【完結】 仮面で隠していた傷痕を撫でたら愛が溢れてきた大公様 〜普通じゃなかったらしい私の中の普通〜

紬あおい

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41.新事実

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テオドリクスが執務に復帰し、私は秘書のような立ち位置になった。
タダ働きでは申し訳ないと、お給料まで出るそうだ。
公爵邸に戻る訳にもいかないので、私は雇われてみた。

実際、結婚前に少し教わっていたので、執務については問題なくこなせた。

「セシリアは有能だな。」

「では、このまま終身雇用でお願い致します。」

「あははは!セシリア、しばらく会わない間に冗談が上手くなったな。」

テオドリクスは冗談だと思って笑うが、私は本当は妻なのだ。
離縁しない限り、ここが我が家なのだ。

テオドリクスが執務に復帰したからと言って、マービンが優秀なので、膨大な仕事が溜まっていた訳ではなかった。
執務の合間にティータイムが取れる位だ。

「テオドリクス様、そろそろ休憩しませんか?マービンのオススメの紅茶がありますよ。」

「いいね!休憩しよう。」

紅茶とクッキーの定番セットで寛ぐ。

「セシリアが居てくれて助かってるが、大丈夫なのか?」

「大丈夫とは何のことですか?」

「いゃ…このままここに居ることとか…首都に恋人が居るんじゃないかとか…」

テオドリクスは、しどろもどろに話している。

「私の性格はご存知でしょう?自分の意思に反することはしませんよ。テオドリクス様こそ、どうお思いですか?」

「どう…って…恋人など居ないぞ?恋とも言えない初恋がカタリーナ嬢だった位だしな。まあ、歳が近いからというだけの話だが。」

(はっ!?お姉様?第三皇子妃になった、あのカタリーナお姉様が初恋の相手?)

今更、この状態の時に聞く新事実に、私は思考が停止しそうだ。

「あ…そうだったんですね…全く気付きませんでした…」

「セシリアに気付かれる位なら、皆にバレるだろう?淡い初恋ってことにしといてくれ。」

「あ…すみません…ちょっと体調が…」

「大丈夫か!?」

「はい、少し休めば…申し訳ありません。失礼致します。」

その後、私はマービンにも声を掛け、執務を途中で抜けさせてもらった。

とてもじゃないけど、その場には居られなかった。
テオドリクスが起き上がれるようになってからは、私は客間で寝ていたので、そこで1人泣いた。
襲撃事件が起こってから、初めてまともに泣いたかもしれない。

姉と私は、見た目も性格もよく似ているのだ。
自慢の姉と似ていることが今までは嬉しかったが、今日ほど呪わしく思えた日はなかった。

いつかテオドリクスが記憶を取り戻すと信じて。
傍に居たいと願って。
唯一、傍に居ることを許された人間だと思って。

記憶が戻らなかったら?
お姉様の代わりだったとしたら?
テオドリクスが他の人を愛したら?

私は、どうしたらいいんだろう。
答えが出ない毎日に、だんだん疲れてきているのかもしれない。
それでもまだ私は、擦り切れていく自分を見ない振りをした。
そこには、テオドリクスを諦めたくない自分が居たから。
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