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31.双子達の帰宅 ②
しおりを挟む「エミリオン先生が…お父様に…?」
戸惑う二人に、エヴァンス公爵家からの提案を伝えると、更に驚いた。
「お父様が愛人と再婚…お母様はエミリオン先生と再婚、私とリディアは公爵家の…」
動揺するリオラは、ぶつぶつと呟き、頭の中を整理しているようだ。
反対にリディアはすんなり納得した。
「私は、お母様がお母様らしく生きることを望みます。エミリオン先生がお父様になるのは、まだぴんと来ませんが、エミリオン先生がお母様をお好きなことは気付いていました。絶対にお母様を幸せにしてくださるなら、私は賛成です。」
「やはりバレていたか…」
「個展の顔だけの絵で確信しました。薔薇の絵では、あれ?って思っただけでしたが、あの顔だけの絵は、お母様の目立たない黒子まで描かれていましたし。あんなに表情豊かにお母様を描けるなんて、もう愛でしょう?」
「その洞察力…お手上げだな…」
微笑みながら、あまりにきっぱりと話すリディアに、エミリオンの方が驚いた。
そこで、真っ直ぐに目を見て答えるリディアに、エミリオンは、双子達が向かい合う現実を、一つ一つ打つけていこうと考えた。
「長期休暇が終わって学園に戻れば、ブランフォード侯爵令嬢からエヴァンス公爵令嬢に立場が変わる。
人の噂にもなるだろう。それでも平気か?」
「今でも、エヴァンス公爵家様の贔屓で入学したのではないかと言われます。
それを実力で跳ね返すのが、私とリオラのやるべきことです。」
「しかし、ヴェリティ様の離縁と再婚は、また人の噂になるのは怖くないか?」
「ブランフォード侯爵家の離れで、お母様が体調を崩されていたと知った今の方が怖かったです。
コリンヌがお手紙を書いてくれなかったら…
エミリオン先生が助けに行ってくれなかったら…
お母様は死んでしまったかもしれません。
お母様が、生きて、笑ってくれるなら、私は人の噂なんて気にしません!」
リディアの顔付きは、とても子どもとは思えない位に大人びていた。
「私も、噂になんて負けません!
女のクセに騎士を目指してと揶揄われたりしますが、女だからと決め付ける人ほど大したことないですから。
お母様を守れる位、私は強くなりたいです。
だから、エミリオン先生、エヴァンス公爵家様のお力も貸してください。
エミリオン先生がお父様になってくださるなら、誰が相手でも負ける気はしません。」
リディアに影響されて吹っ切れたのか、リオラも大人びた顔をした。
「リオラ…リディア…あんまり早く大人にならないでと、いつも言っていたけど…
あなた達は、もうすっかり考え方が大人なのね…
学園でも大変だったのね…?
気を配ってあげられなくて、ごめんなさい…
本当にごめんなさい…」
私は、双子達への信頼と過信を取り違えていたのかもしれない。
まだまだ子どもで居て欲しいと口では言いながら、甘えていたのは私だった。
「お母様は謝らないでください。
親が親なら、子も子だなぁと思うような人は、たくさん居ます。
今までは、ブランフォード侯爵家が私やリオラの知る狭い世界だっただけで、一歩外に出ればいろんな人が居た、それだけです。」
「そうです、お母様のおかげで今まで優しい環境に居られたんだなぁって、リディアと感謝した日もありました。
それに、双子に産んでくれて良かったです!
私が力で、リディアが頭脳で、ムカつく奴をやっつけられますから。
戦闘力は二倍です!!」
にこにこ話す双子達は、この数ヶ月、二人でいろんなことに遭遇し、対処してきたのだと思うと、私は胸が痛くなった。
「すっかり頼もしくなって…リオラとリディアの母で良かったわ。」
「俺も仲間に入れてくれたら、戦闘力は三倍になるし、エヴァンス公爵家も入ったら凄いことになるな。ククっ!」
エミリオンは、楽しげに笑った。
「でも、エミリオン先生はお母様のお心をまだ掴めてらっしゃらないのでしょう?
そこは頑張っていただかないと、お父様とは呼べませんわ。」
「そうそう!エミリオン先生って、揶揄うのは得意だけど、意外とシャイなのでは!?」
相変わらず、恋愛小説を読んでいるのか、双子達はエミリオンに容赦なく疑問を打つける。
「ぁ…ぃゃ、その…それは、正式に籍を入れたら…ゆっくりと…」
「あははっ、やだっ、エミリオン様ったら、たじたじっ!あはははっ!!」
真っ赤になって小さくなるエミリオンを見て、私は声を上げて笑ってしまう。
「リオラお嬢様、リディアお嬢様、エヴァンス公爵令息様は、ヴェリティ様を笑わせる天才かもしれません!」
「お母様が笑って居られるなら、エミリオン先生ではなく、近いうちにお父様と呼ぶかもしれませんね。」
コリンヌが得意げに話すと、リオラが笑顔で話しリディアが頷く。
「では、俺がヴェリティ様のお心を掴む話は、今はちょっと置いといて。
エヴァンス公爵家にヴェリティ様と君達を迎える手続きを、正式に進めていいかい?
ブランフォード侯爵とは、他人になってしまうが、本当に後悔しないか?
今は思うところがあっても、リオラとリディアの血の繋がった父親は、ブランフォード侯爵ただ一人だぞ?」
「「後悔なんてしません!」」
双子達は、きっぱりと言い切った。
真っ直ぐにエミリオンの顔を見つめる瞳には、何の迷いも感じられない。
「分かった。父上や母上と相談して、早急に手続きをする。
この休みが終わるまでに、手続きを終えて、俺とヴェリティ様の結婚披露パーティと、君達の誕生パーティも開こう。」
エミリオンは、急ぎ足で部屋を出て行った。
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