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第一章

18 登録&ギルドカード作成

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 ミライアさんから一通りの説明を受けた後、俺はいよいよ冒険者登録に臨んでいる。
 今、俺の目の前には先ほど見た魔道具の水晶玉とよくわからない機械のようなものがある。これも魔道具なのだろうか?

「では登録を開始したいと思います」
「あ、はい」

 どうやら始まるようだ。

「まずはこの水晶――――魔力量測定器ですね。正確ではありませんが、大まかな魔力量を色別で分けて表示します」

 魔力量......俺は自分で確認できるようになっているのだが、普通はできないんだったな。

「1~100で白、101~200で黄、200~300で緑、このように青、紫、赤、と100ずつ増えて表示されます。めったに確認されていませんが、現在上限は黒まであります」

 たしか......450くらいだったから青かな?
 少し、自分が全体で見てどれくらいなのか気になるな。

「どれくらいが多いのでしょうか?」
「そうですね、一般的には青くらいが平均でしょうか。魔力自体は持っている人は多くいますので」
「なるほど......」

 もろ平均ってところか。少し残念だな......。

「ちなみに、私の今の魔力量は橙、1200くらいかな!」
「せんっ!?」

 今まで、隣で黙っていたアリアの一言に愕然としてしまう。
 俺の約三倍もの魔力......考えるだけで恐ろしい。

「アリアは、近年稀にみるレアダブル・・・・・だし。仕方ありませんよ」
「レアダブル......?」
「そう、上位属性や特殊属性を二つ持っている魔法使いのことですね」
「見せたと思うけど、光と時空だね。それに下位属性の水と風を持ってるよ」

 あの光の矢とディメンションバッグか。しかも下位属性まで持ってるのか......。
 そりゃあ、強いよなぁ。

「まぁ属性の話はまたすると思うから、とにかく今はさっさと登録してしまおうよ」
「そうですね」

 アリアが登録を急かし、ミライアさんが同意したのでさっさと済ましてしまうことにした。


「それでは、この水晶の上に手を置いていただけますか?」
「わかりました」

 指示に従って手を乗せると、水晶から自分の中に何か送り込まれる感覚を感じる。

「っ!?」

(これは......! この回路を繋ぐ感じ魔力纏化に似てる!?)

 自分の中の魔力がしばらく水晶と身体を行き来したのち、水晶が淡い光を放ち始めた。

「来ましたね。そのまま、光が落ち着くまで動かないでください」
「はい」

 魔力の移動が止まった後、ぼんやりとした光が収束していきはっきりと色が付く。

「これは......」
「青......なのか?」

 その色は予測通り青ではあったのだが、少し様子がおかしい。
 深い青の中心に黄......いや、金色の光がうっすらと浮かんでいるのだ。
 どういうことなのかと思い、ミライアさんの方を見るが彼女も戸惑っているようだ。

「金......確か――――だったはず? いや、でも......」

 何か心あたりがあるのか、ブツブツと何かを呟くミライアさん。

「あの......?」
「あっ! すみません! 青ですので、ソウジさんの魔力量は400ほどかと。中心の金色に関しては少しわかりかねます。また調べておきますね」

 声を掛けると、彼女は慌ててまくしたてるように答える。

「そうですか、平均ということですね」
「ええ、しかし中心の金色のこともありますし、未知数ですが」

 ふむ、まぁ俺のステータスを見ても450だから間違っていないんだけどな。

「まぁ、これはあくまでもおまけです。登録としてはここからがメインですので」

 そういうとミライアさんは、隣にあった機械を手元に引き寄せ、その中から真っ黒な金属製のカードを取り出した。

「それは?」
「これは"ギルドカード"です」
「ギルドカード......」
「正確にはギルドカードの素体ですね」
「なるほど、触っても?」
「ええ、いいですよ」

 そっとカードを手にとって確認してみてみる。見た目通り、ツルリとした触感で金属であることをわからせる。全体を見ても、何の変哲もないただの金属製の黒いカードだ。
 ひとしきり確認したのち、ミライアさんに返却する。

「はい、では次にこれを用いて血を採取していただきます」

 そういって小さな針と小皿を渡してくる。針は縫い針ほどの太さの普通の針で、小皿も小さく直径二センチ程しかない。

「それを用いて、血を採取して小皿に入れてください。ほんの少量でいいですので」

 指示に従い、ぷつりと指を刺す。表面に血が滲み、数滴ほどの血が小皿に落ちる。
 それをミライアさんに手渡すと、彼女は先ほどの機械の中に小皿ごと俺の血を入れた。
 そして側面にあるスイッチのようなものを押すと、血に魔力が充填されていくのがわかる。

「できました。ではソウジさん、この血をカードに垂らして頂けますか?」
「血を、ですか?」
「ええ、そうです」

 先ほどの金属製のカードを受け取り、血をポタリと垂らす。

ゴォァウッッ!!
ピキィィンッッ!!

「うわぉっっ!!?」

 カードの表面に血が触れた瞬間、カードの左上から灼炎が吹き出し、右下は堅氷に覆われた。
 自らの血が引き起こした非現実すぎる光景に、俺は唖然として固まってしまう。

「これは......二属性かしら?」
「いや! 違うよ、炎と氷の間を見て!」
「え?」

 アリアの大きな声にハッとし、机の上のカードを見る。
 轟々と燃え盛る炎と凍てつく氷の間に、空間を歪めたような半透明の球体が浮かんでいた。
 しかも、その中を赤、黄、青、緑の光が廻っていた。
 
「まさか......」

 何かに気づいたミライアさんの顔が驚愕に染まったとき、カードが一際強い光を放った。

「「「うぉっ!(きゃぁっ!!)」」」

 余りの眩しさに咄嗟に目をつむってしまうが、光自体はすぐ収まったようだ。
 恐る恐る瞼を開くと、そこには一枚の銀色のカードがあった。

「おぉ」

 顔が映るほど美しい銀色だ。先ほどまでの黒いカードとは思えない。
 
「で、出来上がりましたね」
「これで完成ですか......。いつもあんな風に?」
「いえ、確かに持つ属性が現れますがあそこまで大きくなることはありません。せいぜい薄く火が広がるくらいでしょうか」

 つまり、俺だけこんな風になったというわけか。これは異世界から来たということがなにか関係しているのだろうか?

「考えられる可能性としては適性がものすごく高いか、魔力の質がよっぽど良いかのどちらかでしょう」
「適正が高い......」
「ええ、それこそ精霊に愛されているくらいに」

 精霊......か。どのような姿形をしているのだろうか。やはり動物のような姿なのか。

「では、ギルドカードの確認をしましょうか。魔力を通してみてください」
「え? あ、はい」

 言われるがままに、ギルドカードに魔力を通してみる。

「おお......」

 表面にジワリと文字が浮き出てくる。


 名前:ソウジ
 ランク:E
 称号:なし
 所属:クォーツリク/水晶の探求団
 属性:炎 氷 時空 火 水 地 風

 
レアトリプル・・・・・・......! それに下位全属性!」
「......見込みはあると思ってたけど、ここまでとは驚きだよ」

 アリアとミライアさんが感嘆の声を漏らす。
 どうやら、俺はかなり稀な人間らしい。

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