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6 思案
しおりを挟む無事ジア帝国からシュバルツィア領の貿易港にたどり着いた私は、魔獣車に乗ってシュバルツィア公爵邸に向かっていた。
そして、私の護衛を務めてくれるのは、シュバルツィア騎士団──通称、黒の騎士団。
なぜ「黒の騎士団」なのかと疑問だったけれど、その理由は案外すぐにわかった。
「遡ること千年前、ルベスト諸侯連邦は六つの領土間で侵略戦争が行われていました。さらにこのシュバルツィア領では複数の犯罪集団や無法者たちがそれぞれ支配権を巡って争っており、内紛が後を絶たなかったといいます」
魔獣車に同乗していたラナ副団長の説明によると、千年前はその犯罪集団を一括りに黒の民と呼んでおり、名残りが今代にまで続いているのだという。
シュバルツィア公爵家を支える領内の貴族家門は、皆が黒の民の末裔。血筋なのか特性なのか、全体的に喧嘩っ早く普通の貴族家とは雰囲気が異なっているらしい。
黒の騎士団所属の人たちもほとんどが黒の民の子孫なんだとか。
そんな黒の民を統一させたのが初代シュバルツィア公爵であり、さらに初代シュバルツィア公爵とほか五人の領主の争いを沈静化させたのが、千年前の魔女──私、ということらしい。
(六つの領土が頻繁に争いを起こしていた事実は知っているわ。……あんまり交流はできなかったけれど、なんとか和解できたのよね)
ただ、六つの領土は争いが収まったあとで帝国下に入ったはず。しかし現在は魔女を信仰し、ジア帝国を含めたレグシーナ教団と対立している。
(千年も時が進んでいるわけだし、情勢が変わるのは当たり前よね。大陸図がこんなに変化しているのには驚きだけど)
前世の記憶が蘇る前はなにも違和感はなかったが、改めて目にしたテイル大陸地図は千年前とはかなり変わってしまっている。
(昔はルベスト諸侯連邦一帯と、ジア帝国合わせてひとつの大きな大陸国だったのに。地形が変動しているというより大地が海に沈んでしまっているのね)
そのためジア帝国とルベスト諸侯連邦を繋ぐ陸地は、現在シュバルツィア公爵領西方に広がる山脈地帯だけになっている。
しかもその山脈は『魔の樹海』といわれる獰猛な魔物魔獣の生息地で、横断不可能となっていた。
(うーん。千年前の私と、今の私の記憶の齟齬が出るたびに頭がくらくらする。こればかりは少しずつ頭に馴染ませるしかないってことかしら)
でも、前世の記憶が蘇ったとはいえ全部ではないのよね。
邪竜を封じたときのこともそうだが、魔女時代の記憶も抜け落ちている部分が多い気がする。
大聖女レグシーナという人にも全く身に覚えがないわけだし。
(誰かほかに生まれ変わっている人とかいないのかしら。そうすれば記憶の思い出し具合とかを比較できそうなのに。……まあ、いないわよね)
そんな都合の良い人物などいるわけないので、おとなしく自分の魔菅修復を進めて、もう一度精霊と交流できるようになったときにでも聞いてみよう。
千年前にいた精霊たちが今の時代にもいるかどうかは不明だけれど。
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