氷焔の冒険者~元ヲタは異世界で侍になるそうです~

不知火 氷雨

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第一章

15 冒険者試験......?

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「では、只今より新人ソウジの冒険者試験を開始します! 試験官は、ギルド職員グラン。立会人はミライア・アルヴェリア! 決着は首などの急所に攻撃を受けるか、場外に出ることとします。始め!」

 開始の合図と共に、全身へとバフをかける。

――――――強化魔法Lv.5・全身強化・視覚強化
――――――常在戦場の構え

 魔力纏化は付加しない。使えば、木刀ですら凶器と化してしまうからだ。

「ふっ!」
 
 初期位置から動いていないグランさんへと大きく踏み込む。強化された身体能力にものを云わせた特攻だ。

「うおっ!?」

 速度が想定外だったのか、軽く驚いた声を上げるもその目はしっかりと俺の動きを捉えている。
 スキルで攻撃したいところだが、ロスを少しでも少なくするために素の攻撃を行う。

「おらぁっ!」
「ええ振りや!」

 右上からの袈裟切りを仕掛けるが木剣で逸らされてしまう。勢い余ってたたらを踏みそうになるが、あえてその勢いを利用してその場で空転して踵落としを見舞う......がこれも防がれる。

「ほう、こうも巧く次に繋げるか!」
「それを防いだ人が言いますか!」

 距離を取ろうと後ろに飛ぶが、ぴったりと離れず追いかけてくる。思わず顔を顰めてしまうが、それだけでは終わらない。

「次はこっちからやな」

 俺が着地する直前、つまり、身動きの取れない瞬間を狙って横薙ぎの一撃を放ってくる。

(はっや!!)

「くぅぅぅっ!!」

 咄嗟に木刀を間に挟んで防ぐが、勢いを殺しきれずそのまま飛ばされてしまう。

(なんて力だ、軽々飛ばされちまった......。とにかく体制を整えなければ......)

 場外ぎりぎりでなんとか着地してグランさんを見据える。しかし彼はすでにそこにいない。
   
「強化魔法が使えるのは君だけやないんやで」

    背筋を駆け上る悪寒を感じ、勘を頼りにその場を飛び退る。チッと髪を擦る音が聞こえたと思うと何本かの髪の毛がはらりと落ちる。

「今のを避けるとは、反射がええな。決めるつもりで放った一撃やったんやけど......」
「鍛えてありますから」

 とは言えど、今のは気配察知のおかげだろう。それがなければ今頃場外か戦闘不能になっていたはずだ。
 どうするか迷うが、出し惜しみはなしで行くしかないと思う。とりあえず身体強化に廻している魔力量を増やし、納刀した形を取る。

「お? どないしたんや。もう終わりかいな?」
「そうですね、終わりにしますよ・・・・・・・・

 俺の言葉に眉根を寄せつつも、口元は笑っている。俺が何かを仕掛けようとしていることに気づいたのか、彼もまた迎撃の姿勢を見せる。

「行きますよ......」
「!!」
 
――――――縮地

 縮地で瞬きまばたきの間に、グランさんの目前まで迫る。グランも反応こそ出来ていたが、防ぐには間に合わない。

――――――刀術Lv.5 居合・渦潮

「はぁっ!」
「がぁっ!」

 腰だめに構えた位置から素早く抜き放ち、その勢いのまま木剣を絡めとり上へと飛ばす。そしてその場で回転するようにして左袈裟に木刀を叩き付ける。
 肉体を打ち据える鈍い感覚と共に側頭部に衝撃を感じる。

「え.....?」

 気が付けば、俺の体は地面に打ち据えられていた。しかもいつの間に拾ったのか、首には木剣が添えられており自身の敗北を否応なしに分からせられた。
 
「試験終了! 勝者、グラン!」

 ミライアさんの終了の合図が静寂を破る。

「ほれ、ソウジ。立てるか?」
「......は、はい」

 目の前に差し出された手をとって立ち上がる。苦笑したグランさんの顔がやけに印象的だった。

「最後の一撃は重くていい一撃やった、正直当てられるとは思わなかったで」
「いえ、でも全然歯が立ちませんでした。最後なんて何をされたかもわかりませんでしたし......」

 そうだ。気が付けば倒されていた。俺は思いあがっていたのかもしれない......。この世界に来て、それなりに戦えて、モンスターだって倒した。知らず知らずのうちに、『俺は強い』と思っていなかったか? くそ......負けるのがこんなに悔しいなんて。

「はっはっは!!」
「った!! 痛いですよ!」

 グランさんは大きな笑い声をあげて俺の背中をバシバシと叩いてくる。割とシャレにならないくらい痛い。

「そんな顔できんのなら、お前さんは強くなるわ」
「でも......」
「あのな......これでも現役ではないけど元Cランク冒険者やで。勝てると思ったんか、新人ルーキー
「ッ!?」

 急にグランさんの雰囲気が変わり、その瞳に気圧されてしまう。先ほどの戦闘中とも違う、殺されるとすら感じる威圧感。
 身動きできずにいると、ふっと圧力が和らぐ。瞬間、ドッと汗が噴き出すのを感じる。

「まぁ......これからも・・・・・頑張れや」
「は、はい......」
「じゃあ俺は戻るわ、ミライアの嬢ちゃん」
「はい、グランさん。ありがとうございました」

 これからもって......。っ!! 

「グランさん!! ありがとうございました!!」

 扉の向こうに消えるグランさんの背中に向かって、頭を下げる。返事はないが、『頑張れ』と言われたような気がした。

「では......戻りましょうか」

 そばに来ていたミライアさんが戻るように促す。

「はい。あ、これありがとうございました」
「はい、お疲れさまでした」

 木刀を返し、アリアの待つ酒場へと戻る。

「しばらくお待ちください。後で結果をお知らせしますから”特別冒険者登録試験”の結果を」
「はい......って、え?」

 いま、なんて......? 凄いおかしな言葉を聞いた気がするんだけど......。
 頭の上に大量の疑問符を浮かべながら先を行くミライアさんの後へ続く。

 

 

  
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