氷焔の冒険者~元ヲタは異世界で侍になるそうです~

不知火 氷雨

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第一章

8 魔力操作

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「......そろそろいいかな」

 近くで聞こえた声に、遠のきかけた意識が戻ってくる。

「がっ! ......ぐぁぁっ! ......な、なにが......だ!」

 見れば、アリアが近づいてきてこちらへ手を伸ばす。

「や、やめ......ろ!」
「はいはい、じっとしていてねー」

 こうなった以上、何をされるか分かったものじゃない。逃げなければ......しかし、体は動かず逃げることはできない。

「はぁ......そんなに怖がらなくてもいいのに。......ヒール」

――――――治癒魔法Lv.2『ヒール』

「え......?」

 暖かな光が体を包み込み、急速に体の痛みが引いていく。これがいわゆる治癒魔法というものだろうか? しかし何故......?

「からのー......マナヒール」

――――――治癒魔法Lv.2『マナヒール』

 ドクン......!

 なんだ......!? 体の中に何か......血液? ......いや、違う、これは......。

「分かったかい? 今、ソウジ君が感じているものこそ、魔力・・だ」

 ......!! これが......魔力? ......そうか、そういうこと・・・・・・か。

「師匠......少し、荒療治過ぎません?」
「! 本当に理解が早いね。確かにそうだけど、これが一番手っ取り早い方法だったんだよ」

 つまり、彼女は俺に魔力を感知させるためにこうしたということだ。意識すれば自分の中に新たな力の流れがあることがわかる。どうやら右胸のあたりから全身を巡っているようだ。
 今まで感じたことのない感覚に違和感を覚えながらも、全身を動かしてみる。...うん、特に調子が悪いということもなく、むしろ調子がいいくらいだ。
 ......というか、今更だがこれ、後遺症とかないのか......?

「あぁ、問題ないよ。今回、使ったものは軽度の魔力暴走を起こすものだし、魔力回路が傷つくほどじゃないと思う......たぶん」
「心読まないでください......って暴走状態だったの!?」
「気にしない、気にしない! 一応、確認するけどね」

 俺はあまりの無茶苦茶っぷりに呆れることしかできなかった。本人は全く気にしていなさそうだが。

「ちょっとごめんねー、魔力通すから」

 そういって、俺の腕に触れる。と、同時に触れられている部分から何とも言えない感覚が広がっていく。実をいうと、こうやって魔力を通されるのは初めてではないのだがその時は全くといういうほど何も感じなかったのだ。師匠が言うには、俺がきちんと魔力を感知できていなかったかららしいが。
 つまり、今、それを感じているということはちゃんと魔力を感知できているということだ。

「んー......問題はなさそうだね、うん」
「良かったです......」
「さて......訓練しようか?」
「了解!!」

 かなりテンションが上がっている。ようやく、魔力をあつかうことをできるのだから。今までは、体力を回復させることが最優先だったし、色々言われた方法で訓練していたのだが、結局魔力を感知できていなったし。

「とりあえず、外に出ようか」

 師匠の言葉に頷き、彼女の後をついて外へ出る。

「うぉ......」

 三日ぶりに外に出たからか、かなり眩しく感じて反射的に、目を閉じてしまう。
 そっと目を開けてみれば、慣れたのか、まだ眩しいものの......直視できるようになった。

「さて、ソウジ君。突然だけど、魔力ってなにかわかるかな?」

 本当に突然だ。少し考えて答える。

「えっと......魔法を使うために必要なもの?」
「うん、そうだね。魔法的知識がない人はみんな、そう答えるし間違ってもいない」
「やけに含んだ言い方ですね......?」

 それ以外になにがあるというのだろうか......。頭を捻ってみるが、思いつかない。

「説明すると、少し長くなるんだけど......」

 師匠の説明を聞くに、魔力はこの世界のどんな生物も大なり小なり持っているそうだ。これは、この世界は魔素というもので満ちており、これは生物にとって毒なのだという。それを中和するために魔力が作用しているらしい。らしい......というのはまだはっきりと解明されておらず予測段階だから、ということらしい。

「......とまぁ、魔力は重要なんだ。そして、それを素材とし、魔法を起こすことが出来るのは一握りのものだけ」
「...俺も使えるとは限らないってことですが?」
「いや、そこはあまり心配してないよ」
「なんでですか?」
「勘」

 .........。本当に大丈夫だろうか......? 心配になってきた。

「まぁ今まで言ったことは別に覚えてなくてもいいんだけど...。一応ね、言っておこうと思って」

 確かに...知っていて損はないはずだ。

「まぁ言うよりやってみたほうが早いね。じゃあソウジ君、まずはこの木を殴ってみてくれる?」
「殴る......ですか」
「うん」

 何故、そんなことをするのかわからないが、とりあえず従っておこう。
 俺は木の前に立つと、腰だめに拳を構える。そしてそのまま、短い発声と共に打ち付ける。

「はっ!!」

 結果は、火を見るよりも明らかだ......。そう、あまりの硬さに俺が悶絶している。

「いってぇ......!」
「あはははっ! 予想通りだねっ!」
「なに笑ってるんですか......!」

 涙目で師匠を睨みつける。しかし、彼女はどこ吹く風と気にしていない。

「ご、ごめんね......ふふ。ちょっと見ておいて」

 彼女は、笑いながら俺の殴った木の前に立つ。そして軽く、木を殴りつける。そんなものじゃびくともしな......。

 バキィィッッ!!

「は?」

 目の前では、彼女が殴った木が粉砕され、折れて倒れていく。

「こんなこともできる。今のは右腕全体に魔力を収束させて強化したんだ。いわゆる、強化魔法というやつだね」

 凄い......。単純に凄いと感じた。魔力を収束させると言っていたが......。

「......こうか?」

 俺は先ほど感知できるようになった魔力を動かそうとする。しかし中々うまく動かすことが出来ない。

(いや、まてよ? さっき俺は何だと思った? そうだ、血液・・だ。いけるか......?)

 血液が流れるような感じをイメージしながら、魔力を動かす。若干動く気配を感じた。

(よし! いけるぞ!)
 
 そのまま、動かして右手へと収束させていく。そう、筋繊維の一本一本を補強するように......。段々右腕が軽く熱を持ったようになる。そのまま状態を意識して近くの木へ向かう。

「!!」
「おらぁっ!」

 思いっきり拳を木へと叩き付けた。

 ドゴォッ!!

――――――スキル「魔力操作」を会得ラーニングしました。
――――――スキル「強化魔法」を会得ラーニングしました。

 すると、さっきはびくともしなかった木が粉砕され、飛んでいく。そして収束させていた魔力も霧散していく。
 俺は自分が行ったことが信じられず、しばし唖然としてしまうが、喜びが沸々と湧き上がってくる。
 
「よっしゃぁ!」

 その場で思わず、ガッツポーズをしてしまう。そんな俺に師匠は苦笑しながら、声を掛けてくる。

「全く......見よう見まねでできるものじゃないんだけどな......。まぁとにかく、これで魔力の扱いはわかったよね?」
「ああっ! ......じゃなかった、はい!」

 興奮のあまり、口調が素に戻ってしまったが...確かに魔法が使えたのだ。たとえそれがただの強化だとしても。これくらいは許されるだろう。
 
「じゃあ、次へ進もうか。今みたいに収束して強化する必要はないけど、その魔力を体の隅々まで巡らせてみよう。それが出来たらそのまま動き回ってもらうから」
「マジすか......」

 少し動かすだけでもあんなにきつかったのに......。どうやらうちの師匠は鬼畜なようだ。

「変なこと考えてないで、さっさとする!」
「はいっ!」

 やっぱり心が読まれているようだ、すごく怖い......。
 結論から言うと......無理げーです。魔力を意識して動かそうとするが、足に巡らそうと思えば、先ほどまで維持していた腕の魔力が足まで流れて行ってしまう。どうにもできる気がしない。


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