、そういえば、最近は情報が多すぎて整理してなかったけど、他にも光オーラもあるもんな。その辺りの組み合わせか…」
「その全てか…」
アネモネがつぶやいた。
「全部説はアリだと思うよ。どれか一つでも知れば危険なわけだし」
オリビアが自論を展開する。
「そうだな。光と闇についてはどっちか知ればもう片方も思いつくだろうし、残り二つは危険とは思えない」
俺も一緒に整理する。
「なるほど。この中では、直接危険なのは闇オーラ。すると、闇オーラに他の要素を組み合わせるとさらに危険なのかも知れないね」
アネモネがまとめる。
「簡単に言うと、闇オーラの危険度が加速するってとこかな?」
俺も話を進めるが、座学の苦手なオリビアはそろそろ限界だろう。
「加速といえば、オーラの蓄積加速かな?それと、闇オーラを組み合わせても危険にはならない気がするけどなぁ?」
そんなことはなかった。
ちゃんとついてきていた。
オリビア、ごめん。
「いや、1つとは限らないのでは?例えば、蓄積加速をしながら重力で潰れる体を光オーラで回復するとか?」
「いや、アネモネさん、それじゃ、その場にいるだけだから攻撃にならないよ?」
アネモネにオリビアがツッコむというレアなケースが見られた。
ラッキー。
「そうよね」
ん?
でも、それっぽくない?
アネモネが言ってみた答えが正解に近い気がする。
でも、もう1つ足りないな。
なんだろ?
もう1つ禁止されたような…。
ん?
あ…。
あれか。
子泣き爺作戦だ。
確か、子泣き爺作戦が禁止されたんだ。
それだと、その場にいても重力だけで攻撃できるのか。
「わかったよ。子泣き爺だ」
「コナキジジイ?何それ?」
アネモネが怪訝な顔をしている。
「あぁ、ごめんごめん。それはこっちの話で、さっきのアネモネの答えが正解だ。危険な使い方を思いついたよ。やっぱり全ての組み合わせだな。対戦相手にしがみついて、到底耐えられない重力をかけるんだ。そして、自分のダメージ分は光オーラで回復するんだ。あらかじめ、蓄積加速させておいたオーラで」
2人が驚く。
そして、難しい顔をする。
「ライはそれをやるつもりなの?」
アネモネは難しい顔のまま聞いてくる。
「そうだよ。やめた方がいいよ」
オリビアも同じだ。
「そうだな、やりたくはないけど、世界一のために必要な技術なら身につけないとな」
努めて明るく言う。
「うーん。必要なのかどうかは微妙だよね?だって、抱きつく前提の技って使いにくそうだよ?」
オリビアがド正論で反論してくる。
「確かにそうだけど、それを部分的にできたらどうかな?例えば、踵落としをするときに踵に100倍重力とかかけたら、必ずどこか負傷すると思うんだ」
俺も反論を用意している。
「それを戦闘に組み込むってこと?かなり無理があるわね。今からで間に合うかしら?」
「それじゃあ、闇オーラと並行して土オーラも展開できないかな?ライ君の魔力ならできる気がするんだけど?」
オリビアが遠慮がちに口にする。
「なるほど。それは考えなかったな。並行してオーラの展開ができるんだから闇と土の並行もできそうかもな。やってみようか」
その後、色々と試した。
4属性プラス2属性の展開は可能なのか?
部分的に重力を極端に上げるとどうなるのか?
それを武術に組み込むことは可能なのか?
自爆で負傷した傷はどれくらいの早さで治るのか?
結論としては、できる。
しかし、全てを戦闘に活用するには、かなりのバランス感覚と、自重が必要だ。
調子に乗ればすぐにバランスは崩れる。
一度崩れたバランスは元に戻すまで時間がかかる。
回復が遅れるからだ。
回復が遅れると命取りになる。
実際に死者の出る大会であることは身をもって体験している。
かなりの博打になる。
しかし、練習をしっかりすればなんとかなるんじゃないか?
やってみないとわからない。
完全に博打だ。
いや、長い目で見て、必要な技術であることは確実だ。
実践レベルにならなかった場合は無理しないように自重するしかないだろう。
無責任な巨大すぎる力が破滅を招くことは心に深く刻まれた。
シャイナを失ってまで得る勝利に意味はない。
しかし、今回勝てなくても次回のためにも得たい力だ。
「なぁ、2人はどう思う?俺はこれを使えるようになりたいんだ」
2人にも相談してみる。
「そうね。アタシはライがやらなくても覚えるわよ」
「そうだね。ボクもできるようになりたいな。でも、ボクの魔力量なら厳しいだろうから、お手伝いならできるよ」
「ほんじゃま、やってみっか!」
方向性は決まった。
できるかはやってみなきゃわかんないもんな。
それから、試合までは、ひたすらなるべく出力を高めて攻撃に使えそうなコンビネーションの練習をした。
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俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
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