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6.涙
しおりを挟む朝食後、父も母も外出し、エイデンはナリエラと美術館デートの為にいそいそと出掛けてしまった。
お昼近くになっても、テオドリクスは起きてこないので、客間へそっと様子を見に行った。
客間のドアをノックすると中から返事がある。
「起きてらしたんですね。」
「ああ。」
「お腹空いてませんか?こちらに何かお持ちしましょうか?」
「では、昼食を一緒にどうだろうか?」
テオドリクスと客間で昼食を取ることにした。
「昨夜、眠れましたか?今朝は、朝寝坊したようですが…?」
「いや…食堂には行ったんだ…でも君達が話していたので…」
ナリエラとの話を聞かれてしまったのか。
しかも、私、結構怒ってたかも。
恥ずかし過ぎて、消え去りたい気持ちになる。
「大変お恥ずかしいところをお見せしました。申し訳ありません…」
頭を下げてお詫びしたのだけれど反応がない。
ちらっと下から見上げると、テオドリクスが仮面を外し、片手で目元を覆っている。心なしか耳と頬が赤い。
「テオドリクス様?」
「す、すまない…」
「何が???」
「う、嬉しかっ、たんだ。き、君が、お、俺を庇っ、てくれ、た、から…」
一気に首元まで、真っ赤になっている。
カタコト過ぎる!!
しかも、可愛い!!
「ちょ、待っ!何でテレるんですか!?」
椅子から立ち上がって、テオドリクスの背中をトントン叩く。
「落ち着いて…大丈夫だから…落ち着いて…」
私を見上げた顔が真っ赤で、目が潤んでいる。
「つらかったのね?いろいろ言われたのね?もう大丈夫!誰にもあなたのこと悪く言わせないから…」
そっと肩を抱いて、しばらく背中トントンを続けた。
「ありがとう…もう大丈夫だ…」
顔を上げたテオドリクスは、男前に戻っていた。
傷痕があっても、テオドリクスはカッコいい。
胸がいっぱいになって、テオドリクスの傷痕に口付ける。
はっ!としたテオドリクスの目から涙が溢れ、私はそれをそっと吸った。
「たまには泣いていいの。緊張がぷつんと切れるでしょう?そういうのも大事だから。」
「セシリア!」
テオドリクスは私にしがみついてきた。
この人はどれだけのものを抱え、どれだけ自分を追い詰めてきたのだろう。
周りの悪意にも傷付かない訳がない。
それを少しでも一緒に支えられたらいいなと思ってしまった。
「テオドリクス様、私と結婚してくださいませんか?」
この人の伴侶になりたいと切に願ってしまう。
人生を長く連れ添う者として。
「いいのか……?」
「はい。あなたがいいです。」
微笑んだ私をテオドリクスは担ぎ上げ、ベッドに横たえた。
「セシリアが欲しい。心も体も全て…」
そして、テオドリクスは私に口付けた。
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