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68.エミリオンの嫉妬と不安 *
しおりを挟むオーレリアの事件から十日。
サイファの怪我は超人的な回復を見せ、無理をしなければ日常生活を送れるまでになっていた。
それでもグレイシアは、献身的にサイファの面倒を見ている。
庭園で、朝の散歩をするグレイシアとサイファを見ながら、エミリオンはヴェリティと四阿で茶を飲んでいた。
「グレイシアは『駄目夫製造機』になりそうだな。」
「そういうところ、ご兄妹でお揃いですね、ふふ。」
その呟きを聞いて、ヴェリティは微笑む。
「笑ったな?我が妻には、お仕置きが必要かな?」
「きゃっ!」
すっとティーカップを横に除け、ヴェリティを膝の上に乗せる。
「もう、エミリオン様ったら!急に何を!?」
ヴェリティの頬を、エミリオンの大きな手のひらが包む。
エミリオンの指先は少し冷たく、瞳を覗き込むと、笑顔の裏に疲労の色が伺えた。
「エミリオン様が、このところ毎日お出掛けだったのは、もしかしてブランフォード侯爵にもお会いになったのですか?」
ヴェリティは、エミリオンのこの顔付きや、急に甘えてくる仕草に覚えがあった。
エミリオンが、ブランフォード侯爵家に契約に行った日も、こんな顔をしていたのだ。
「エミリオン様、私に隠し事を?」
「いや…そうではないのだが…」
珍しく歯切れの悪いエミリオンに、ヴェリティは戸惑った。
「私には…言えないこともありますよね。」
ヴェリティは、そっとエミリオンの胸を押し、膝から降りた。
「明日、リオラとリディアが帰って来るそうですから、ちょっと準備してきます。」
「えっ!?あっ…ヴェリティ…」
エミリオンの声は届かず、ヴェリティは邸へと歩き出した。
(まだまだ私は、エミリオン様やエヴァンス公爵家の頼れる存在にはならないのね…)
誰かを頼れる有り難みや、嬉しさを知ったヴェリティは、自分も頼られたいという気持ちもあった。
しかし、いつまでも守られているだけの自分が情けなく思えていた。
(どんどん我儘になっていく…こんなんじゃ駄目なのに…)
邸の玄関まであと少しという所で、走ってきたエミリオンに抱き締められた。
「ヴェリティ、すまない!」
「ーーっ!?」
そのまま横抱きにし、エミリオンはヴェリティを二人の私室まで走って運んだ。
「ちょっと、何を!?」
ベッドに下ろされたヴェリティは、エミリオンを驚きの目で見つめる。
「エミリオンさまっ!?」
エミリオンは、着ていたシャツを脱ぎ捨て、ヴェリティに覆い被さり、激しく口付けた。
「ちょっ、待っ!」
くちゅくちゅと水音が響く中、エミリオンの左手はヴェリティの頭の後ろをしっかり掴み、右手はドレスを脱がしている。
「エミリオン様?どうして!!?」
あっという間に、ヴェリティは生まれたままの姿にされ、エミリオンは胸に吸い付いていた。
「ヴェリティ…ヴェリティ…」
くるくると蠢く舌に胸の頂を弄ばれ、陰核をふるふると摘ままれ、ヴェリティはいつしか快楽の波に飲まれる。
「ああぁん、エミリオン様…」
エミリオンは、ヴェリティの膝裏を掴み左右に広げると、じゅっと音を立てて吸い付いた。
性急な行為なのに、ヴェリティの膣は潤みを増し、エミリオンはじゅるじゅると舌先で堪能する。
「あっ、ああぁん、そんなに、だめっ!エミリオンさまっ、どうして!?」
「ヴェリティ、愛してる、ヴェリティ!俺のものだ、誰にも渡さない!!」
エミリオンも生まれたままの姿となり、唆り立つものをヴェリティの秘所に当てがうと、一気に奥まで突き立てた。
「んあっ、エミリオンさまっ、ああっ、深いっ、ああぁー!」
「ヴェリティ、ヴェリティ!!」
いつもの気遣いはなく、ただ欲望のままに抽送を繰り返すエミリオンに、ヴェリティはただ翻弄される。
「愛してるよ、ヴェリティ、吸い付いて離してくれない、ああー、気持ちいい!」
「待って、エミリオン様、おかしくなる!待って!!」
「駄目だ、待たない!ヴェリティ、好きにイっていいから!!もっと乱れて、めちゃくちゃに!!!」
最奥を味わうエミリオンに、ヴェリティの声は届かない。
今はただ、ヴェリティと溶け合って、狂ってしまいたい。
「あっ、ああん、もう、ほんとに、あああー、イくっ、イっちゃうーーーっ!」
「クソっ、締め過ぎだっ、ヴェリティ、はっ、んん、イきそうだ、出すぞ、ヴェリティ!孕め!!」
びゅるるると熱い飛沫が放たれると、ヴェリティの下腹に温かいものが広がる。
「ああぁ、まだ出てる、止まらない…善い…」
エミリオンは、ヴェリティを強く抱き締め、最後の一滴まで最奥に飲み込ませるように、腰を押し付けた。
「愛してるんだ、ヴェリティ…俺には、君だけなんだ…」
脱力したエミリオンは、ヴェリティの胸に顔を埋めた。
「……気は…済みましたか…?」
ヴェリティは、エミリオンの額の汗を指で拭い、そっと話し掛ける。
「………すまない…自分勝手だった…」
「大丈夫ですよ、エミリオン様がそうしたかったのは、何か意味があるのでしょう?
こんなことでも、お役に立てれば、私は幸せですから。」
ヴェリティの声があまりにも優しくて、エミリオンは絶句した。
「………怒ってもいいのに…」
「怒ってますよ、自分に。エミリオン様が素直に頼れないのは、まだまだ私が未熟だから。」
「そんなことはない!俺が………」
「言いたくなったら、教えてください。」
ヴェリティは、エミリオンの頬を撫でる。
「ブランフォード侯爵と会った。奴は、最北端の荒れ地の子爵になるか、この国から追放される。
陛下と父上がデルーミア王国との話し合いで、そう決めた。
ヴェリティが知ったら、ブランフォード侯爵に気持ちが動いてしまわないか、不安だった…
双子達の父親だし、君は優しいから…信じてるけど、やっぱり不安で…」
「もしかして、私が同情して、ブランフォード侯爵とヨリを戻すとでも?」
エミリオンは、ヴェリティから視線を外した。
「エミリオン様、ちゃんとこっちを向いてください。」
上目遣いでエミリオンがヴェリティを見ると、頬を染めた笑顔のヴェリティが居た。
「エミリオン様が嫉妬を露わにする姿って、可愛らしいんですね。
十年結婚していましたけど、恋をしたのはエミリオン様が初めてですよ?
やっぱりエミリオン様と居ると、心が騒がしいです。
愛しているのに、恋もしている感じです。
こんな気持ちを与えてくれて、ありがとうございます。
私、エミリオン様から離れるなんて、考えられないです。
飽きられても嫌がられても、ずっとお傍に居ます。」
ヴェリティはエミリオンを抱き締め、口付けた。
「ヴェリティ…すまない…疑っていた訳じゃないんだ…
いろんなことがあって、疲れてしまったのかもしれない。」
大きな体を小さくして、エミリオンはヴェリティにしがみ付く。
「そんなエミリオン様の姿が見られるのは、私だけでしょう?
疲れたら、疲れたと言っていいんですよ。
さっきみたいなエミリオン様も好きですよ?」
「あんな自分勝手な行為でも?」
「はい、いっぱい求められているみたいで嬉しかったです。
でも、事情も話してくださると、もっと嬉しいかなぁ。」
「そうか………ヴェリティの前では、いつもカッコつけて居たかったけど、いいのか、こういう俺でも…」
エミリオンは、力が抜けたように笑った。
「エミリオン様が私のままでいいと言ってくれるように、エミリオン様も自然体でいいんですよ。
どんなエミリオン様でも、私は愛しています。
でも、そろそろ嫉妬はやめて?私の夫はエミリオン様で、よそ見なんてしませんから!」
ヴェリティの中では、レオリックへの想いは、既に過去となっていた。
自分の夫も、リオラやリディアの父親も、エミリオンだけなのだ。
「ヴェリティ、愛してる。」
「私も愛しています。明日は、私達の娘を一緒に迎えましょう?」
「そうだな、リオラやリディアに久しぶりに会えるのが楽しみだ。
でも、あと三回は付き合って?」
「へっ?さんかい!?」
エミリオンは、何だかんだ愛しのヴェリティを夕方まで抱き潰し、別の意味でヴェリティに怒られたのは言うまでもない。
それでも、エミリオンは、怒った振りをして、自分の胸をぽかぽか叩くヴェリティを愛おしく見つめていた。
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