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第一章
14 冒険者試験
しおりを挟む「では、こちらです」
冒険者登録のためにギルドへと来た俺だったが、事前に聞いていた通り試験を受けることになった。
俺の担当をしてくれたのは燃えるような赤い髪を肩上あたりで切り揃えた、いわゆるセミロング美少女だ。髪と同じ色の切れ長の瞳、そして黒縁の眼鏡を掛けていて、全体的に落ち着いた印象を与える。なんというか、仕事のできるお姉さんって感じだな。
「ソウジ様、こちらに木剣......いえ、木刀でしたか。使う者がほとんどいないので、試験のために用意こそされているものの死蔵されていたのです」
彼女から手渡された木刀を手に取る。軽く振って、重さや握り心地などを確認する。
「うん......少し離れていてもらえますか?」
「え? あ、はい」
周囲の広さを確認する。木剣、木槍といった様々な木製の武器が並んでいるところをみると、おそらく試験のための準備場所といったところだろうか。......珍しいものだと鎖以外が木製の鎖鎌があったりする。
そういった場所である以上、素振りをするくらいの広さはあるわけだ。
大体の広さを確認した後、木刀をスッと正眼に構える。大きく深呼吸して、全身を弛緩させる。
そうして、そのまま一気に......
「はぁっ!!」
大きく一歩を踏み出し、上段から真下への振り下ろし、すぐに体の向きを切り替え、左右の横薙ぎ、袈裟斬り、逆袈裟切り、刀身に左手を添えてからの突き、各スキルの動きをなぞるようにしてその場で素振り......いや、剣舞といった方がいいだろう。
「すごい......」
側にいた受付嬢から感嘆の声が聞こえる。
(新人の動きじゃないわね......。これだけ見れば、ランクD相当......いえ、Cはあるかしら? でも動きがかなり荒削りだし、直線的すぎるわ。搦め手に弱そうね)
そんな風に分析されていることにも気付かず、素振りを続けるソウジ。
「ふっ! ......っと、こんなものかな」
握って振ってみた感じは、軽すぎず、重すぎない、というものだった。これなら模擬試合も何の問題なく行えるだろう。
(まぁ、真剣に比べればどうしても軽いから、ちょっと感覚が違うのは確かだけど)
「すみません。こちらはもう大丈夫です」
「わかりました。では、試験について説明させていただきます」
「お願いします」
「では、まず試験の内容はこちらの職員、もしくは依頼を受けたランクC以上の冒険者と模擬戦をしていただきます。内容は明かすことはできませんが、幾つかの審査項目があり、それを満たしているかで判断します。」
職員......おそらく元冒険者とかだろう。そうでもなきゃ、試験なんぞできないからな。
それに審査項目か。戦闘力は確実として、他には......なんだろうか? パッと思いつくのは、礼儀とか? 冒険者は依頼も受けるんだから、依頼者と話したりすることもあるはずだ。
(ていうか、冒険者って大丈夫なのか? 荒くれ者とか多そうだけど......)
「もちろん、冒険者といってもこちらで面接をして新人を潰すような者は除外しております。ご安心ください」
「! あ、はい。大丈夫です」
まるでこちらの心を読んだような返答に思わず、ビクリとしてしまう。おそらく偶然だろうが。
(偶然......だよな? というか、俺がサトラレなんじゃなかろうか)
ソウジが自分の心の読まれ具合について心配しているあいだに、奥の扉が開き一人の男性が出てくる。腰に木剣を差し、その鋭い目つきと落ち着いた物腰からは腕が立つであろうことを想像させる。
彼はそのまま、こちらへと歩みより俺に声を掛けてくる。
「キミが今回の新人かいな? まぁ緊張せずに頑張ってこーや」
「............は?」
そして厳格そうだった顔をふにゃりと歪め、人の良さそうな笑みを浮かべる。先程までの雰囲気はなんだったのか、と言いたくなるような豹変ぶりに開いた口が塞がらない。
(ていうか、なんで関西弁?)
「ああ、グランさん。もう此方にいらしてたんですね。これからご挨拶に伺おうと思ってたんですが」
「いやなぁ、どんな子なんやろーて気になったんやて」
受付嬢と親しげに話している様子から知り合いのようだが......。というか試験の相手っていうのはこの人か?
「あ、あの......」
「あ、すみません。紹介しますね。こちらソウジさんの試験を担当していただきます、グランさんです」
「よろしく頼むわ!」
朗らかに笑ってこちらへと手を差し出してくる彼――――グランさん。戸惑いつつも、手を取るとガッチリと握りしめてくる。その手のひらには剣を振ってできたであろう大きいタコがあった。
「ミライアの嬢ちゃんが言うたけど俺はグランっちゅうもんや。元Cランク冒険者で、今はギルドの職員やらせてもろうてるわ」
「は、初めまして。今回、試験を受けるソウジと申します。よろしくお願います」
「かたい。かたいでぇ! もっと力抜いていき!」
「は、はぁ」
見た目とは裏腹に、相当砕けた姿勢な人のようだ。ていうか、受付嬢さんの名前、ミライアさんっていうのか。
「顔合わせも済んだようですし、そろそろ行きましょうか」
俺たちの様子を見てもういいと思ったのか、受付嬢――――ミライアさんがこちらへと声を掛ける。
「「あ、はい(あいよ)」」
俺とグランさんはともに返事をして、ミライアさんの先導に従ってついていく。
「こちらです」
準備室の奥にあった扉を押してその中に入る。
「おぉ......」
俺はその先の光景に思わず、感嘆の声を漏らす。
一見、何の変哲もない訓練場に見えるのだが、よく見れば周囲を覆う結界らしきものに気付けるだろう。
「お? その反応は見えたんかいな?」
「ええ、まぁ。師匠に魔力を見る訓練もさせられてたもので」
「師匠てぇっと『光弓の戦姫』か。噂は聞いてるで、誰ともパーティを組まなかった嬢ちゃんが久しぶりに顔を見せたと思ったら、弟子とかいって変な黒髪の坊主を連れとったてな」
噂というのは広まるのは早いな。それに弟子云々の話は門のところでしかしていないはずだが......まぁ付近にいた商人とかから広まったのだろう。
「変ってそんなに変ですかね、俺?」
「まぁ、見慣れないって意味やろ、俺だってこの辺で黒髪は見んしな」
......そういうものだろうか?
「それは置いといて、アレの話やな。刻印式の魔法結界でな、外に影響を出さんようになっとるんや」
「へぇ......。つまり、魔法とか攻撃の余波を観覧席に一切伝えないんですか」
「そういうこっちゃ。まぁ例外もあるけどな」
例外とは何だろう? 結界を無視して攻撃を伝えてしまう人とかいるのだろうか?
「そろそろよろしいでしょうか。試験を始めたいのですが?」
また話し始めた俺たちを見かねてか、ミライアさんが呆れた視線を投げかけてくる。
「はいはい、急かさんといてーや。ほな、やろうかいね......」
「はい」
訓練場の両端に移動し、それぞれの武器を抜き構える。
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