氷焔の冒険者~元ヲタは異世界で侍になるそうです~

不知火 氷雨

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第一章

1 転移失敗

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「......はっ!?ってここは......?」
 
 ふと気が付くとそこは何処かの森のようだった。身体を起こして周囲を見渡す。

「さっきまで社の中にいたんだし、転移してきた......ってことでいいんだよな。」

 そこはまるでテレビで見たような原生林だった。見たこともない木々が生い茂り、何かの生物の鳴き声も聞こえる。しかし現状では判断材料がないため、本当に異世界なのかはわからない。
 女神―アイテリアルは何処かの街の近くに転移させると言っていたが......。

「どうみてもそんな雰囲気じゃないよな......」

 立ち上がろうとして気付く。自分が倒れていたすぐ近くに、来る前に準備したリュック、それとさりげなく置かれたある物体に......。日本男児なら誰もが一度は握ってみたいと思うのではないだろうか。

「これは...刀か!」

 そう。そこにあったのは真っ白な鞘に納められた二振りの刀だった。
 思わずひと振りを手に取り、抜刀してみる。シュラァッ!っと耳触りのよい鞘走りの音と共に現れたのは、波打つ刃紋が美しい刀身。その青白くすら感じられる磨き抜かれた黒鉄に思わず魅入ってしまう。
    よく見ればその鍔元には『無銘』と刻印されていた。まるで一つの美術品のようでもあるその刀をしばらく眺めていたのだが、同時にまだ何かが足りないようなそんな形容しがたい感情も抱いた。
 構えて軽く振ってみると、自分でも驚くほど違和感なく振れ、まるで何年もこの刀を握ってきたかのようだった。それこそ手足の延長のように扱うことも不可能ではないと思えるほどだ。
 そうやって一通り素振りした後、もう一方の刀も確認したのだが...。先程のものと寸分違わず良いもので、銘も同じ『無銘』だった。しかし相変わらず何処がとは言えないのだが、何かが足りない。

「凄い良いものだってことはわかるんだけど......。もう少し何かないか?どうせなら説明書とか置いておいてくれないかな、俺の霊魂器なんだろうし。」

 俺が軽く愚痴をこぼしながらその刀を眺めていると

「ん?」

 視界にうっすらと何かが浮かんできたような気がした。俺は首をひねり、さらに刀を凝視してくまなく見ていく。

──────スキル「鑑定」を会得ラーニングしました。

 その何かがハッキリ見えると同時に脳内にアナウンスのようなものが聞こえた。

「お......おわぁっ!?」

それと同時に見えてきたのは半透明のウィンドウのようなもので、そこには何かの説明が書かれていた。

「......えっと?」


霊魂器:無銘
Rank:B+
所有者:ソウジ・アカツキ

二振りで一つの刀。見るものの心を捕らえて離さない美しい刃紋をもち、一切の澱みがない。しかしその実、切れ味は王都の一級鍛冶師の鍛えた剣と打ち合っても刃こぼれせず、逆に向こうが切れてしまう程である。また、この刀には文字通り銘がない・・・・


「これ、もしかしなくても刀の説明だよな。王都の一級鍛冶師っていうのがどんなものか知らないから何とも言えないけど。......特殊な能力とかは持ってないか。」

 期待していただけに、少し落胆してしまう。しかし、再度読み込んでいる時、俺の目はある一点に釘付けになる。

「銘が......ない?」

 どういう意味かはわからないが、まだ何か変化があるという事なのだろうか。それとも特に意味はないのか。

「書いてないってことは考えても今は分かんないってことなんだろうが...。それよりもこのウィンドウみたいなのどうなっているんだ?消えるのか?」

 試しに消えろと念じてみるとそのウィンドウはスッと消えた。

「消えた......。つまり......基本は任意発動のようだな」

 今度は試しに、近くの木を鑑定してみる。


オーク

何処にでもある普通の木。一般的に建材等に用いられる事が多い。
また、その実は拳ほどの大きさで熟れると赤くなる。甘酸っぱく美味しいため、料理などにも用いられる。


「......これ絶対、林檎だよな。いや違うんだろうけど、うん。と、とにかく、これでどう使うかはわかったかな。」

 そうやってウィンドウを眺めている間にふと思いついた事があった。
 俺はそれを実践するためにそのままウィンドウを閉じて一つ深呼吸をする。

「......ステータス!」

 ラノベの知識通りならこうすれば自身の情報が見れたりするはずだ。まぁ?そんな簡単にいくはずもな......い......。

「......って、ホントに出ちゃうのかよ。」

 またしても眼前には......といっても実在している訳ではなさそうだが、先程までのウィンドウと同じようなものが現れていた。


名前:ソウジ・アカツキ
年齢:17歳
種族:ヒューマン
称号:異世界からの来訪者
職業:刀術家
筋力:230(+40)
敏捷:210(+40)
知力:150
魔力:300
器用:130
運:60
スキル:鑑定Lv.1(New!)刀術Lv.1(New!)
エクストラスキル:創造神の加護


「これが俺のステータスか。」

 職業は刀なんて練習したこともないが『刀術家』......。きっと説明にあった天職ということだろう。
 後の筋力値云々は基準が無いため、よくわからない。

「それに筋力値と敏捷値の後に......+40?どういうことだ?」

 なにかしらの要因により強化されているという事だろうか。
より詳しく見れないか注視してみるとサブウィンドウのようなものが開かれた。


職業『刀術家』の特性により、+40の補正が掛かっている。


 とかかれていた。おそらくステータスの注釈なのだろう。

「職業補正というやつか。」

 今度は職業の欄を注視してみる。


職業『刀術家』

刀と呼ばれる、片刃で反りのある武器を扱うのに適した職業。
スキル「刀術」のLv.が取得、上昇しやすくなる。上昇幅の違いは当人の才能の程度による。
熟練度次第では二刀を扱えるようにもなる。
また、職業補正で筋力値と敏捷値に補正がかかる。


「二刀流......!!いいな、是非とも使えるように為りたい!ちょうど二本あるし。」

 スキルの欄には先程会得した「鑑定」に「刀術」が表示されていた。
 各スキルの横にはLv.表示があり、熟練度によって性能も上昇することが予想できる。スキルの注釈も見てみる。


「鑑定」 Lv.1

視認したものの情報を見ることが出来る。
Lv.が上昇すればするほど見れる情報量も増える。
人間を鑑定する場合は、受け手側が隠蔽していない限り見ることが可能。また隠蔽している場合でも相手より大幅にLv.が高ければ見ることが可能。


「刀術」 Lv.1

極東の剣術。刀と呼ばれる特徴的な武器を使い、相手を断ち斬ることに特化している。西洋的な剣と違い、熟練させることで様々な技術を会得出来る。


 どうやら「鑑定」に対して「隠蔽」という対抗スキルがあるようだ。
 まぁ確かに好き勝手見れたらプライバシーも何もない。......Lv.差があれば見れるようだが。

「ということは鑑定を持っている奴にはステータスを見られる可能性があるのか......。これは早々に取得する必要があるかな。特に称号の“異世界からの来訪者”なんてバレたら絶対めんどくさいだろうし......」

 この世界で異世界から来たなんて知られればどうなるかわかったもんじゃない。
 えっと......「刀術」に関しては特筆すべきところはないな。
 後は......エクストラスキルか。

「エクストラ......特殊なスキルだったりするけど......。基本的には取得できないスキルということか?」

 ステータスを見た当初から気になっていたエクストラスキル「創造神の加護」の情報を見る。


「創造神の加護」

創造神アイテリアルの加護。
全てのスキルに対して取得確率が上昇。
また所有スキルの状態によっては稀に創造神の権能「創造クリエイト」の効果が発動し、スキルの 創造が可能になる。
条件には様々なものがあるが、類似したもの間での合成が多い。
具体的には材料となる二種類のスキルを選び、それらの派生型のスキルが創られる。


「スキル取得確率の上昇......「鑑定」スキルが簡単に取れたのはこれがあったからか。それにスキル創造ってある意味チートじゃないか?」

 もし使えるが欠点のあるスキルがあったとする。それが合成可能状態になれば合成次第ではデメリットの少ないスキルが出来上がるのだ。
 まぁ稀にとあるし、そんな上手くはいかないだろうが......。なんだか変なスキルばかり出来てしまいそうだ。

「うん......チートというほどじゃないがそこそこなステータスじゃないかな?運が少ないのが不安だけどな。」

 カ○リーメイトを取り出して軽く腹ごしらえをする。
 そして街を目指すためリュックを背負い、刀もベルトの両脇に差す。

「とりあえず何処か道に出ないとな。異世界にすぐ迷子になって死にましたとか冗談でも笑えないし。」

 そうして俺はこの原生林から抜け出す為に歩き始めた。



 
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