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48.似てきた色合い
しおりを挟むそして、パーティ当日。
ジェスティン陛下の計らいで、私達はパーティ会場となる皇宮の大広間に向かった。
控え室となる広い客間には、エヴァンス公爵家勢揃いで、華やかな雰囲気を醸し出している。
そんな中、煤けたような茶色の髪と珍しくもない茶色の瞳の私は、自分だけが浮いている気がして、少し気落ちしていた。
そんな僅かな変化をエミリオンが見逃す筈もなく、すっと隣に寄り添った。
「ヴェリティ、どうした?」
「皆様、華やかだなって…私は髪も瞳も平凡で。」
エミリオンは、ふわりと私を抱き締める。
「ヴェリティの柔らかな茶色の髪も瞳も、俺は大好きだよ?
さらさらな髪はずっと触っていたいし、その瞳はヴェリティが笑うときらきらして、ずっと見つめていたい。
俺の大好きなものにケチを付けるのは、ヴェリティでも許せないなぁ。
それに、今日のドレスは最高に似合ってるし、本当は誰にも見せたくない。」
「エミリオン様は、私に甘過ぎますね。エミリオン様も素敵ですよ。ふふ。」
「それに、俺達、髪も目も似ているよ?ヴェリティが気付いていないだけで。」
「そんなこと…」
エミリオンの瞳を見つめた時、グレイシアが話し掛けてきた。
「お兄様の仰る通りよ?同じ家に住み、同じ物を食べ、一緒に笑って生活していたら、お二人は似てきたわ!
受け答えも、笑いのツボさえ同じじゃない。
ヴェリティ様、自信をお持ちになって?
お兄様は、ヴェリティ様を望んで、ごねてごねて、ごねまくって結婚したのだから!!」
エミリオンに言われ、グレイシアに後押しされると、不思議とそんな気がしてくる。
「エミリオン様もグレイシア様も、ありがとうございます。」
「それに!リオラやリディアの髪や瞳の色が変化してきている気がするの。
二人は、体に変化がある年頃じゃない?
安定してきたら、あの子達も我が家の色になるかもしれませんね。」
そう言えば、双子達の髪は透き通るような金髪から、落ち着いた色合いになってきている気がするし、瞳も翡翠色だった筈が光に当たると琥珀色のような黄色を帯びて見える時もある。
「ヴェリティ様、髪や瞳は本当は問題じゃないわ。
人は表情よ。どんなに整った顔立ちでも、お兄様が怒りを我慢して薄ら笑いを浮かべると、身の毛が弥立つ程、不気味だもの。」
「おいっ、グレイシア!また、お前はっ!!」
「不気味なエミリオン様って!あはははっ!!」
そこへ、リオラやリディアと手を繋いだグラナード公爵が近寄って来る。
「楽しそうだな、ヴェリティ。」
「「お母様、どうしたの!?」」
「今日もグレイシア様が面白くて!」
「リオラとリディアには、また後でお話ししてあげるわね。そろそろパーティ会場に行かなくちゃ。」
「「はーい!!」」
「では、リオラとリディアは、じぃじとこのまま手を繋いで行こうな。」
「「はい、お祖父様!!」
私はすっかり気分が楽になり、エミリオンと腕を組む。
「ヴェリティ、大丈夫だからね。皆が居る。」
「はい!頼りにしてます、旦那様!!」
「ーーっ!?」
真っ赤になったエミリオンを見て、私は落ち着きを取り戻した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
パーティは、ジェスティン陛下主催の高位貴族の親睦会と称して、急遽開催されたものだ。
若干無理があると私は思っていたが、ジェスティン皇帝陛下は、たまに自費でこういうパーティを開くらしい。
「陛下は、楽しいことが好きなんだよ。
父上を呼び出す口実にもなるし、パーティの後は兄弟で過ごせるからね。
本当に仲が良いんだ、あの二人は。」
エミリオンがくすくすと笑っていると、ジェスティン陛下の挨拶が始まった。
「急遽集まってもらって、ありがとう。親睦会という名ではあるが、皆が息災にしているか、たまには顔が見たくてな。
それと、エヴァンス公爵家にめでたいことがあったので、それの報告も兼ねている。
エヴァンス公爵家の皆、こちらへ。」
グラナード公爵は双子達と手を繋ぎ、ゆっくり前に出る。
続いて、ファビオラ夫人とグレイシア。
最後に、私とエミリオンだ。
エヴァンス公爵家一同が横並びに整列すると、会場からは響めきが起こった。
「エミリオン・エヴァンスが、この度やっと結婚した。
長年想い続けた女性と結婚し、双子の親となった。
急なことではあるが、私は甥のエミリオンの幸せを心から祝福したい。
それに、娘となった双子のリオラとリディアの誕生会も兼ねている。
皆も一緒に祝ってやってくれ。」
難攻不落と言われた帝国の憧れの公子の筈が、いきなり結婚し、双子の父となれば、会場の響めきの意味は言わずと知れたものだ。
「ヴェリティ様、戦闘開始よ?」
両陛下のファーストダンスを眺めながら、グレイシアは、いつもの無邪気な笑顔から氷の微笑となった。
「次は、お兄様とヴェリティ様よ。ダンスはお兄様に身を任せれば大丈夫。
リオラとリディアは、お父様にまかせて!って言うか、じぃじは孫から離れる気はなさそうだわ。
はい、お二人さん、いってらっしゃい!!」
私自身も、社交の場に出た回数は少ないが、ダンスは得意な方だ。
両陛下のダンスが終わり、エミリオンと踊り始めると、会場から囁く声が聞こえる、
「ヴェリティ、やるじゃないか。とても踊りやすいよ?」
「エミリオン様は慣れていらっしゃるのね?」
「そりゃあ、公爵令息だからね。ひと通りの社交辞令は網羅している。でも、ヴェリティとずっと踊りたかった。今、夢がまた一つ叶ったよ。」
体幹のぶれないエミリオンは、ふわりと私を持ち上げて、ターンした。
「「おおーーーっ!」」
「素敵なご夫婦ですわ!」
探るように見ていた会場の人々が一斉に声を上げた。
「ほら、ヴェリティの魅力が皆に伝わってしまった。もう帰ろうか?」
エミリオンが少しむくれた顔をしたので、ヴェリティは笑ってしまう。
「エミリオン様、私はエミリオン様の妻でしょう?誰にも負けない位、私はエミリオン様が大好きです。」
耳元で囁くと、エミリオンが微笑み、ダンスも終わる。
「あと二回、踊らなきゃな!」
気を良くしたエミリオンは、立て続けに私と踊った。
楽しくて嬉しくて、軽やかに踊る私達は、じっと見つめる瞳には、まだ気付いていなかった。
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