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11.お揃い
しおりを挟む何だかんだ、レオリックと子ども達の距離が縮まらない中、情操教育の一環と気分転換を兼ねて、エミリオンの絵画の個展を訪れることにした。
本来なら、人気の個展でチケットすら入手不可能なのだが、エミリオン直々に招待してくれた為、子ども達は大喜びだ。
「お母様、このドレスでいいかしら?それとも、こちらの方がいいかしら…悩みます…」
「リオラとリディアは、何を着ても可愛いわ!」
「お母様…それではいけませんわ。双子だからって、いつまでもお揃いのドレスを着るなんて、子どもっぽいではないですか。」
(見た目はそっくりなのに、こうも雰囲気が違う子達も珍しいわね。ふふ。)
子どもらしく悩んでいるリオラと、大人っぽさを求めるリディア。
それぞれの個性が出ていて、私は和む。
「では、クレシア達に綺麗にしてもらいましょう。そろそろお母様も支度しなくてはならないし。」
「「お母様も綺麗にして差し上げてね、クレシア!」」
「もちろんです。奥様もお嬢様方も、皆が見惚れる位にお美しくして差し上げます。」
久しぶりのお出掛けは、私や子ども達よりもクレシアを始めとする侍女達の方が気合いが入っていたようだ。
皆、何も言わないが、邸内の変化には敏感だ。
しかし、噂話が耳に入ることもなく、今までと変わらず、子ども達や私に尽くしてくれる。
これは、侍女長であるクレシアが皆をきちんと教育してくれている賜物だ。
私室に戻った私は、ベージュのシンプルなドレスを身に纏い、長い髪は緩く纏めて赤い薔薇の髪飾りで留めた。
ドレスがベージュなのは、髪も瞳も茶色の私には、可愛らしいピンクやブルーは似合わないと思うからだ。
せめて華やかな部分を、と薔薇の髪飾りを付けた。
コンコンコンと早めのノックの音がした。
このノックは、リオラだ。
「「お母様、ご準備は整いましたか?」」
リオラの後ろから、リディアもひょっこり顔を出す。
「ええ、こんな感じでどうかしら?」
「お母様、お綺麗です!」
「薔薇も可愛い!!」
「リオラのふんわりした薄紅色のドレスも、リディアの空色のドレスも、とても可愛いわ。」
女同士、わちゃわちゃしていると、クレシアが入ってきた。
「失礼致します。エヴァンス公爵令息様がお見えになりました。」
「えっ!?エミリオン様が?」
「お迎えに上がったと仰っておられます。」
「そんなお約束はしていないのだけど…リオラ、リディア、知ってた?」
「ううん、知らないわ。」
「お母様に会いたくて、来ちゃったのでは?」
「っ!?そんな訳ないでしょう!!」
私は不思議に思うも、双子達は大喜びだ。
皆で急いで玄関に行くと、エミリオンが笑顔で立っていた。
「エミリオン様、これは…?」
「ヴェニティ様やお嬢様達に早くお会いしたくて、お迎えに上がりました。今日の個展は貸し切りにしましたので。」
「……………」
「「やっぱり!!」」
エミリオンは、きょとんとして双子達を見ている。
「やっぱり、って?」
「なーいーしょっ!」
双子達は思惑通りでご満悦のようだが、私は動揺が隠し切れていない。
「それよりも、今日のエミリオン先生のお召し物、お母様とお揃いみたい!」
そうなのだ、私が驚いて無口になったのは、エミリオンの衣装が私と同じ色味のベージュのスーツだったからだ。
それよりも薄もなく濃くもなく、正に同じ色と言ってもいい程に似ていた。
「これは、凄い偶然だな。ヴェリティ様やお嬢様達とご一緒させていただくので、新調したのだが…リオラお嬢様、リディアお嬢様、どう?似合いますか?」
「はい、素敵です!」
「とってもお似合いです!!」
「ヴェリティ様は…如何ですか?」
「は、はい、とても素敵でお似合いだと思います。」
(私の語彙力が麻痺してる…これでは、双子達の復唱じゃない…はあ………四つも年下の令息にトキメクなんて。)
エミリオンは、くすくす笑っていて、まるで見透かされているように気恥ずかしい。
「さあ、そろそろ参りましょうか。今日は馬車でお迎えに上がりましたので、ゆったりと向かえますよ。」
エミリオンは、両手に双子達をエスコートして、ゆっくりと馬車に向かう。
時折、斜め後ろに視線を馳せ、私への気遣いも忘れない。
「さあ、リオラお嬢様、中へ。」
リオラは、勢いよくキャビンへ。
「お次は、リディアお嬢様。」
リディアも、キャビン内の豪華さにわくわくしたのか、いつもより勢いがある。
「さあ、ヴェリティ様もお手をどうぞ。」
「ありがとうございます。」
(っ!?これはっ!!!)
双子達は並んで腰掛けており、私はエミリオンと隣同士になる。
「お母様はエミリオン先生のお隣よ?」
「やっぱりお二人が並ぶと、お揃いみたいね。」
「ヴェリティ様とお揃いなんて、光栄です。」
揶揄う双子達と、余裕で微笑むエミリオン。
「お母様、今日はあまりお話しなさらないのね?」
リディアが心配そうに私の顔を覗き見ると、リオラもじっと見つめてくる。
「き、緊張しているのよ。エミリオン様の個展を貸し切りにしてくださるなんて…チケット制にまでするような人気の個展なのに…」
流石にエミリオンが素敵とは言えない。
それに、皇立美術館での個展が貸し切りなどという話も聞いたことがない。
いろいろなことが重なり、私は何で緊張しているのか、自分でも分からなくなっていた。
「そう緊張なさらずに。今回の個展は、十一日間の期間中、二部制のように趣向を変えて展示するのですよ。ちょうど中日の今日なら、前半と後半の両方の作品が見られるのです。実は、貸し切りではなく、入れ替えの為の休館なのですよ。」
「あら、そうでしたのね!ちょっとびっくりしましたが、それなら納得です。エミリオン様に揶揄われたのかしら?」
「ククッ、ちょっとした冗談でした。申し訳ありません。全ての作品を愉しんでいただきたいので、今日は一日お付き合いください。」
私の表情が弛んだのか、エミリオンはにっこりと頷いた。
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