氷焔の冒険者~元ヲタは異世界で侍になるそうです~

不知火 氷雨

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第一章

25 初依頼 

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「くそっ! なんだってこんなことに.....」

 青く澄んだ空を仰ぎ見て、ため息を吐く。
 放り投げてしまいたい気持ちを抑え、ひたすら目の前に生えた草をむしっていく。

「アリアめ......覚えてろよぉぉっ!」

 俺の渾身の叫ぶ声も周囲の自然に吸い込まれていくだけだった。


 ◇


 遡ること、数時間前――――――
 
 俺とアリアは防具に身を包み、ギルドを訪れていた。
 初依頼を受けるためだ。

「俺が受けられるものはランクEまでの依頼だよな?」
「うん、そうだね。一応、それ以上も私がいるから受けられることは受けられるんだけど.....」
「最初は簡単な依頼の方がいいか」
「そういうことだね。もっともソウジ君なら大丈夫だとは思うけど」

 隣のアリアに確認を取り、受注すべき依頼を探し始める。
 受注書が多く貼られたボードの上に視線を巡らせていくと、二枚の依頼に目が留まった。

「なぁ、一度に二つの依頼って受けれるのか?」
「んー、大丈夫だよ。失敗した場合は違約金を払わないといけないから、あんまりおすすめはできないけど」
「ふむ、でもまぁ大丈夫だと思うぞ?」
 
 そういって俺が手に取った受注書には「薬草の採取」「ダッシュボアの討伐」の文字があった。
 この二つならば同時にこなせるのではないか? そう愚考した次第だ。
 
「たしか......」


『ソウジさん、依頼の受注時のは私たち受付嬢のいるカウンターにお越しください』


「これを受付に持ってきゃいいんだよな?」

 以前ミライアさんから聞いた話を思い出しつつ、尋ねる。
 視線を向けられたアリアは首肯し、先に歩き出す。

「そうだよ、行こうか」
「おう」

 受付に向かうと、ミライアさんと......もう一人獣人の受付嬢が談笑していた。
 そのまま、近づいていくとミライアさんがこちらに気づいたようで手を振ってくれる。

「どうも」
「はい、先日ぶりですね。アリアも」
「......そうだね」

 にこりと笑って、挨拶を返してくれる。
 アリアは一昨日のことがまだ残っているようでぎこちなかったが。

「ねぇ、ミラ。この子が例の子かな?」
「そうよ、トリスも挨拶しなさいな」
「はいはーい、えっとソウジ君?だっけ?。あたしはトリス、ミラ......じゃなくて、ミライアと同期の受付嬢だよ。よろしくね」

 隣にいた獣人の女性も挨拶をしてきた。どうやら彼女はトリスというらしい。
 茶髪を短く切りそろえ、その頭頂部からは猫耳が生えている。目は本当の猫のように、瞳孔が縦長になっており好戦的な印象を受ける。
 ボーイッシュというか活発そうな人だ。

「で、今日の要件は依頼かな?」

 俺の手元に目線をやりながら訪ねてくる。

「そうですね。一応、初依頼って形になりますかね」

 受注書をミライアさんに手渡しつつ、返事を返す。
 彼女は内容を確認すると、なにやら書き込んだのち、顔を上げた。

「では、依頼内容の確認をさせていただきます。『薬草の採取:ポーションに使う薬草の採取、状態の良さに応じて単価の変更あり』、こちらは特に問題ありませんね。どのような薬草なのかご存知でしょうか?」
「大丈夫です、おそらくアリアが知っているでしょうから」

 それに、俺には鑑定があるしな。
 これがあれば、優位に進められるだろう。

「二つめ、『ダッシュボアの討伐:最近、街近くの森から出てくる魔物の量が増えているため、数を減らす目的』こちらも問題は感じられません。妥当だと思います。ですが、油断はしないようにお願いします。慢心すれば足元を救われますからね」
「肝に銘じておきます」

 俺の了承を聞くと、彼女は受注書に印を押していく。
 
「ギルドカードの提示もお願いいたします」
「あ、はい」

 二人分のギルドカードを何やら機械に通し、返してくれる。
 
 名前:ソウジ
 ランク:E
 称号:なし
 所属:クォーツリク/水晶の探求団
 属性:炎 氷 時空 火 水 地 風

 ※依頼受注中:『薬草の採取』『ダッシュボアの討伐』

 どうやら、受注中の依頼を表記してくれるようだ。
 ......いったいどういう仕組みなんだろな。

「はい、これで受注完了ですね。では、初めての依頼頑張ってください」
「頑張ってくるんだよー!」

 こうして俺たちは初依頼へと出発したのだった。


 ◇


 そして話は冒頭へと戻る。

「なんで俺だけ......」

 あの後、門で騎士団長のアインさんと挨拶を交わし、街の外へ出て森に向かった。
 最初は二人で薬草を採取していたのだが、ノルマの量が二百とかなり多かった。森を歩き回りながら薬草を入手するだけに飽きたのか、アリアが突然少し、周りを見てくるといって居なくなってしまったのだ。

「絶対飽きたからさぼっているだろ、あいつ」

 鑑定を常時、展開した状態で周囲の草むらに視線を向けて薬草を探し出していく。
 意外と似た草があって、鑑定がなければもっと時間がかかっただろうことは想像に容易い。
 ちなみに鑑定結果はこんなものだ。


 名称:薬草
 品質:普通
 用途:回復ポーションに利用されている。見た目は雑草となんら変わりないため、意外と見つけるのが難しく
 採取依頼は忌避されやすい。品質の程度によって、作成されるポーションの効能も変わってくる。


 品質はどれも普通で、たまにやや悪いが存在する。
 もう50は優に超えているだろうか。大きくため息をついて、また採取していく。

──────スキル「採取」を会得ラーニングしました。
──────パッシブスキル「目利き」を会得ラーニングしました。

「は......?」

 久々に聞いた音声に、急いでステータスを開く。あ、最近分かったのだがステータスも念じるようにして出せるようだ。


名前:ソウジ・アカツキ
年齢:17歳
種族:ヒューマン
称号:異世界からの来訪者
職業:刀術家
属性:炎、氷、時空、火、水、地、風
筋力:360(+40)〔58△〕
敏捷:370(+40)〔58△〕
知力:220〔20△〕
魔力:450
器用:160〔18△〕
運:60
スキル:鑑定Lv.5(Up!) 刀術Lv.5 脱兎  縮地  魔力操作Lv.5 強化魔法Lv.4 魔力纏化Lv.3 常在戦場の構え 採取Lv.1(New!)
パッシブスキル:気配察知Lv.3 目利きLv.1(New!)
エクストラスキル:創造神の加護



「増えてる……」

 スキルの欄に「採取」、パッシブスキルの欄に、新たに「目利き」が追加されていた。それに、前まではなかった属性の欄が増えているようだ。
 「採取」と「目利き」の欄の詳細を開く。


採取 LV1

ありとあらゆるものに対する「採取」に効果を及ぼす。どのように採取すればいいのか、どう扱えばいいのかが直感的に理解できる。また、採取したものの状態が若干良くなる。レベルが上がれば上がるほど判別できる種類や、効果も大きくなる。


目利き LV1

物の状態の見極めができるようになる。直感的に良い状態のものかわかる。


「へぇ……。採取はいいな、今の状態にはもってこいだ。……目利きは、鑑定があるからいらないな。まぁあって損はしないだろうが」

 早速、目の前の草むらに目を向ける。

「おお……」

 二つ並んでいた薬草を見て、感嘆の声が漏れる。なんといえばいいかわからないが……右が良いと感じたのだ。異常な確信とともに。
 一応、鑑定をしてみると左が“普通”なのに対し、“やや良い”となっていた。思った以上に効果が良く驚いてしまう。
 それだけではない。手を伸ばすと、どのように取ればいいのか、手に取るようにわかるのだ。

「これは……根を傷付けないように、周りの土をほぐしてっと」

 武器屋で購入したナイフで、周りをほぐしてから根本を持ち、引き抜く。
 今までの苦労がなんだったのかと思うほどあっさり抜けてしまう。

「おお……鑑定しておくか」

────鑑定Lv.5

名称:薬草
品質:良い
用途:以下省略

 どうやら品質も「やや良い」から「良い」に上がっているようだ。これは良い。重宝することになりそうだ。
 そこから、俺は作業速度をあげていくのだった。



「ん?」

 そろそろ作業も終盤を迎え、200本に到達いようかという時。
 少し離れた森の方から、地響きのような音が聞こえてきた。

「なんだ……?」

 訝しく思い、作業の手を止めて刀の柄に手をかける。
 じっと森の奥を見つめて待つこと、数分……見覚えのある影とその背後に砂埃が見えてくる。

「ソ、ソウジ君! 助けてーー!」

 その影とは言うまでもなくアリアであり、彼女は涙を眦に浮かべながらこちらへと駆け込んでくる。

「……どうしたんだ?」
「ア、アレ見て!」

 慌てた様子で彼女が指差す方を見ると、そこには……。

「……はい?」

 視界を埋め尽くさんばかりのダッシュボアの群れが此方へと迫ってきていた。
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