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70.リオラの夢
しおりを挟む晩餐会の後、リディアはエルドランドと話すと言って客間に行き、リオラは食堂で考え事をしていた。
一人で難しい顔をしているリオラを心配したクレシアとコリンヌは、執務室で書類を見ていたファビオラ夫人に報告した。
「大奥様、リオラお嬢様の様子がいつもと違います。
お時間がありましたら、お声掛けをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「あら、時間は作るものよ?早速見てくるわ!」
「「ありがとうございます。」」
ファビオラは、クレシアとコリンヌの気持ちを有り難く受け止め、リオラを見に行った。
「リオラ、どうしたの?」
「あっ…お祖母様…」
確かに、いつもの元気はなく、リオラがしょんぼりしているように見える。
「急な一時帰宅と、いろいろあって疲れちゃった?」
「……はい…少し…でも、それよりもリディアがあんなにいろんなことを考えていたんだなぁって思って…
私は、それに比べたら、何にも考えていなかったなぁと…ちょっと悲しくなりました…」
ファビオラは、俯くリオラの頭を撫でた。
「リオラの明るさが、ヴェリティとリディアをたくさん元気付けてきたじゃない。
それが二人の力になってきたんじゃない。
ねぇ、リオラは大人になったら何になりたい?
今は剣術もお勉強も頑張っているけど、夢はなぁに?」
「私は……私もお母様を守りたくて剣術を始めました。
男の子より力はないけど、身軽な分、すばしっこいし、誰にも負けたくない気持ちはあります。」
「そうのね。では、騎士団に入りたい?」
「出来れば、近衛騎士団に入りたい気持ちもあります。
でも、お母様をもっとお傍で守りたくて…」
ファビオラは、リオラの気持ちを優先するにはどうしたらいいか、少し考えた。
「そうだ!エヴァンス公爵家の騎士団を作っちゃおうかしら。リオラはその団長を目指したら?」
「えっ!?公爵家の騎士団?」
「そう!今は護衛騎士が居るけど、それを一纏めにして騎士団にするの。
最初から団長は任せられないけど、このまま努力すれば可能性はあるわ。」
リオラは、ヴェリティを守ることと、夢が同時に叶うファビオラの提案に心が弾んだ。
「お祖母様、私、やりたいです!頑張ってみたいです!!」
「そう。リオラは頑張り屋さんだもの。やりたいように、やってみなさい。」
「お祖母様…あのぅ…」
「ん?なぁに?」
「ジオルグも…一緒でいいですか…?ずっと一緒に頑張ってきてくれたし、私の剣の師匠だし…」
ファビオラは、そこでぴんと来た。
「リオラは、ジオルグが好きなのね?」
(あぁ…私にもそんな時が…あったかしら?)
真っ赤になって俯くリオラが微笑ましい。
子どもらしさと、大人の女性への過渡期が入り混じるも、ちゃんと恋する女の子の顔をしている。
「ジオルグの努力次第ね。エヴァンス公爵家は、身内でも甘やかさないの。
あんなんでも、グレイシアはエミリオンと並ぶ程の人間よ?
エミリオンは天才肌だけど、グレイシアは努力家なのよ。
リオラもグレイシアをお手本にしてみなさい。
でも、向いてないと判断したら、騎士団の話はなくなるわ。
まだリオラは十一歳、ジオルグも十三歳でしょう?
可能性を信じて、頑張れる歳だわ。
甘やかさないけど、ばぁばも応援する!」
「ありがとうございます!」
きらきらした笑顔のリオラを、ファビオラは羨ましくも思う。
「若いっていいわねー!で、リオラ、ジオルグの気持ちは聞いたの?」
「あ…はい…ジオルグは私をずっと守ってくれるって…」
「守るだけ?好きって言われてないの?」
「身分が…違うからと…でも!私が結婚しても、護衛騎士として一緒に居たいって…」
急に悲しそうな顔をするリオラを見ていると、ファビオラも悲しくなる。
身分の差がリオラの恋の邪魔をする。
「リオラ、あと三年、必死に頑張りなさい。
この国の成人は十六歳。ジオルグが成人するまであと三年。
それまでにジオルグが騎士団で活躍出来る位に成長したら、ジオルグの身分は、ばぁばが何とかしてあげる。
グラナードやエミリオンも説得するわ。
そして、リオラはあと三年で皇立学園を卒業しなさい。
お勉強と剣術の両方を頑張るのは大変だし、リディアは皇太子妃教育もあるから、リオラ一人で頑張るしかないけど。
努力は裏切らない。リオラなら出来るわ!」
「お母様も言ってました。努力し続けることが大切だって!お祖母様、私、頑張ります!!」
「いい子ね、リオラ。あなたなら大丈夫よ。ばぁばもじぃじも、皆で応援するわ。」
抱き付いてきたリオラが可愛くて、どんな力技を使おうと、必ず努力するだろうこの子の夢は叶えようとファビオラはそっと決意した。
「じゃあ、内緒でデザート食べちゃおうか!レモンゼリーがあるの。」
「はい、お祖母様、いただきたいです!」
食堂の様子を伺っていたクレシアとコリンヌは、すぐにテーブルに並べた。
「クレシアとコリンヌも一緒…いいですか?お祖母様。」
「いいわよ!四人で女子会しましょう!!」
思いがけずデザートにありついたコリンヌは、にこにこと準備する。
「準備出来ましたー!」
「こら、コリンヌ、喜び過ぎよ?」
クレシアは諭すが、ファビオラは上機嫌だ。
「気にしなくていいわ。楽しくいただきましょう。」
身分を超えた女子会は盛り上がり、リオラはすっかり元気を取り戻した。
「お祖母様、とても楽しかったです!ありがとうございました。」
「リオラ、ゆっくりおやすみなさい。ばぁばは、いつもあなたの味方よ。」
リオラはファビオラの頬にちゅっと口付け、コリンヌと私室に戻って行った。
「クレシア、ありがとう。これからも些細なことでもいいから、教えてちょうだい。」
「はい、リオラお嬢様もリディアお嬢様も、繊細なお年頃ですから、よろしくお願い申し上げます。」
「何か、クレシアもあの子達のばぁばみたいね!」
「とんでもございません。でも、お小さい頃からお世話をさせていただいておりますので、お幸せになるのも見届けたいと思います。」
「是非、そうしてちょうだい。」
「畏まりました。」
エミリオンとヴェリティの仲の良さを見れば、孫が増える日も遠くないだろう。
可愛い孫のお世話をする者は信頼出来る者に限るとすると、クレシアは適任だ。
ファビオラは『ばぁば同盟』が出来たかもと、密かに微笑んだ。
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