俺の超常バトルは毎回夢オチ

みやちゃき

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第一部 エピローグ

夢見る少女、大志を抱いて

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 エピローグ

 主人公になりたい。
 悪と戦う主人公に、ヒーローになりたい。

 変哲も無い平日に街を歩いていたら、路地裏でマフィアが標的を追い詰めていたりして。それをたまたま目撃しちゃった私は、口止めとして殺されかけるのだけれど、その場にいたボス的な人が「嬢ちゃん、ここから生きて帰りたかったら俺の代わりにこいつを撃て」的なセリフを言って、拳銃的なものを私に渡して。おもちゃじゃ無い、本物を握るのは初めてだからプルプル震えちゃうのだけれど、引き金を引いた私はそこからその組織の一員になったり。

 それが無理なら、ねぇ。うちのソファーでゴロゴロしているマンチカンさん。本当は魔法少女を探している妖精だったりしないかな?……いや、やっぱり箒に乗ったり変身するとき一瞬全裸になるのは嫌だな。

 西部劇に出てくるようなガンマンとか。女スパイとか。平和のために悪と戦いたい。
 そういう世界の主人公に。

 私はなりたい。 


                  ☆    ☆     ☆


「え?」

 少女は思わず素っ頓狂な声を上げた。

「嘘でしょ……これで『ミトウ』って読むの……?」

 黒板の右端。赤いマグネットで貼られたA4ほどの用紙。
 7×6で並べられた四角。囲われた枠の中に、クラスメイトの名前が書かれていた。
 順番は出席番号順。

 その苗字を一目見たときは「ビトウ」と呼んだ。けれど次の席の子が「望月もちづき」だったためにハ行がくるのは間違いだと気づく。

 ええ! もしかしてこれで「ミトウ」なの……? 
 嘘でしょ。
 それなら普通「三藤」でしょ。

 少女は自分が初めて「東海林」と書いて「しょうじ」という苗字に出会った時の衝撃を思い出した。
 苗字がこれなんだ。さぞかし本人も素直じゃない捻くれ者なのだろう。
 彼女は確信めいたものを抱き、自分の席に向かう。

「ミトウ……」

 忘れぬように繰り返す。
 今日初めて出会った男の子の名前。
 遅刻してきた男の子。

「変な人……」

 心の声が漏れた。

「あのー、もしもーし」

 定番の言葉をかけ様子を伺う。
 けれど彼は、相変わらず寝息を立てたまま。

「……ミトウ、くん?」

 声が裏返る。それも当然だ。
 どんな人なのか何も知らないのだから。

「もしもーし、ちょ、大丈夫?」

 もしかして、これ、死んでる? 御臨終ごりんじゅうなさっている?
 何回か呼びかけてみても反応がない。

 入学式直前に、こちらは遅れる覚悟で起こそうとしているのに。

「ムカつく」
 確か彼の下の名前はまことると書いて「真錬」。いや違う、逆だ。「錬真れんま」くん、だ。

 その名前は苗字と違って、ちょっとカッコよくて好きだった。

 あまり大声は出すタイプじゃないし、男子のことを呼び捨てにしたことはないから。
 もし聞こえているなら笑わないでほしい。けれど。

 早く起きなさいよ。


「––––––レンマっ!」

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