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1.十年目の恋
しおりを挟むマクレガン公爵家の次女の私、サラーシュは6歳の時から、ハミルトン伯爵家の次男リュシフェル様に恋をしている。
初めて会ったのは、リュシフェル様のお父様カール様とお母様ナターシャ様の葬儀の日だった。
旅行からの帰り道、長雨で地盤が弛み、馬車が土砂崩れに巻き込まれてしまったのだ。
救助に時間が掛かり過ぎて、助けられなかったそうだ。
たった八歳で両親を失ったリュシフェル様は、人目を忍ぶかのように庭園の茂みに隠れて泣いていた。
「あなた、何故泣いてるの?」
「お父様とお母様が死んじゃった…」
「寂しかったら、私がずっと傍にいてあげる!」
泣き崩れるリュシフェル様の頭を撫でながら、そんな会話をした記憶がある。
柔らかそうな金髪に潤んだ翠眼。
守ってあげたい。
そう思う程に、リュシフェル様は儚げで美しい男の子だった。
それから、リュシフェル様は、お兄様のフェルナンド様、祖父のグレゴリー様と共に、公爵邸に遊びに来るようになった。
私の父アーサーと母ミルドレッドは、リュシフェル様のご両親と友人だったのと、グレゴリー様に可愛がられてきたそうなので、この気の毒な兄弟を快く迎え入れた。
私六歳、リュシフェル様八歳、フェルナンド様九歳、私の姉リサーナ九歳で、歳の近い四人は、すぐに仲良くなった。
幼かった私は、会う度に「リュシフェル様大好き!」を飽きもせず九年繰り返し、十年目に突入した。
そろそろリュシフェル様の幼馴染を卒業し、本当の恋人になりたかった。
いずれは結婚したいと本気で思っていた。
まさか、十年目にして、こんな想いをするなんて考えてもいなかった。
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