【完結】嫌われ悪女は俺の最愛 〜グレイシアとサイファの恋物語〜

紬あおい

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14.家族旅行 ①

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家族旅行当日、エヴァンス公爵家+各婚約者達は、グラナードが手配した外見は地味で、キャビン内は豪華な馬車五台で出発した。
気を遣ってくれたのか、馬車はグレイシアと二人だ。

「お父様、随分と張り切って準備したわね!
こんな馬車、私でも初めてだわっ!!」

グレイシアは、うきうきとキャビン内の装備をチェックしている。
靴を脱げは、横にもなれる広さがある。

「グレイシア、こっちにおいで?」

手を引っ張り、抱き寄せると、小さなグレイシアはすっぽりと俺の胸に収まる。

「もう!サイファったら、馬車の中で不埒なことしないでね?」

(駄目か…きっとエミリオン殿は…)

「口付けは?それで我慢するから。」

ちゅっと頬に口付けると、グレイシアは恥ずかしがるが、嫌ではないようだ。

「もうちょっと深いの、いい?」

「いちいち聞かないで。」

グレイシアが照れ屋なことが分かっただけでも、俺は満足だった。
この旅行は、グレイシアがエヴァンス公爵令嬢として参加する最後の家族旅行だ。
一度だけ深い口付けをして、その後は景色を楽しみ、子どもの頃の思い出話をした。

夜も寝転んで、グレイシアを胸に抱いて眠るだけだったが、それでも俺は充分幸せだ。
グレイシアに会えなかった日々を思えば、この先の方がずっと長い。
むにゃむにゃと長台詞の寝言を言うグレイシアが、俺には刺さった。

(お転婆も寝相の悪さも、全部全部俺のものだ。
ねぇ、グレイシア、俺は君が考えているより、もっともっと君が大切だ。大好きだよ、グレイシア。)

グレイシアの涎を夜着で拭きながら、俺も眠りに就いた。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「着いたわね!湖が綺麗だわっ!!」

寝る子は育つというが、グレイシアは馬車の中でもよく寝ていた。
食べる、喋り倒す、寝るの規則性が乱れない。
往路の二日間、俺も規則正しい生活をしていた。

「さて、お兄様とヴェリティ様に声を掛けてくるわ。
ちっとも降りて来ないんだもの!絶対お兄様が無茶苦茶したんだわっ!!」

(いや、グレイシア…馬車っていうのも男の憧れっつうか、何つうか…)

俺は、エミリオン殿が少し気の毒に思えたが、妹ならではのツッコミを見に行くことにした。

「お兄様、ヴェリティ様!」

カチャリと内鍵を外す音がして、エミリオンが顔を出すと、グレイシアがほっとしたような声で話した。

「ああー、良かった!お兄様のことだから不埒なことを仕出かして、ヴェリティ様がふらふらだったりして?と私が呼びに来たの!!」

「グレイシア…お前、自分の兄を何だと思っているのだ…?」

(その通りだよな…?)

「拗らせ執着男に、浮かれぽんちで不埒な野獣が追加された感じかしら?」

「……………お前…」

(図星なことが、腹立たしいんだろう…)

ヴェリティは、キャビン内でくすくす笑っているが、若干疲労の色が見えた。

あながち間違ってはいなかったようね…まあ、仕方ないわね。食事にしましょう!」

(バレバレだな…クソッ、グレイシアめっ!!って顔してるな。ククッ!)

流石のエミリオン殿も、グレイシアにはタジタジのようである。
このやり取りが見られなくなるのが惜しいなと、俺は思ったりもする。
でも、グレイシアをデルーミアに連れて行くことは、絶対に譲れない。

(エミリオン殿、すみません…)

その時、ヴェリティ様と目が合った。
全てお見通しのような、優しい笑顔だった。
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