氷焔の冒険者~元ヲタは異世界で侍になるそうです~

不知火 氷雨

文字の大きさ
22 / 32
第一章

19 寄り道

しおりを挟む


「じゃあ、ありがとうございました!」
「はい、これからもぜひ頑張ってくださいね」
「はい!」

 あれから、興奮した女性二人が過去の資料を漁りだし、ここ「クォーツリク」では記録がないことを確認して喜んだりと色々と語るに語れないことがあったが何とか落ち着き、今に至る。
 その時に少しギルドカードについても教えて貰った。俺からすれば使用属性を知られるというのは、不利でしかないと思っていたのだが、どうやらその心配は要らないようだ。
 このギルドカード、本人の魔力しか反応しないうえ、ギルドや街の門での身分証明も所属と名前、ランクしか確認できないらしい。よってギルドカードでの属性バレは心配しなくていいのだ。
 しかもこれは、古代遺産アーティファクトの類らしく、現代の魔法技術ではその設定をいじるどころか複製すらできないのだという。

「何か、わからないことがあればすぐに聞きに来てくださいね」
「ええ、是非来させていただきます」
「アリアも頼んだわよ」
「言われなくても分かってるよぉ」
「ならよかったわ」

 にこりと笑うミライアさんに、深く頭を下げ俺たちはギルドを後にした。

 
「じゃあ、ソウジ君。属性も分かったことだし、これからは魔法の練習もしないといけないね」
「ああ、そうだな。まずは火からやってみるか」
「そうしようか、でもまずは腹ごしらえと寝床の確保だね」
「まってました!」

 試験が終わった後からお腹がすいて仕方なかったのだ。美味しいものがたくさん食べたい。

「そうだねー......。あそこなんてどう?」

 アリアが指さした先にあったのは、路上脇にある小さな屋台だ。すぐ脇には、”クォーツリザードの丸焼き”とのぼり旗が上がっていた。

「ええ、あそこか?」
「まぁまぁ、行こう行こう」

 アリアに連れられ、屋台の中に入る。

「おう、いらっしゃい」

 中にいたのは、冒険者だと言われても信じてしまいそうな
髭を蓄えた偉丈夫だった。

「おじさん、ここは何を売ってるの?」
「おい、のぼり旗が上がってただろ!」

 アリアは遠慮することなく、ずかずかと入っていき店主に話しかける。
 屋台脇ののぼり旗を見ていなかっただろう、アリアは何を売っているのか尋ねる。

「え、ほんと?」

 恥ずかしそうに、俺の方を見るアリアにため息がこぼれる。
 というか、こいつは見てもいないのにここにしようとしていたのか......。

「ここは――――」
「――――俺はこの街の名産の一つ、クォーツリザードの丸焼きを売っている」

 俺が説明しようとすると、見かねてか店主が答えてくれた。
 
「じゃ、じゃあ、それを二つください!」
「あいよ、一つ銅貨二枚だ」

 アリアはそれを聞くとポケットから銅貨四枚を出して手渡す。

「確かに、受け取った。これが商品だ、冷めねぇうちに食えよ」
「「ありがとう(ございます)」」

 渡されたのは、鱗一枚一枚が水晶のように透き通ったトカゲの丸焼きだった。
 香ばしい香りが漂ってくる。

「じゃあ、食べようか」
「そうだね」
「「いただきます!!」」

 その声と共に、思い切ってトカゲへと齧り付く。

「んんーー!!!」
「おいしい!」

 硬そうに見えた鱗はぱりぱりとした食感をもたらし、その奥から溢れんばかりの肉汁があふれ出る。
 それでいて味はしつこくなく、鶏むね肉のようにあっさりと食べられる。
 お腹が空いていた俺たちは、無言で次へから次へと口に運び、すぐに完食してしまった。

「「ごちそうさまでした!!」」

 この食前、食後の挨拶も俺がアリアに教えて以来毎回するようになっていた。

「はー、美味しかった!」
「うん、美味かった」

 名産と言っていたな。自分で取りに行けるのだろうか。後で、アリアに色々と教えて貰おう。
 あの不思議な食感とあまりの美味しさに、俺はどうにかして大量に入手することを密かに決意した。

「じゃあ、次は寝床の確保かな」

 俺たちは、ミライアさんに教えて貰った宿屋「猫の水晶亭」に向かって歩き出した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

聖女じゃない私たち

あんど もあ
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生二人。王太子によって、片方は「聖女」として王宮に迎えられ、片方は「ただの異世界人」と地方の男爵に押し付けられた。だが、その判断に納得する二人ではなく……。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処理中です...