わがまま野郎は、腹が立つけど腕が立つ

しんしょう

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はじまり

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 ザッ、ザッ、と歩く。行くあてはない。右へ行こうが左へ行こうが、はたまた立ち止まるのも、決めるのは全て自分。だから歩く。
 ずっと前から一人だった。一人で過ごしてきた。いや、一人にならざるを得なかったと言う方が正しいか。別に親がいない訳でも、兄弟がいない訳でもなかった。ただ、常にその中にあっても孤独感が無くならなかった。
 そんな環境に耐えきれなくなり、家を出た。もう、随分昔の事だ。
 何も持つものの無かった俺に待ち受けていたのは、衣食住のどれもが保証されていない、厳しい世界だった。けれども、孤独感は少し和らいでいた。
 唯一使えるものは、自分だけだった。そんな自分を使い、その日暮らしを続けた。そうやって自分を使い続けるだけで、色々と得られるものがあった。
 名前も知らない、もちろん信頼もクソもない自分に与えられる仕事は、害獣駆除ばかりだった。ときにその害獣は人の姿をしていた事もあった。そういった仕事をこなす事に抵抗はなかった。なにせ相手も同じ仕事をしているのだから、遠慮も何も無いのが当然だろう?
 そんな日々から得られたのは、いくらばかりかの金と力だった。手にした金で武器を調達し、使い慣れた自分をふるって仕事をする。そんな繰り返しだった。
 つまらない生活だったが、不思議と辞めようと思わなかった。心を無にして、何も考えなくていいこの仕事は、どうやら自分に向いていたらしい。
 自分に合った仕事を続けていると、意識せずとも金や名誉が舞い込んでくる。もうその日の暮らしを心配するような事は無くなっていた。さらに、依頼を受けて仕事をこなすようになった。もらう側から選ぶ側に立場は変化した。
 また自分宛に依頼が来た。話を聞くと、ゴブリン討伐という、よくある害獣駆除だった。しかし、依頼料が明らかに高すぎた。

「……この依頼は断らせてもらう。これだけの金額なら、然るべき所で頼めばいい」

「いえ、これはあなたにしか頼めないのです。どうかお願い致します」

 法外な依頼料に、断っても非正規の自分を指名してきた事、何か裏はあるだろう。だが、そんなものに興味は無いし、意味もない。だってそうだろう? 俺がやるかやらないかなんだから。

 「……金は前払いだ。それさえ守ってくれればなんだっていい」

 金を受け取り、ゴブリン討伐へ向かう。これまでと変わらない、いつものことだ。
 
 
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