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第四章 ワクドキ学園パラダイス編 12歳

第51話 決別

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「決闘よ」

 この一言から始まった。
 どうやら、アネモネはセオのことが許せないらしい。
 どちらが俺と結婚するのか決闘で決めると言いだした。
 もちろん、そんな、中世ナーロッパな展開はこの惑星でも存在していない。
 アネモネが自分で考えたルールだ。
 セオはそれに乗るらしい。

「セオ、ちょっと考え直してくれないか?アネモネは頭に血が昇ってるだけで、落ち着けばいつもの冷静な彼女に戻るはずなんだ」

「いえ~、私の文化では2人仲良く旦那様を盛り立てていかのが慣わしですぅ~。邪魔するようなら~、切って捨てるまでぇ~」

 おお、どっちも本気だ。
 まるでマ⚪︎オとク⚪︎パに取り合いにされる桃姫の気分だ。
 どこまで、この役は続くのか?
 そんな疑問に答えてくれるものはいなかった。

「このあと、体育館で闘うわ。まいったがでるまでは勝負よ」

 完全なる魔闘士スタイルですやん……。
 自分の土俵で勝負するとか……。
 しかも、アネモネの魔力はどえりゃーことになっとるのに……。
 どうすんのよ?
 
 アネモネが勝ったとしたら、さっきまでの続きで爛れた性活に戻るだけで、問題ないけど、仮に、セオが勝ったとしたらどうなんの?
 あーもーわからん。
 うん。
 まぁ、いっか。
 なるようになるさ。
 ってか、アネモネが勝つだろう。
 彼女の魔力は40万だ。
 負けるわけがない。
 問題ない。

 体育館についた。
 2人は向き合って立っている。
 セオがコインを出した。

「これでいい~?」

「ええ」

 最低限の会話だけで決まっていく。
 やっぱ、この2人どこか似てるんだよな。
 息ぴったりだし。
 なんだろ?
 アネモネを見てると股間が疼くんだけど、セオからも感じるんだよな。
 なんなんだろ?
 まぁ、いいか。

 セオがコインをトスする。
 クルクルと回りながらコインは放物線を描く。
 体感速度にしてゆっくりと、地面に向かう。
 ゆっくりと地面に近づき、地面に触れる。

 チャリーン

 火蓋は切って落とされた。
 2人同時にオーラを全開。
 セオのオーラはアネモネに負けてない。
 対するアネモネも手加減をする気は一切ない。
 まさに全開のオーラだ。
 どう見ても、セオが大怪我する未来が見える。
 
 セオからダッシュで間合いを詰める。
 アネモネはどっしり構え、横綱相撲だ。
 セオから繰り出される渾身の右ボディ。
 打ち払おうと、アネモネの左手刀が動く。
 拳と手刀が触れ合った瞬間、アネモネの顔が歪む。
 一瞬のスキにセオからの連打。
 顔、喉、胸、腹、股間、正中線に沿って的確に打撃が打ち込まれる。
 アネモネは反応すらできない。
 オーラも全て相殺されている。
 完璧な有効打であった。
 そして、膝をつくアネモネの首筋に手刀が叩き込まれる。
 それの意味は誰もがわかる。
 アネモネの完敗だ。

 アネモネが負けた。
 俺とのお付き合いをめぐる決闘でだ。
 そうなると、俺はどうなる?
 ピーチ姫はクッパに攫われるのか?
 白雪姫は毒林檎を食べたのか?
 
 いや、それはいい。
 アネモネを治療しなくては。
 近づき、治癒魔術をかける。
 あ、これって、オーラの方が早く治るかな?
 今度実験しよ。
 
 さて、アネモネの体調は問題なかった。
 しかし、精神には深い傷を負っていた。
 それにしても、セオは強かった。
 アネモネ相手に圧倒的であった。
 この強さの秘密はなんなんだ?

 ちがうちがう、問題はこのこじれた話の落とし所だ。
 アネモネが決闘と言い出し、自爆した。
 セオがどこまで本気なのか確かめなければ。
 
「勝負ありでいいよね?それで、この後はどうなるの?」

 だれに聞くともなく、独り言のように言ってみた。
 誰かが都合のいい答えを用意してくれることを期待して。

「う~ん。私が勝ったんだからライは私の物かな~? でも、ライの気持ちを奪うことはできないからライとも決闘する~?」

「いやいや、それは決闘で決めることではないのでは?」
 俺は必死で抵抗する。

「……。」
 アネモネは黙っている。

「そうだね~。それじゃあ、1ヶ月でライを振り向かせるよ~。それならアネモネも文句ないでしょ~?」

「……ええ」
 アネモネは力無く返事した。

 それでいいの!?

「アタシは1ヶ月はライと話さない……」

 え?俺がいやなんだけど?
 俺の希望は無視?
 ってか、完全にお姫様ムーブで笑える。
 いや、笑えんか。

「俺の気持ちはどうなんの?」

「ん~。1ヶ月後に答えを聞かせて~」

「部屋はどうすんの?」
 重ねて質問する。

 クロはすごく気まずそうにしている。

「アタシが出ていく」
 アネモネは強情だ。
 言い出したらテコでも動かないきらいがある。
 困ったな。

「アネモネの部屋はどうすんの?」
 さらに質問する。

「クロの部屋にいく」

「え?え?え?」
 クロが3回も同じことを言う。
 そりゃ、そうだろうよ。
 迷惑だよ。

「夏休みの間の1ヶ月だけならいいけど。私は、途中、実家にも帰るよ?」
 クロがしぶしぶ了承する。
 そうだ、実家にも帰らなければ……って、アネモネの実家もウチだ。
 結局アネモネと一緒に住むことになるし、セオが実家についてきたら余計に無茶苦茶だ。
 両親に説明できない。
 仕方ないか。
 1ヶ月だけ付き合ってやるか。

「わかったよ。俺がアネモネを選ぶのは変わらないけど、ケジメには付き合ってやるよ。そのかわり、1ヶ月後にリベンジマッチやろうよ?その間、アネモネは自主トレーニングでどう? クロの家で暇でしょ? もちろん勝っても負けても仲良くしてね」

 この辺が落とし所か?

「わかった~」
 セオは即答だった。

 アネモネは少し考えてから。
「わかった」
 短く返事した。

 アネモネは最低限の荷物を持って出て行った。
 俺も家に入ったが、直前までヤリまくりだったので、ムアっとした臭いと、そこら中にいろんなものが散乱していた。
 ヤバいモノだけ片付けてセオを招き入れた。

「なかなか散らかってるね~掃除してもいい~?」

「いいけど、ゴミは触らないでね」

「察っし~、ライはエロい子だったのね~」

「うっ、すいません」

「ん~ん、私もエロいことしたいから問題ないよ~」

 あれ? 狙われてる?
 今晩大丈夫かな?
 ってか、アネモネともっとヤリたかった!
 残念すぎる。
 
 こうして、奇妙な共同生活は始まったのであった。
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