32 / 32
第一章
29 特訓
しおりを挟む調査に赴くナザースたちを見送った後、俺たちは何かあった時に備え行動することにした。
「とりあえず......」
「依頼はやめとこうか......」
「そうだな」
とはいえ何ができるというわけでもないのだが。
依頼を受けるという感じでもない為、どうしようかと首をひねるアリア。
「んー......」
その様子におれは兼ねてより、頼みたかったことを頼むことにした。
この状況においてもプラスになるであろうことをだ。
「なぁ、アリア......」
「ん?」
「実は――――」
ある意味、無茶なお願いとも言えるのだが......。
アリアは少し考えた後、疑問に思う素振りも見せず頷くのだった。
自分で言うのもなんだがそんなにあっさり決めてもいいのだろうか。
「いいのか?」
「うん。やったほうがいいと思っていたことだし、ちょうどいいかなって」
改めて確認するが問題はないようだ。
こうなれば俺も気にせず、励むべきだろう。
「よし、じゃあ早速取り掛かろうか」
こうして俺たちはこの状況に持せず、変化を求めて動き始めるのだった。
◇
数時間後......俺たちの姿は街の郊外にあった。
なぜかというと、俺の“お願い”は街中では行うわけにはいかないからだ。
危ないし、どうなるか未知数......というわけで、連絡を取れるように街から離れ過ぎず、周囲に何もない所へ来たのだ。
「じゃあまず、すべての属性には各々を司る精霊がいるという話は以前したよね?」
「ああ。確か......火がサラマンダー、水がウンディーネ、風がシルフで、土がノーム。それで、上位属性になると、炎のイフリート、氷のアイシクル、嵐のテンペスト、最後に岩の......ガイアルムだったか?」
この時点でもうわかるだろう。
そう、俺は“魔法”について教えて貰おうとしているのだ。
......まぁ、すでに時空魔法を取得していることを思えば今更という話かもしれないが。
とにかく、今は自らの戦闘能力を引き上げておいて損はない。いつかは頼まなければいけないことだったしな。
「そうだね。後は、特殊属性の光がソレイユ、闇がシャドウ、そして私とソウジ君の共通属性である時空がクロノスだね」
「そうそう、それだ」
「そして魔法というのは、魔力を用いて精霊と共に森羅万象を引き起こすものなの」
「精霊と共に......?」
感情が目に見えるのならば、今俺の頭の上には大量の疑問符が浮かんでいることだろう。
俺は今まで強化魔法ぐらいとはいえ、魔法と銘するものを使ったことがある。
しかし、その中で精霊というものの存在を感じることはなかったのだ。
「もちろん、例外もあるよ。いわゆる“無属性魔法”というやつだね。属性を持たない純真な魔力を用いて、自らの身体や武器を強化するものがほとんどだけど......中には独自の発展を見せる人もいるらしいよ」
「ああ......道理で」
自分がそれを感じることがなかったことに対して腑に落ちる。
だが、同時に何か引っ掛かりを覚える。
まるでボタンを掛け違えているようなそんな感覚だ。
「あ」
「どうしたの?」
ふと、その違和感の正体に辿り着く。
「いや......時空魔法を使った時も特に精霊とかは感じなかったけど」
「本当に?」
「え?」
「本当に感じなかった?」
悪戯っ娘のような表情で問うアリア。
(こういうところだけ、年相応なんだよなぁ)
思わず見蕩れてしまいそうになるものの、鋼の自制心で抑え込む。
そのせいで少し憮然とした表情になってしまったかもしれない。
「ああ」
「ん......そっか。なら先に教えた方が良いかな。さっき、精霊と共にって言ったけど、まず私たちが属性魔法を使う時、魔力を変質させる必要があるの」
そう言えば、初めて時空魔法を使った時もそうだった。あの時はアリアに魔力の質を伝えてもらったからスムーズに出来たけど、一からとなると......ダメだ、できる気がしない。
「そしてこの“変質”が精霊と関わってくるんだけど、各属性の精霊は自分たちに近い魔力の質を好む習性があるの。それも人間の魔力が特に彼らにとっては良いみたい。つまり......」
ああ......なるほど。ここまでくれば俺にもわかる。
「つまり、その魔力を対価に魔法を行使してくれるというわけか」
アリアの言葉をついで、俺が答えると彼女は大きくうなずいた。
「その通り。ここでさっきの話に戻るんだけど、ソウジ君は強化魔法を使用したとき体内で魔力を循環させているよね」
「ああ、そうすることで強化してるわけだからな」
「その時、魔力は少しづつだけど消費する感覚はあるでしょ?」
「そりゃあ......」
そうだろう、と答えようとして口ごもる。
思い返せば時空魔法を使ったとき、“消費する”というよりは“引き出される”という感じだったのを思い出したからだ。
「まさか」
「その、まさかだよ。気づいたみたいだね。その時に彼らは魔力を受け取っているの」
その言葉に納得するが、正直落胆したような気持ちだ。
もっと精霊といえば、こう......なんていうのか。
「自我とか持っていて、感覚共有したりそんなものだと思ったんだが......」
「うん、それは間違っていないよ」
「お、おう」
自分が口に出しているとは思わなかった為、予想外に返答をもらって驚いてしまう。
「いわゆる大精霊と呼ばれる存在だね。上位・特殊属性にのみ存在するんだけど、それらのなかでも特に力の大きな者が自我を持つの」
「まぁ、下位属性はそのまま下位だもんな」
「それでね、大精霊は小精霊と違って一人からしか魔力を受け取らないの。一般に契約と呼ばれてるけど」
それはまた......ラノベを彷彿とさせる話だな。
以前も思ったが、ラノベ作家にはこういう世界へ来たことある人がいたんじゃなかろうか。
「それはなんでなんだ?」
「それが理由は分かってないの。色々と学者たちが説を出したりしてるんだけど、どれも的を得たものはないみたい」
「そんなものなのか」
意外と魔力の質が好みだからとか、有象無象の魔力の質だと魔法が行使できないとかありきたりな理由だと思うのだがな。大精霊というからには横柄な性格だったりして......!?
俺なりに考察をしていたら、いきなり威圧感というか寒気を感じる。
「なんだ?」
「ん?」
「いや、なんか強烈な寒気を感じた気がするんだが」
「んー......気のせいじゃない?」
唐突に寒気を感じたことをアリアに話すも、彼女は感じなかったようだ。
気のせい、なのか? いや、悪意とかある感じではなかったが、今のは無視しちゃいけない類の寒気だったと思う。
「講義はこれぐらいでいいかな。そろそろ実践に移ろうか」
「おう......」
しきりに辺りを見回す俺を呆れた目で見ていたアリアだが、放っておくことにしたようで実践に入ろうと促してくる。
俺は未だにあの寒気が気になって仕方ないのだが、とりあえず返事を返す。
「そうだね、まずは――――」
どんどんと進めようとするアリアに、少し師匠時代を思い出して笑ってしまう。
「あ、今笑ったね、なんで?」
「いや、何でもない。さぁ始めようか」
気が付けば寒気のことは気にならなくなっていた。俺が笑ったことを追及しようとするアリアを宥め、始めようと促す。
こうして俺の魔法特訓は始まったのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-
いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、
見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。
そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。
泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。
やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。
臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。
ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。
彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。
けれど正人は誓う。
――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。
――ここは、家族の居場所だ。
癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、
命を守り、日々を紡ぎ、
“人と魔物が共に生きる未来”を探していく。
◇
🐉 癒やしと涙と、もふもふと。
――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。
――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
聖女じゃない私たち
あんど もあ
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生二人。王太子によって、片方は「聖女」として王宮に迎えられ、片方は「ただの異世界人」と地方の男爵に押し付けられた。だが、その判断に納得する二人ではなく……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる