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第一部 プロローグ 

夢見る少年、大志を抱いて

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第一部 プロローグ

 主人公になりたい。

 悪と戦う主人公に、ヒーローになりたい。

 変哲も無い平日に街を歩いていたら、空から女の子が降って来て欲しい。もしくは居眠り運転をしたトラックに轢かれて異世界へ転生したい。それが無理なら親父よ、本当は伝説の勇者であってくれ。休日はソファでゴロゴロしているおっさんだが実は深夜の戦に向けて英気を養うためだとかそういう設定があってくれ。そしたら俺にも何か特別な力が宿っていて、ある日そのことに気づいた闇の組織的な奴らが命を狙いにきて絶体絶命の大ピンチ的な時にヒロイン的な美少女が助けに来てくれてそして----。

 ……そんな世界の主人公に俺はなりたい。

  だいたい、物語の主人公っていうのは嫌な奴らだ。
 なんなんだ、あいつらは。
 気にくわないことがあったら受け売りの正義を振りかざして暴力を行使する。
 十代のくせに人生知ったような気になって説教しだす。
 帰宅部のクセにいざ戦いとなればどこの傭兵だという立ち回りをする。

 お前らなんだ。
 何が「普通の高校生」だ。一般的な高校生ってのは正義よりも腰振って説教される側なの! 帰宅部は塾に通って敵じゃなく自分と戦ってるの! それが普通の高校生だ馬鹿野郎。

 揃いも揃って糸目で平均的な身長だったり、幼馴染み(♀)がいたり不幸な過去を持っていたりしやがって。
 そして許せないのは非日常に巻き込まれた後に「やれやれ困った。俺は平穏な毎日を送りたいだけなのに。とほほ」とかぼやいてやるせなくすることだ。

 知ってるぞ。そんなことを言っておきながら、裏ではしたり顔をしてクラッチバッグ片手に大通りを闊歩してんだろ。ふざけんな、なにがとほほだ。
 だいたいな、平穏な毎日()を送りたい奴は髪なんか染めねーんだよ。デビューしたての大学生みたいな汚ねぇ色にしやがって。

 なんなんだ! ちくしょう、羨ましい。

 その日々を、お前の嫌々巻き込まれた日常をどれだけ切望したことか。行きたくてもいけない。寝ても覚めても平々凡々たる毎日を過ごす俺に喧嘩売ってんのか。
 ちくしょう、ちくしょう。
 俺ならきっとうまくやってみせる。歴史に名を残す、偉大な主人公になれる。
 主人公を生み出す神様ってのがいるんなら見つけてくれ。

 俺はここにいる。

 ここに平均的な身長で目つきが悪く、幼いころ両親共働きゆえに寂しい思いをしていた本当に、ほんっっっとうに普通の高校生がここにいる。もちろん幼馴染み(♀)もいるし加えて妹もいるぞ。
 どうだ、なかなかのスペックだろ?

 こんな主人公必須スキルを身につけているんだ。あとは神様、あんたが選んでくれるだけだぞ。おい、聞いてんのかコラ。………………ってねぇ、ちょっと、聞いてますか。お願いしますよぉ。
 こちら「美藤錬真みとうれんま」という商品名です。今がお買い時です。安くしますよ。

 どんなチート級の強敵だって正義の名の下、フルボッコにしてやります。学はない浅い人間ですが哲学書とか聖書とか啓発本とか読み漁って、百年生きているような不老不死にも上から説教かましてやります。一家に一台、いかがですか。

 準備はできています。だから、いつでも待っていますから、どうか。
 物語の主人公にさせてください。

 お願い致します。
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