氷焔の冒険者~元ヲタは異世界で侍になるそうです~

不知火 氷雨

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第一章

26 時空魔法

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 ......どうしてこうなった。

「ソ、ソウジ君! 助けてー!」

 目の前には、慌てた様子のアリアと視界を埋め尽くさんばかりのダッシュボアの群れがある。
 もう一度言おう、どうしてこうなった。

「何があったんだ......?」

 刀を抜き放ち、息を整えるアリアに尋ねる。
 
「それが、わからないの」
「わからない?」
「そう。普通に考えればこの数のボアたちが一か所に固まることはないの。食料がなくなってしまうし、同族同士での争いも起きやすくなるから。......群れを見つけて、逃げようとしたけど気が立っていたのかすぐに気づかれてこの状況」
「......」

 言われてみれば、たしかにそうだ。てっきりアリアが何かやらかしたのかと思ったが。

「でも、実際には......」
「うん、なにかこの辺で異変があったんじゃないかと思う」

 その”何か”が問題か。

「早急にギルドに報告しなきゃな」
「そうだね、何か知っているかもしれないし」
「でも、まずは......」

「「この場を切り抜けないと!」」

――――――常在戦場の構え
――――――強化魔法Lv.4 全身強化・視覚強化
――――――魔力纏化Lv.3 刀身強化

 できる限りの強化を身体に施し、ボアの群れへと突っ込んでいく。
 背後では、アリアが黄金に輝く弓を”取り出し”、魔力を込めて矢を生み出している。
 それを視界の端に収めながら手近の一匹に切りかかる。

「はぁぁぁぁっ!!」

――――――刀術Lv.5 一刀両断・真月

 こちらに向かって突っ込んでくる猪を寸前で躱し、すれ違いざまにその腹を縦にぶった切る。
 そしてすぐに身を翻し、目についた個体の瞳に刀を突き入れ引き抜く。
 完全に絶命はできていないが、すぐにその場を離脱。

――――――刀術Lv.5 枝垂柳・抜

 大きくその場を飛び上がり、空中で身を捻ってくるりと回る。そうして増した勢いそのままに、落下。落ちた先にいたボアの首を断ち切る。
 納刀状態から行う枝垂柳の抜刀Verだ。スキルとしては最近、形にした。居合よりも威力は落ちるが、次の技につなげやすい利点がある。
 
「ブモァッ!!」

 直後、背後から迫るボアの気配を感じるが、動く必要はない。目の前の敵にだけ、攻撃を仕掛ける。

「プギッ!?」

 光の線が幾本も空を奔る。
 それは何匹かの額に突き刺さり、容赦なく絶命させていく。
 言わずもがな、アリアの援護射撃だ。相変わらずの精度と威力だ。
 俺は落ちた先から、走りながら周囲のボアに傷を負わせヘイトを集める。これでいい。俺の役目は撹乱なのだから。

──────刀術Lv.5 百花繚乱

 ボア達がこちらを取り囲むように陣取った時、俺は広範囲にダメージを与えることができる技を繰り出した。
 縦、横、斜め、突き、刀を振り回し、次々と殺到するボアを斬っていく。血飛沫が舞い、まるで紅い花が咲き乱れたように見えるだろう。

「っ!」

 大分、数を減らしてきた時、背後で大きく魔力が膨れ上がる。
 それに気づいた俺は大きく刀を一振りし、相手を怯ませる。そして、その隙に納刀。飛び上がって包囲を抜け出す。

──────脱兎

 スキルを用いて、即座に群れから距離をとる。
 すぐにボアたちが追いかけてこようとするのだが、それが叶うことはなかった。

「はっ! 『天の慈雨』!」

 短い掛け声と共にアリアが特大の光の矢を打ち上げる。それはグングン高度を上げていき、群れの真上に到達すると落下を開始した。しかも、夥しい数の細かい矢に分裂しながらである。
 高高度から落下することでそれらは、より凶悪な威力を帯び、残っていたボアたちに降りそそぐ。
 彼等は断末魔の声すら上げられずに絶命していくのだった。

「うわぁ……えげつな……」

 見るも無惨なその惨状に引いてしまう。
 それを引き起こした当の本人はケロリとして我関せずという表情だが。

「ふぅ……疲れたね」
「お、おう」

 俺のところまで来て、アリアは大きく伸びをする。
 無自覚なのか、なんなのか……。
 
「それにしても、時間が掛かりすぎじゃないか?」
 
 魔力充填の間を待っていたのだが、いつもより若干長く感じたのだ。

「あの技は魔力の集束が難しいの。私だって前衛が居ないとなんにも出来ないから、前衛が潰れないように支援もしていたんだよ」
「ぐっ……あれはすぐにカバーしてくれるってわかってたからでな……」

 突っ込んだつもりが突っ込み返される。
 ここは早急に話題の転換が必要と判断した。

「ま、それは置いといて。これ、どうしようか?」
「あー……」

 俺達の視線の先には、死屍累々のダッシュボアの遺骸がある。数が数だけに処理に悩むところだ。

「とりあえず討伐証明部位の右牙だけ回収しようか」
「あー、そうだな、そうするか」
 
 俺たちは作業に取り掛かり、どんどん牙を折り、アリアのディメンションバッグへと収納していく。
 そうして、半分に到達したかというとき、アリアがふとある提案をしてきた。

「ソウジ君、この際だから時空魔法習得しておく?」
「おう……ってそんなに簡単に出来んのか!?」
「んー、普通は無理だけど、時空属性持ちの私とスペックのおかしいソウジくんなら大丈夫」
「なんていう言われよう……」

 徐ろに、俺の手を取ると薄らと魔力を流してくるアリア。

「これは?」
「今から時空属性を帯びた魔力を流すから、それに魔力の質を同調させていって欲しいの」
「なるほど」

 そういうが早いか、すぐさま魔力の質が変質する。
 なんというか先の見えそうで見えない、そういった感じの魔力だ。

「こうか……?」

 アリアから流れる魔力の質を感じながら、魔力の質を変えていく。思った以上の魔力を消費していくようだ。

「そうそう、あと少しだね。だいぶ質は近づいたよ」
「くっ……」

 思い切って流す魔力を増やし、その大半を霧散させながら変化させていく。少し力押しかもしれないが。

「お……」

 ほぼ同じ魔力の質になったので、そこから一気に質を固定化していく。

──────スキル「時空魔法」を会得ラーニングしました。

「行けたみたいだね、固定化されてるのが分かるよ」

 お馴染みとなった効果音と共に、スキル習得のアナウンスが流れる。

「えっと、こうかな?」

 宙に手を差し込むようなイメージで、その魔力を使って形作る・・・

──────時空魔法Lv.1 ディメンションバッグ

 その瞬間、ズルリとした感覚ともに手が虚空へと消える。これが、異空間……。

「なんか変な感覚だな」
「じきに慣れるよ、それより作業を再開しようか」
「おう」

 俺が時空魔法を手に入れたことで、効率は上がり急ピッチで作業が進む。
 それでも全ての作業を終え、帰路に着いたのは日も暮れかかった時分だった。
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