5 / 32
第一章
2 敵との遭遇
しおりを挟む
歩き始めて数時間後、俺は途方に暮れていた。
「だぁぁぁぁっっ!!なんだよ、これ!何処見ても木、木、木じゃないか!道とかないのかよ!」
そう、いくら歩いても道らしきものが見当たらないのだ。
周囲を取り囲むのは鬱蒼と茂った木々だけ。他には時折、モンスターらしき声が聞こえて来たり、近くを何かが通り過ぎる気配したりするくらいだ。
「はぁはぁ......お、落ち着け。落ち着け、俺。こんなところで体力を消費していられない。とりあえず栄養補給だ......」
その場に座り込み、ウ○ダーインゼリー(マスカット味)を取り出して飲み干す。
「ふぅ......あ?」
軽く水分補給もして落ち着いた時、何処からか視線を感じることに気付く。それも複数だ。周囲を見渡すと、ある一角の木々の隙間からトカゲ?のような顔がいくつも覗いていた。
俺はその顔の明らかに有り得ないサイズに思わず叫びそうになった。
「おいおい......洒落にならないって......」
リュックを背負い、視線を逸らさずそろりそろりと立ち上がる。
ど、どうする?戦うか?いや初戦闘が一対多なんてのはリスクが大きすぎる。よし、こういうときは......
「......逃げるんだよォォォォッッ!」
そう叫び(小声)、クルッと方向転換して走る、走る、走る。
ジョー○ター家の家訓がこんなところで役にたつなんて思ってもいなかったけど!
背後からはギャアギャアという鳴き声と敵の足音らしき音がドスドスと聞こえて来る。感覚的にまだ距離はあるようなのでチラリと後ろを振り向く。
「ウッソォ......」
そこには人とトカゲを足して二で割ったようなモンスターが、十体近く走って来ていた。
「......運悪すぎじゃないか?俺」
しかもどうやら彼らの方が若干足が速いらしく少しずつ距離を詰められているようだ。
「クソッ! このままじゃ、いずれ追いつかれてやられてしまうだけだ。
どうにかしないと......」
だが、どうする?数ではあっちが圧倒的に有利。身体能力もかなり高く見える。対するこちらは武器はあるが、不慣れ。身体能力も以前よりかは上だが勝てる自信はない。.....あれ?詰んでない?
せめて弱点とか向こうの情報を知っていたら......って情報?
「それがあった......!何も変わらないかもしれないが、何もしないよりかはマシだ!」
再度、振り向きモンスターを視界に入れる。
先程よりも近づいていることに恐怖を感じ、身体は強張るがお構いなしに「鑑定」をする。
瞬間、視界にウィンドウが現れ、敵の情報を表示する。
種族:リザードマン
光沢のある灰色の鱗で覆われた大柄な身体にリザード系の顔立ちをした亜人型のモンスター。並みの刃物など通さない防御力と常人の身体など一撃で再起不能にしてしまうほどの怪力をもつ。基本的に数十匹単位で洞窟などに集落を形成していているが、外に出て狩りを行うのは5~7匹ほどの戦闘部隊だと言われている。また視力が弱い、しかし並外れた嗅覚で獲物の位置を把握する。
ウィンドウの出現を確認すると同時に前を向いて走り出す。視界に浮かべたままのウィンドウから情報を読み取っていく。習性...弱点...なんでもいい。なにかこの状況を打破できるようなものはないか......?
情報の中に信じたくないようなものもあった気がするが、気にしちゃいけない。
やめたくなる気持ちを押さえ、とにかく読み進めていく。
「......あった!並外れた嗅覚で......か」
ようやく見つけた情報をもとに作戦を組み立てていく。現在、リザードマンとの距離は約20メートルほどだ。一瞬でも気を抜けば追いつかれてしまうだろう。一方、俺の体はトレーニングの成果かこの世界に来た為かはわからないがほとんど疲れていない。後先考えなければよりスピードを上げることもできるだろう。
そこまで考えてなんとなくリザードマンを倒すための道筋が掴めたように思う。確信はないし、それに伴う技術もないため、かなり一か八かの賭けになるだろうが。
「まぁ......やってみますか」
俺はその場で立ち止まり、大きく深呼吸をする。クラウンチングスタートの姿勢を取り、肺から空気を押し出しながら全身の血液を脚へと送り込むようなイメージで力を貯めていく。そうこうしているうちにリザードマンたちは10メートルほどに距離を詰めていた。焦る気持ちを抑えて俺は弾かれたように走り出した。あまりの急加速に倒れそうになるが、何とか踏ん張り走り続ける。どうやら本気で走るとかなりのスピードが出るようだ。後ろをチラリと盗み見るとどんどんリザードマンとの距離が離れ、リザードマンたちが見えなくなっていく。立ち止まって確認するが、姿は見えないし距離を取れたようだな。
「よし......こんなものかな」
辺りを見渡し、ちょうどいい広さの空間と隠れられそうな場所を探す。
「......ここがいいな」
視線の先には、ぽっかりと口を開けた見晴らしのよい空間とそのすぐ近くに隠れられそうな立ち枯れた木があった。
そして目立つところにリュックを下ろし、中身を広げる。服も脱ぎ、刀は動きを阻害しないように一本のみを抜き身で持つ。そして鞘ともう一本の刀も邪魔にならないように置いておく。傍から見れば俺は半裸に抜き身の刀のみというおかしな出で立ちをしていることだろう。だが...これでいい。こうすることで俺は動きやすくなり、広場には俺の匂いが染みついたものが置けるというわけだ。後は奴らが荷物などの匂いを俺自身だと誤認してさえくれれば隙を作ることができるだろう。
周囲の植物を体に擦り付け、体臭を消してから近くの立ち枯れの木へと向かう。そのまま広場の様子を確認できる位置に隠れ、息を潜める。
隠れ始めてすぐ、地に響くような足音が聞こえてきてリザードマンらが姿を見せた。俺は緊張と恐怖で全身から汗が吹き出し、心臓が痛いくらいに拍動している。今にも飛び出してしまいたいが、自分の腕をきつく握りしめ、冷静さを保つ。
どうやらうまくいったようでリザードマンたちは俺には気付かず、荷物のほうへ向かったようだ。だがしかし、おそらく不意を突いたとしても当てられるのは一撃から三撃までだろう。ここから確認できる限りでは奴らの総数は七体、つまり一撃で一体葬ったとしても残りは四体......。そこからは、まぁ、なるようにしかならないだろう。
(とにかくやれる限りのことをするしかないな......)
そう、俺は決意を固め、戦闘へと赴く。
「だぁぁぁぁっっ!!なんだよ、これ!何処見ても木、木、木じゃないか!道とかないのかよ!」
そう、いくら歩いても道らしきものが見当たらないのだ。
周囲を取り囲むのは鬱蒼と茂った木々だけ。他には時折、モンスターらしき声が聞こえて来たり、近くを何かが通り過ぎる気配したりするくらいだ。
「はぁはぁ......お、落ち着け。落ち着け、俺。こんなところで体力を消費していられない。とりあえず栄養補給だ......」
その場に座り込み、ウ○ダーインゼリー(マスカット味)を取り出して飲み干す。
「ふぅ......あ?」
軽く水分補給もして落ち着いた時、何処からか視線を感じることに気付く。それも複数だ。周囲を見渡すと、ある一角の木々の隙間からトカゲ?のような顔がいくつも覗いていた。
俺はその顔の明らかに有り得ないサイズに思わず叫びそうになった。
「おいおい......洒落にならないって......」
リュックを背負い、視線を逸らさずそろりそろりと立ち上がる。
ど、どうする?戦うか?いや初戦闘が一対多なんてのはリスクが大きすぎる。よし、こういうときは......
「......逃げるんだよォォォォッッ!」
そう叫び(小声)、クルッと方向転換して走る、走る、走る。
ジョー○ター家の家訓がこんなところで役にたつなんて思ってもいなかったけど!
背後からはギャアギャアという鳴き声と敵の足音らしき音がドスドスと聞こえて来る。感覚的にまだ距離はあるようなのでチラリと後ろを振り向く。
「ウッソォ......」
そこには人とトカゲを足して二で割ったようなモンスターが、十体近く走って来ていた。
「......運悪すぎじゃないか?俺」
しかもどうやら彼らの方が若干足が速いらしく少しずつ距離を詰められているようだ。
「クソッ! このままじゃ、いずれ追いつかれてやられてしまうだけだ。
どうにかしないと......」
だが、どうする?数ではあっちが圧倒的に有利。身体能力もかなり高く見える。対するこちらは武器はあるが、不慣れ。身体能力も以前よりかは上だが勝てる自信はない。.....あれ?詰んでない?
せめて弱点とか向こうの情報を知っていたら......って情報?
「それがあった......!何も変わらないかもしれないが、何もしないよりかはマシだ!」
再度、振り向きモンスターを視界に入れる。
先程よりも近づいていることに恐怖を感じ、身体は強張るがお構いなしに「鑑定」をする。
瞬間、視界にウィンドウが現れ、敵の情報を表示する。
種族:リザードマン
光沢のある灰色の鱗で覆われた大柄な身体にリザード系の顔立ちをした亜人型のモンスター。並みの刃物など通さない防御力と常人の身体など一撃で再起不能にしてしまうほどの怪力をもつ。基本的に数十匹単位で洞窟などに集落を形成していているが、外に出て狩りを行うのは5~7匹ほどの戦闘部隊だと言われている。また視力が弱い、しかし並外れた嗅覚で獲物の位置を把握する。
ウィンドウの出現を確認すると同時に前を向いて走り出す。視界に浮かべたままのウィンドウから情報を読み取っていく。習性...弱点...なんでもいい。なにかこの状況を打破できるようなものはないか......?
情報の中に信じたくないようなものもあった気がするが、気にしちゃいけない。
やめたくなる気持ちを押さえ、とにかく読み進めていく。
「......あった!並外れた嗅覚で......か」
ようやく見つけた情報をもとに作戦を組み立てていく。現在、リザードマンとの距離は約20メートルほどだ。一瞬でも気を抜けば追いつかれてしまうだろう。一方、俺の体はトレーニングの成果かこの世界に来た為かはわからないがほとんど疲れていない。後先考えなければよりスピードを上げることもできるだろう。
そこまで考えてなんとなくリザードマンを倒すための道筋が掴めたように思う。確信はないし、それに伴う技術もないため、かなり一か八かの賭けになるだろうが。
「まぁ......やってみますか」
俺はその場で立ち止まり、大きく深呼吸をする。クラウンチングスタートの姿勢を取り、肺から空気を押し出しながら全身の血液を脚へと送り込むようなイメージで力を貯めていく。そうこうしているうちにリザードマンたちは10メートルほどに距離を詰めていた。焦る気持ちを抑えて俺は弾かれたように走り出した。あまりの急加速に倒れそうになるが、何とか踏ん張り走り続ける。どうやら本気で走るとかなりのスピードが出るようだ。後ろをチラリと盗み見るとどんどんリザードマンとの距離が離れ、リザードマンたちが見えなくなっていく。立ち止まって確認するが、姿は見えないし距離を取れたようだな。
「よし......こんなものかな」
辺りを見渡し、ちょうどいい広さの空間と隠れられそうな場所を探す。
「......ここがいいな」
視線の先には、ぽっかりと口を開けた見晴らしのよい空間とそのすぐ近くに隠れられそうな立ち枯れた木があった。
そして目立つところにリュックを下ろし、中身を広げる。服も脱ぎ、刀は動きを阻害しないように一本のみを抜き身で持つ。そして鞘ともう一本の刀も邪魔にならないように置いておく。傍から見れば俺は半裸に抜き身の刀のみというおかしな出で立ちをしていることだろう。だが...これでいい。こうすることで俺は動きやすくなり、広場には俺の匂いが染みついたものが置けるというわけだ。後は奴らが荷物などの匂いを俺自身だと誤認してさえくれれば隙を作ることができるだろう。
周囲の植物を体に擦り付け、体臭を消してから近くの立ち枯れの木へと向かう。そのまま広場の様子を確認できる位置に隠れ、息を潜める。
隠れ始めてすぐ、地に響くような足音が聞こえてきてリザードマンらが姿を見せた。俺は緊張と恐怖で全身から汗が吹き出し、心臓が痛いくらいに拍動している。今にも飛び出してしまいたいが、自分の腕をきつく握りしめ、冷静さを保つ。
どうやらうまくいったようでリザードマンたちは俺には気付かず、荷物のほうへ向かったようだ。だがしかし、おそらく不意を突いたとしても当てられるのは一撃から三撃までだろう。ここから確認できる限りでは奴らの総数は七体、つまり一撃で一体葬ったとしても残りは四体......。そこからは、まぁ、なるようにしかならないだろう。
(とにかくやれる限りのことをするしかないな......)
そう、俺は決意を固め、戦闘へと赴く。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-
いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、
見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。
そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。
泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。
やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。
臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。
ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。
彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。
けれど正人は誓う。
――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。
――ここは、家族の居場所だ。
癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、
命を守り、日々を紡ぎ、
“人と魔物が共に生きる未来”を探していく。
◇
🐉 癒やしと涙と、もふもふと。
――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。
――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
聖女じゃない私たち
あんど もあ
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生二人。王太子によって、片方は「聖女」として王宮に迎えられ、片方は「ただの異世界人」と地方の男爵に押し付けられた。だが、その判断に納得する二人ではなく……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる