【本編完結・新章スタート】 大切な人と愛する人 〜結婚十年にして初めての恋を知る〜

紬あおい

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47.ドレスは戦闘服

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双子達が長期休暇に入り、もう半分過ぎてしまった。
早いものだと思いながらも、双子達は毎日のように、グレイシアを師として勉学に励んでいた。
リオラはジオルグと剣の鍛錬、リディアはエルドランド殿下と外国語にも励む。
活き活きとした双子達を見ながら、私はエヴァンス公爵家が与えてくれた環境と幸せに日々感謝する。

「グレイシア様、本当に良くしていただいて、ありがとうございます。双子達も楽しく学べる環境を喜んでいるようです。」

「あら、私こそヴェリティ様に感謝していますわ。あのお兄様を手懐け…いえ、夢中にさせていただいて。あんなに幸せそうなお兄様、初めて見ましたわ。」

「手懐けって、ふふふ。手懐けられたのは、私の方かもしれません。誰かに頼ることを教えていただいて、信頼と安心を与えてくれて。エミリオン様のような方と結婚出来て、本当に幸せです。」

「そんなこと言ったら、お兄様、天まで昇ってしまいますわ!」

「それは困ります!!」

グレイシアとくすくす笑っていたら、エミリオンがやって来た。

「楽しそうだな。何の話?」

「ヴェリティ様がお兄様と結婚出来て、本当に幸せって惚気ていたの!」

「ちょっ、グレイシアさまっ!」

「俺の方が幸せだ。」

エミリオンは微笑んで、私を後ろから包むように抱き締める。

「はいはい、脱  童  貞  の余裕ですわね!」

「ちょっ、グレイシア!」

「あらまぁ、ご夫婦で同じ反応!似てくるのですね?」

グレイシアには勝てないと、私とエミリオンは顔を見合わせ笑った。

「それより、パーティの衣装のフィッティングをしなければなりませんわ!デザインは、今回は任せていただいているので、サイズだけ調整しましょう?」

「双子達のお勉強の面倒も見ていただいているのに、申し訳ありません。」

「やだ、ヴェリティ様ったら!好きでやっているのよ?リオラもリディアも、物凄い勢いで吸収していて、私もやり甲斐があるわ。だから、そういう時は、ありがとうって言って?」

「はい、ありがとうございます!」

「どう致しまして!では、今日の午後にでもフィッティングしましょう。お兄様もお付き合いくださいね!」

「ああ、頼むよ。」

「では、私はそれまでリオラとリディアの先生をしてきまーす!!」

グレイシアは、普段の淑女はどこへやら?
走って双子達の元へ向かった。
その後ろ姿が弾むように楽しそうで、私はほっこりしたのだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



そして、午後のフィッティングの時間。
女性と男性に分かれて、サイズを調節する。
ファビオラ夫人、グレイシア、ヴェリティ、リオラ、リディアは、それぞれデザイナーのアシスタントにサイズを測られ、騒然とした光景が広がる。

飾られたドレスは、ヴェリティでも耳にしたことがあるデザイナー、イヴ・カルーレの物だ。
デザインは違えど、エヴァンス公爵家の色とも言えるショコラ色のドレスが並んでいる。

ファビオラ夫人と私は、マーメイドラインのドレスだが、私の方が少しオレンジが入ったようなショコラ色だ。

「ヴェリティ様は、すらっと背が高いし、若いから少し明るめのショコラ色にしたの!やっぱりスタイルが良いから、オフショルダーのマーメイドラインがお似合いだわ。豊かなお胸も、お兄様に怒られないぎりぎりのデザインにしたつもりよ?
お母様のワンショルダーは、大人の女性の色気満載で、お父様の趣味だけど。ふふふ!」

満足げに話すグレイシアは、双子達とお揃いにも見えるAラインのドレスだ。
違いは、双子達は美しいレースのハイネックで露出を抑え、グレイシアはデコルテちら見せのボートネックというだけだ。

「これなら遠目で見ても、エヴァンス公爵家って分かるわよ?お父様やお兄様も加われば完璧!しかも、あの二人は無駄に背が高いから、きっと目立つわ。」

ひと通りフィッティングが終わり、イヴ・カルーレが笑顔でグレイシアに近付く。

「グレイシアお嬢様、これでは私の仕事がなくなってしまいますわ!」

「あら、イヴはこれを完璧に仕上げるのか仕事でしょう?私のアイデアを形にしてくれる唯一のデザイナーだもの。」

「帝国一と自負しております、このイヴ・カルーレをこき使うのは、グレイシア様だけですわ。」

言葉と裏腹に、イヴ・カルーレは楽しそうだ。

「イヴ、こちらがヴェリティ様よ。あっ、もうお義姉様って呼ばなくちゃね?」

「エミリオン様の愛しのお方ですね?やっと想いが叶ったのですね!」

「ちょっと、イヴったら、親戚のおばちゃんみたい!」

「それはそうですよ。エミリオン様もグレイシア様も、まだ私が駆け出しのデザイナーの時からのお付き合いですもの。
もう、かれこれ二十年になります。
ファビオラ様に見い出していただかなかったら、私は今でも街のお針子でした。
そして、エミリオン様がご結婚なさるなんて、こんなに嬉しいことはありませんわ。
ヴェリティ様、初めまして!!」

「イヴ様、初めまして、ヴェリティです。素敵なドレスをありがとうございます。双子達も喜んでいるようです。」

イヴ・カルーレは、双子達の方を見て微笑んだ。

「ヴェリティ様やお嬢様方には、初めての戦闘服になりますわね。」

「せんとうふくっ!?」

「そうでございますわ。社交の場は、時に戦場よりも熾烈な戦いが繰り広げられますもの。
まあ、このエヴァンス公爵家に対抗する勇者が居れば、のお話ですが。
ヴェリティ様は初めてですから、しっかりとエミリオン様のお隣に立っていただく為のドレスを準備致しましたわ!」

「イヴ、ぐっじょぶ!」

グレイシアは親指を立ててイヴ・カルーレと微笑み合っていた。
私は、戦闘服という言葉に重みを感じ、パーティではしっかりしなくちゃと、ひっそりと気合いを入れた。
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