82 / 90
81.初めての結婚式
しおりを挟むいよいよエミリオンとヴェリティの結婚式当日。
身重のヴェリティの負担にならないように、細心の注意を払っての結婚式だ。
エヴァンス公爵家一同は、朝から馬車を連ねて、
セント・ヴァレル大聖堂に向かった。
イヴ・カルーレは、またまた大人数のアシスタントやお針子を引き連れ、朝から大聖堂でエヴァンス公爵家の皆と合流し、それぞれの支度を手伝った。
「さあ、仕上がりましたよ!ヴェリティ様、完璧な花嫁様ですわ!!」
鼻息荒く語るイヴ・カルーレに、ヴェリティはくすくす笑いが止まらない。
「ふふ、私ではないみたいです。これはイヴ様のお力のおかげですわ。本当にありがとうございます。」
「何をご謙遜を!?ヴェリティ様の魅力を引き出すのが私の仕事でございます。元々ないものは引き出せません!
周りの皆様のお顔をご覧になって?
皆様、見惚れてらっしゃるでしょう?」
「「お母様、本当にお美しいです!」」
「ヴェリティ様、お兄様よりも早く拝見出来て、まさに眼福ですわっっっ!お兄様は、最初ベール越しでのヴェリティ様ですからね。」
「そうよ、ヴェリティ。ふっくらしたお腹も、更にヴェリティの優しさに華を添えて、本当に神々しい位に綺麗だわ!」
「お義母様、それは褒め過ぎです。ふふ!」
双子達もグレイシアもファビオラも、聖母のようなヴェリティに目を奪われていた。
普通なら『授かり婚』の花嫁は、世間からの目も厳しいだろうが、ヴェリティとエミリオンは既に皇帝陛下から結婚の承諾を得て、一年近く経っている。
二度目の結婚を非難する者は、エヴァンス公爵家にはおらず、他家に非難される筋合いもない。
それを非難するということが、どういった結末を迎えるかは、既に静かに知れ渡っているのだ。
「さあ、お兄様の所へ参りましょう。首を長くして待っていらっしゃるわ!」
「はい、皆様、後ほど。イヴ様も参列してくださいますよね。よろしくお願いいたします。」
「私まで、ありがとうございます。」
イヴ・カルーレは参列しても、ヴェリティの家族は、そもそも招待すらされていない。
噂を聞き付けたのか、ワーグナー伯爵家からの打診はあったが、グラナードとファビオラは、ぴしゃりと撥ね付けた。
エヴァンス公爵家に取り入ろうという魂胆が、見え見えだったからだ。
この佳き日は、くだらない欲望は排除し、本当に心から祝福する者だけで祝おうと思ったからだ。
「扉の前までは、私とリディアがエスコートしますね?ベールがありますから、お母様はゆっくり歩いてください。」
「ちょっと変わった結婚式かもしれないけれど、扉が開いたらお父様が迎えに来ていますから、私とリオラと向かいましょう!」
「分かったわ。お願いね、リオラ、リディア。」
「「はい!!」」
双子達は宝物のようにヴェリティの手を取り、ゆっくり歩き出す。
「お母様、お腹の赤ちゃんと一緒に、お式を楽しんでくださいね!」
「私とリディアは、中でお待ちしてます。」
双子達の手がそっと離れ、お腹に優しく触れた後、係の者と式場へ入って行った。
(最初の結婚は、お式を挙げなかったから、二度目の結婚で初めての結婚式だわ。
緊張するわね…一度目はサインしただけだったもの…
レオリック様は今頃、遠くの地へ移住されたのかしら?
もうお会いすることもないでしょうね。)
微かに聞こえる牧師の開式の辞に耳を澄ましながら、ヴェリティはレオリックに、心の中で別れを告げた。
そうしてぼんやり考えていると、扉が静かに開かれ、そこには満面の笑みを浮かべたエミリオンが立っていた。
「ヴェリティ、お手をどうぞ。」
(あぁ、私の旦那様…誰よりも私を大切にして、愛してくれる人。)
純白のタキシードを見に纏い、大きな手を差し出すエミリオンに、ヴェリティの視界がぼやける。
「ほら、ヴェリティ、行こうか。もしかして、泣いてる?まだ泣くのは早いぞ?」
「ぁい…」
ぎりぎり涙を堪えて、ヴェリティはエミリオンとヴァージンロードを歩き出す。
参列者は、エヴァンス公爵夫妻、双子達、エルドランド殿下にジェスティン皇帝陛下とエレノア皇后陛下、サイファ王太子殿下に、イヴ・カルーレだった。
(あれは…皇后陛下…お体が弱くていらっしゃると伺っていたのに…)
ジェスティン陛下は笑顔で小さく手を振り、エレノア皇后も微笑んでいた。
エミリオンの腕がぷるぷるしているのは、きっとこのサプライズ・ゲストにヴェリティが動揺していることに気付いたからだろう。
(エミリオン様ったら!夜はお仕置きだわっ。)
それでも、だんだんと落ち着いてきたヴェリティは、エミリオンと祭壇の前に立った。
澄んだ歌声の讃美歌斉唱、牧師の聖書の朗読や祈祷が厳かに行われ、誓いの言葉と指輪の交換へと進んでいく。
「新郎エミリオン・エヴァンスは、新婦ヴェリティ・エヴァンスを妻とし、今日から未来永劫、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、愛し、慈しみ、死が私たちを分かつまで、あなたに誠実を誓いますか?」
「はい、誓います。」
「新婦ヴェリティ・エヴァンスは、新郎エミリオン・エヴァンスを夫とし、今日から未来永劫、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、愛し、慈しみ、死が私たちを分かつまで、あなたに誠実を誓いますか?」
「はい、誓います。」
エミリオンもヴェリティも、お互いを真っ直ぐ見つめて誓い合う。
「では、目に見える誓約の印として、指輪を交換します。
先ず、新郎が指輪を手に取って、新婦の左手薬指にはめ、次に、新婦が新郎の左手薬指にはめてください。」
牧師に促され、エミリオンはヴェリティの指に、ヴェリティはエミリオンの指に、それぞれ指輪をはめた。
エミリオンの指先が少し震えていたが、ヴェリティが一瞬優しく握ると治まった。
ヴェリティもまた、緊張して指先が震えるがエミリオンも優しく握った。
「婚姻の誓約を立てたことで、お二人を隔てるものがなくなりました。
このことを表す為に、新婦の顔を覆っているベールを新郎が上げ、誓いのキスをします。」
エミリオンが、そっとヴェリティのベールを上げた瞬間、あまりの美しさに息を呑む。
「ヴェリティ、愛してる。大切にするよ。」
「私も愛しています。」
二人の唇が重なった瞬間、あたたかい雰囲気に包まれた。
エミリオンが、そっとヴェリティを抱き締めると、もうヴェリティの涙腺は耐えることを止め、静かに大粒の涙を溢した。
「これにて、神様と列席者の前でお二人が夫婦となったことを宣言します。」
牧師の宣言で、名実共にエミリオンとヴェリティは、神の名の下で夫婦となったことを実感したのだった。
ーーーーーーー
こちらの本編のスピンオフとして
『嫌われ悪女は俺の最愛~グレイシアとサイファの恋物語~
不定期更新中です
よろしければ、ご訪問ください╰(*´︶`*)╯♡
835
あなたにおすすめの小説
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う
ノルジャン
恋愛
「堕ろせ。子どもはまた出来る」夫ランドルフに不貞を疑われたジュリア。誤解を解こうとランドルフを追いかけたところ、階段から転げ落ちてしまった。流産したと勘違いしたランドルフは「よかったじゃないか」と言い放った。ショックを受けたジュリアは、ランドルフの子どもを身籠ったまま彼の元を去ることに。昔お世話になった学校の先生、ケビンの元を訪ね、彼の支えの下で無事に子どもが生まれた。だがそんな中、夫ランドルフが現れて――?
エブリスタ、ムーンライトノベルズにて投稿したものを加筆改稿しております。
〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした
ごろごろみかん。
恋愛
前世の記憶を取り戻した伯爵令嬢のリンシア。
自分の婚約者は、最近現れた聖女様につききっきりである。
そんなある日、彼女は見てしまう。
婚約者に詰め寄る聖女の姿を。
「いつになったら婚約破棄するの!?」
「もうすぐだよ。リンシアの有責で婚約は破棄される」
なんと、リンシアは聖女への嫌がらせ(やってない)で婚約破棄されるらしい。
それを目撃したリンシアは、決意する。
「婚約破棄される前に、こちらから破棄してしてさしあげるわ」
もう泣いていた過去の自分はいない。
前世の記憶を取り戻したリンシアは強い。吹っ切れた彼女は、魔法道具を作ったり、文官を目指したりと、勝手に幸せになることにした。
☆ご心配なく、婚約者様。の修正版です。詳しくは近況ボードをご確認くださいm(_ _)m
☆10万文字前後完結予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる