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19.凍り付く言葉、慰める言葉
しおりを挟むあれから三ヶ月。
家庭教師ではなく、エミリオンが指導者となり、リオラもリディアも毎日必死に勉学に勤しんだ。
そして、難関と思われた皇立学園の特別試験に無事に合格した。
「「お母様!やりましたーーー!!」」
「おめでとう。よく頑張りましたね!」
今か今かと、私の執務室で待ち侘びていた合格通知を受け取り、母娘で抱き合って泣いた。
心配だったリオラは、一位のリディアに続いて二位で合格したと、エミリオンの極秘情報が届いたのは、私達の涙がやっと止まった頃で、その知らせを読んで、また皆で泣いた。
「リオラなら出来ると思ってたわ!だって、集中力と体力が凄いんだもの!!」
普段大人しいリディアが興奮している。
「リディアがいっぱい教えてくれたからよ!エミリオン先生も丁寧に教えてくださったけど、リディアが自分の時間を割いて教えてくれたから!!ありがとう、リディア、大好き!」
リディアに飛び付くリオラは、涙で顔がぐちゃぐちゃだ。
「力を合わせて頑張りましたね。あなた達はお母様の誇りよ!二人とも愛してるわ!!」
「「私達もお母様、だーいすきっ!!」
執事のファーガソンも侍女長のクレシアも、涙で目を潤ませている。
「お嬢様方なら、やり遂げると思っていました。」
「今夜はお祝いですね!コリンヌは早速厨房に飛んで行きました。」
「そうね、お祝いしましょう!」
クレシアの有り難い提案に、一同沸き立つ。
「お母様、エミリオン先生もご招待しましょ?」
「そうそう、エミリオン先生のおかげです。一緒にお祝いして欲しいです。」
「では、また速便を出しましょうか。ファーガソン、お願い出来る?」
「早速手配して参ります。」
ファーガソンは、珍しく小走りで執務室を出て行き、クレシアも食堂へと向かって行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして、夕方、エミリオンがやって来た。
手には二つの大きな色鮮やかな花束、後ろに立つ騎士は更に大きな何かを持たされている。
「エミリオン様、急にお呼び立てして申し訳ありません。双子達がどうしてもエミリオン様にも合格を祝って欲しいと…」
「いえいえ、私もリオラお嬢様とリディアお嬢様を、是非ともお祝いさせていただきたくて!喜んで飛んで来ました!!」
「「エミリオン先生、ありがとうございます!!」」
玄関先で盛り上がっていると、エミリオンに護衛騎士が耳打ちする。
「あっ、そうだった!花束はリオラお嬢様とリディアお嬢様に。こちらの絵は、ヴェリティ様にプレゼントです。」
「うわっ、花束綺麗です!」
「おっきな花束だーーー!お母様、お部屋に飾りたいです!!」
リディアとリオラは大興奮で喜んでいる。
「この花はクリスマスローズです。『合格』とか『私の不安を和らげて』という花言葉があるんですよ。リオラお嬢様とリディアお嬢様は、これから不安もあるでしょうが、元気に学園生活を過ごしていただきたいという願いを込めました。」
「エミリオン先生、嬉しいです。私もリオラも頑張ります!」
「お勉強について行けなくなりそうな時、このお花を思い出しますね!」
「その調子です。学園は遠くないので、不安に思うことがあれば、いつでも頼ってください。私は、これからもお嬢様方のお力になります。もちろん、ヴェリティ様のお力にも!」
エミリオンはにこやかに約束してくれた。
双子達と離れる時間が増えて不安になるのは、私の方かもしれない。
具体的に何を、という訳ではないが、エミリオンの笑顔は私を安心させた。
「こちらの絵は、お食事の後に披露しましょう。」
護衛騎士に指示を出し、私の執務室に運んでもらった。
双子達はわくわくを隠し切れないが、お腹も空いたようだ。
「さあ、お食事の準備が整いましたので、食堂へどうぞ。」
「ファーガソン、お腹空きました!」
「お嬢様方のお好きな物ばかりですよ。たくさんお食べください。」
「「わーい!ファーガソン、大好き!!」
ファーガソンが呼びに来て、私達は食堂へと向かう。
双子達に大好きと言われたファーガソンは、優しい微笑みを返した。
食堂に着くと、いつもの三倍はありそうな品数で、テーブルいっぱいに双子達の好物が並んでいた。
「お誕生日みたいだねー、リディア!」
「そうだね!美味しそう!!」
厨房から料理長のケビンがケーキを持って来た。
「リオラお嬢様、リディアお嬢様、おめでとうございます。細やかですがケーキもご用意しました。」
「「ケビン、ありがとう!!」」
皆で賑やかな食卓を囲み、そろそろ食事を終える頃、突然レオリックが現れた。
「随分楽しそうだな。」
一瞬、時間が止まったかのように皆の動きも止まる。
「何だ?来てはいけなかったか?」
冷たいレオリックの声に、双子達は戸惑い、エミリオンは無表情だ。
「いえ、そんなことはありませんわ!リオラとリディアが皇立学園の特別試験に合格しましたので、お祝いをしていたのです。」
「ほう、俺は初耳だが?」
「申し訳ございません!私が旦那様への連絡を怠ってしまったからです。本当に申し訳ございません。」
「まあ、いい。」
「今からでもお食事を…」
「要らん。取り敢えず、リオラ、リディア、おめでとう。では、俺は離れに戻る。」
「はい…」
私の所為だ。
双子達の合格に浮かれて、レオリックの存在を忘れていた。
最近一緒に食事をしないからと、連絡を忘れるなんて大失態だ。
一瞬にして凍り付いた双子達の表情に胸が痛む。
「ヴェリティ様の所為ではありませんよ。」
多くは語らず、でも励ましてくれるエミリオンの気持ちは有り難かった。
双子達の前で、父親を非難しない心遣いを感じたからだ。
「お母様、ケーキも食べ終わったし、エミリオン先生の絵を見に行きましょう?」
「私も見たいです。ねっ?リディア!」
「もちろん!お母様、早く!!」
明るく話す双子達に胸が熱くなる。
(この場の空気を読んだのね…ごめんなさい…)
「さあ、皆様、絵を見に行きましょう!」
エミリオンの声に続き、私達は執務室へと向かった。
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