15 / 22
14.家族旅行 ①
しおりを挟む家族旅行当日、エヴァンス公爵家+各婚約者達は、グラナードが手配した外見は地味で、キャビン内は豪華な馬車五台で出発した。
気を遣ってくれたのか、馬車はグレイシアと二人だ。
「お父様、随分と張り切って準備したわね!
こんな馬車、私でも初めてだわっ!!」
グレイシアは、うきうきとキャビン内の装備をチェックしている。
靴を脱げは、横にもなれる広さがある。
「グレイシア、こっちにおいで?」
手を引っ張り、抱き寄せると、小さなグレイシアはすっぽりと俺の胸に収まる。
「もう!サイファったら、馬車の中で不埒なことしないでね?」
(駄目か…きっとエミリオン殿は…)
「口付けは?それで我慢するから。」
ちゅっと頬に口付けると、グレイシアは恥ずかしがるが、嫌ではないようだ。
「もうちょっと深いの、いい?」
「いちいち聞かないで。」
グレイシアが照れ屋なことが分かっただけでも、俺は満足だった。
この旅行は、グレイシアがエヴァンス公爵令嬢として参加する最後の家族旅行だ。
一度だけ深い口付けをして、その後は景色を楽しみ、子どもの頃の思い出話をした。
夜も寝転んで、グレイシアを胸に抱いて眠るだけだったが、それでも俺は充分幸せだ。
グレイシアに会えなかった日々を思えば、この先の方がずっと長い。
むにゃむにゃと長台詞の寝言を言うグレイシアが、俺には刺さった。
(お転婆も寝相の悪さも、全部全部俺のものだ。
ねぇ、グレイシア、俺は君が考えているより、もっともっと君が大切だ。大好きだよ、グレイシア。)
グレイシアの涎を夜着で拭きながら、俺も眠りに就いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「着いたわね!湖が綺麗だわっ!!」
寝る子は育つというが、グレイシアは馬車の中でもよく寝ていた。
食べる、喋り倒す、寝るの規則性が乱れない。
往路の二日間、俺も規則正しい生活をしていた。
「さて、お兄様とヴェリティ様に声を掛けてくるわ。
ちっとも降りて来ないんだもの!絶対お兄様が無茶苦茶したんだわっ!!」
(いや、グレイシア…馬車っていうのも男の憧れっつうか、何つうか…)
俺は、エミリオン殿が少し気の毒に思えたが、妹ならではのツッコミを見に行くことにした。
「お兄様、ヴェリティ様!」
カチャリと内鍵を外す音がして、エミリオンが顔を出すと、グレイシアがほっとしたような声で話した。
「ああー、良かった!お兄様のことだから不埒なことを仕出かして、ヴェリティ様がふらふらだったりして?と私が呼びに来たの!!」
「グレイシア…お前、自分の兄を何だと思っているのだ…?」
(その通りだよな…?)
「拗らせ執着男に、浮かれぽんちで不埒な野獣が追加された感じかしら?」
「……………お前…」
(図星なことが、腹立たしいんだろう…)
ヴェリティは、キャビン内でくすくす笑っているが、若干疲労の色が見えた。
「強ち間違ってはいなかったようね…まあ、仕方ないわね。食事にしましょう!」
(バレバレだな…クソッ、グレイシアめっ!!って顔してるな。ククッ!)
流石のエミリオン殿も、グレイシアにはタジタジのようである。
このやり取りが見られなくなるのが惜しいなと、俺は思ったりもする。
でも、グレイシアをデルーミアに連れて行くことは、絶対に譲れない。
(エミリオン殿、すみません…)
その時、ヴェリティ様と目が合った。
全てお見通しのような、優しい笑顔だった。
297
あなたにおすすめの小説
私の意地悪な旦那様
柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。
――《嗜虐趣味》って、なんですの?
※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話
※ムーンライトノベルズからの転載です
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
最強魔術師の歪んだ初恋
黒瀬るい
恋愛
伯爵家の養子であるアリスは親戚のおじさまが大好きだ。
けれどアリスに妹が産まれ、アリスは虐げれるようになる。そのまま成長したアリスは、男爵家のおじさんの元に嫁ぐことになるが、初夜で破瓜の血が流れず……?
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい
隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫
◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。
◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。
◼︎超高速展開、サクッと読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる