3 / 6
転生生活初のクエスト
転生者、冒険者になる
しおりを挟む
教えてくれた人の言う通りに進んでいくと、石造りの建物がある場所にたどり着いた。教会のような外観だけど、賑わう声が漏れている。かなりの人が中にいるらしい。だが、中の様子を見ようにも、窓が無く、そんな所に入るのが怖かった。でも、今の自分にはここ以外の選択肢は無い、っと思い切って扉を開いた。
中は吹き抜けで天井は高く、かなり広い。あたりをキョロキョロ見回すと、受付らしき所が目に入った。
受付前には誰も並んでおらず、前の人の様子を伺おうと思っていたあてが外れてしまった。
ジッと、中途半端なところに立ち止まる自分が目に付いたのか、
「どうされましたか? 何かお困りみたいですけど、なんでもお聞きしますよー 」
と声をかけてもらった。こちらを真っ直ぐ見つめるその目に、ぐらぐら揺らぐ決意が固まる。
あの! この町に来たばかりで、何も分からないんです。住む場所もお金もないし・・・
「あぁ、そんなに心配されなくても大丈夫ですよ。そういう方はたくさんいらっしゃいますので。」
不安が顔に出ていたのだろうか、こちらを落ち着かせるようにゆっくりと話してくれる。
「それでは、職業もまだ決まっていないですよね? まずはそれから決めていきましょう。」
ふぇっ?
っと、思わず拍子抜けしてしまった。もっと、身分証とかが必要なのだと思っていた。 が、どうやらそういうものはいらないみたいだった。
最悪、捕まるんじゃないかと考えていたが、ほっと胸を撫で下ろす。
「ん~、まずはじめに、簡単な説明をしましょうか。この町では、名前と職業を登録してその仕事をします。仕事はここで仲介したものか、指名されたものを行います。最初は仲介したものですね。そうやって経験や名前を覚えてもらって、指名が入るようになる、という感じです」
なんとなくのイメージは掴めました。ちなみに職業って最初はどういうものが選べるんですか?
「そうですね、政府やこの集会所でなければ、基本的にはなんでもありです。料理人や詩人に作家もありますし。後は職業の中で幅が広い冒険者ですね。幅が広い分、仕事の数も多くあって、特に若い人が憧れてもあって選ぶ人が多いです。ただ・・・」
スッ、っと先程まであっていた視線が下にそれる。
冒険者には何かあるんですか?
「・・・危険が多いんです。仕事のほとんどが討伐や、未知の領域の探索なので。依頼を受けて戻らない若い人もいます。あ、でも最初は経験を積んだ冒険者と同行するものを仲介しますので、安心して下さい。合わないと思われましたら、転職も可能ですので」
どうも、この方は何かを隠しているような感じがした。冒険者の説明はやけに詳しくするからオススメなのかな、と思ったら選ぶのを止めるような事も言うし。
あれこれ考えるぐらいなら、ハッキリ聞いておこう!
自分は冒険者になった方がいいのか、どうなんですか?
「…なって頂けるのが私どもにとってありがたいです。冒険者の方は必要不可欠な存在ですが、人手不足ですので。ただ、一個人としては、なって欲しくないです。私は、あなたの顔が見れなくなるかも、なんて毎回思いながら仕事を仲介したくないのでっ!」
なるほど、そういう事情があったのか・・・でも!
私は、冒険者になります。憧れ、というよりも、小さい頃からなりたかった夢なので。そして約束します。無茶はせずに頑張って、あなたが安心して仕事を仲介できる冒険者になります。
「そうですか…分かりました!それなら私はあなたを、全力でサポートさせて頂きますっ!」
今は何の根拠もないけど、とにかくやってやろう!
最初の不安は何処へやら、今はもう立派な冒険者になる事で頭がいっぱいだ。
「それでは冒険者になる手続きを進めますね。ではここに、名前をお書き下さい。」
・・・おっと名前かぁ…あ、でも特に証明する必要もないし!
【サンクス】
「サンクスさんですね。はいっ、それでは次に写真を撮ります。それと一緒に、簡単な装備も選んでもらいますね。最後に簡単な診断で終わりです。ではこちらにどうぞー」
受付のおねえさんの後を追っていく。先に装備に着替えるようだ。
ってあれ?ちょ、ちょっと待ってくれません?
「どうされたんですか?こちらが更衣室【女】ですよ?」
グイッと手を引かれる。背が高いからか、異性に触れられているからか、その力に対抗できず、ズォッ、っと未知の領域の奥へと引き込まれる。
いや、待って!冒険者最初の未知の領域で、すぐに犯罪者になんてなりたくないー!
すぐ近くで、ガチャガチャと着替える音がした。中にはシュルシュルと得体の知れない音も。
ギャーーーーー!
なんて心の中で叫んだのも束の間、中にあった鏡を見て、自分の時が止まった。
・・・誰これ?
そこには、小さな女の子の姿が映し出されていた。
中は吹き抜けで天井は高く、かなり広い。あたりをキョロキョロ見回すと、受付らしき所が目に入った。
受付前には誰も並んでおらず、前の人の様子を伺おうと思っていたあてが外れてしまった。
ジッと、中途半端なところに立ち止まる自分が目に付いたのか、
「どうされましたか? 何かお困りみたいですけど、なんでもお聞きしますよー 」
と声をかけてもらった。こちらを真っ直ぐ見つめるその目に、ぐらぐら揺らぐ決意が固まる。
あの! この町に来たばかりで、何も分からないんです。住む場所もお金もないし・・・
「あぁ、そんなに心配されなくても大丈夫ですよ。そういう方はたくさんいらっしゃいますので。」
不安が顔に出ていたのだろうか、こちらを落ち着かせるようにゆっくりと話してくれる。
「それでは、職業もまだ決まっていないですよね? まずはそれから決めていきましょう。」
ふぇっ?
っと、思わず拍子抜けしてしまった。もっと、身分証とかが必要なのだと思っていた。 が、どうやらそういうものはいらないみたいだった。
最悪、捕まるんじゃないかと考えていたが、ほっと胸を撫で下ろす。
「ん~、まずはじめに、簡単な説明をしましょうか。この町では、名前と職業を登録してその仕事をします。仕事はここで仲介したものか、指名されたものを行います。最初は仲介したものですね。そうやって経験や名前を覚えてもらって、指名が入るようになる、という感じです」
なんとなくのイメージは掴めました。ちなみに職業って最初はどういうものが選べるんですか?
「そうですね、政府やこの集会所でなければ、基本的にはなんでもありです。料理人や詩人に作家もありますし。後は職業の中で幅が広い冒険者ですね。幅が広い分、仕事の数も多くあって、特に若い人が憧れてもあって選ぶ人が多いです。ただ・・・」
スッ、っと先程まであっていた視線が下にそれる。
冒険者には何かあるんですか?
「・・・危険が多いんです。仕事のほとんどが討伐や、未知の領域の探索なので。依頼を受けて戻らない若い人もいます。あ、でも最初は経験を積んだ冒険者と同行するものを仲介しますので、安心して下さい。合わないと思われましたら、転職も可能ですので」
どうも、この方は何かを隠しているような感じがした。冒険者の説明はやけに詳しくするからオススメなのかな、と思ったら選ぶのを止めるような事も言うし。
あれこれ考えるぐらいなら、ハッキリ聞いておこう!
自分は冒険者になった方がいいのか、どうなんですか?
「…なって頂けるのが私どもにとってありがたいです。冒険者の方は必要不可欠な存在ですが、人手不足ですので。ただ、一個人としては、なって欲しくないです。私は、あなたの顔が見れなくなるかも、なんて毎回思いながら仕事を仲介したくないのでっ!」
なるほど、そういう事情があったのか・・・でも!
私は、冒険者になります。憧れ、というよりも、小さい頃からなりたかった夢なので。そして約束します。無茶はせずに頑張って、あなたが安心して仕事を仲介できる冒険者になります。
「そうですか…分かりました!それなら私はあなたを、全力でサポートさせて頂きますっ!」
今は何の根拠もないけど、とにかくやってやろう!
最初の不安は何処へやら、今はもう立派な冒険者になる事で頭がいっぱいだ。
「それでは冒険者になる手続きを進めますね。ではここに、名前をお書き下さい。」
・・・おっと名前かぁ…あ、でも特に証明する必要もないし!
【サンクス】
「サンクスさんですね。はいっ、それでは次に写真を撮ります。それと一緒に、簡単な装備も選んでもらいますね。最後に簡単な診断で終わりです。ではこちらにどうぞー」
受付のおねえさんの後を追っていく。先に装備に着替えるようだ。
ってあれ?ちょ、ちょっと待ってくれません?
「どうされたんですか?こちらが更衣室【女】ですよ?」
グイッと手を引かれる。背が高いからか、異性に触れられているからか、その力に対抗できず、ズォッ、っと未知の領域の奥へと引き込まれる。
いや、待って!冒険者最初の未知の領域で、すぐに犯罪者になんてなりたくないー!
すぐ近くで、ガチャガチャと着替える音がした。中にはシュルシュルと得体の知れない音も。
ギャーーーーー!
なんて心の中で叫んだのも束の間、中にあった鏡を見て、自分の時が止まった。
・・・誰これ?
そこには、小さな女の子の姿が映し出されていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる