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7.パーティでの出来事
しおりを挟む馬車が会場に到着すると、当たり前のように、先に降りたレリウスが手を差し出す。
私は、急な婚約者の変化について行けず、少し戸惑いながら手を乗せる。
「リリンス、今夜は堂々と俺の隣に立っていて欲しい。君が俺に惚れる位、カッコいいところを見せてやるよ。」
(あ…これは両家にとっても大事なパーティだった!気合いを入れなきゃね。)
「承知しました。カッコいいお姿、楽しみにしております。」
そして、レリウスと私は腕を組んで会場入りした。
今後の事業展開を想定しているので、整備された道路を保有する領主や、港に隣接する土地を持つ領主から挨拶していく。
レリウスはお得意の笑顔と話術で、どんどん交友を広げていく。
そして、さりげなく私を婚約者だと紹介し、決して一人にはしない。
この辺りは、流石だなと感心する。
「そろそろ休憩するか?ひと通り、顔合わせしたい人には会ったからな。リリンスも疲れただろう?」
「あまりお役に立ててないですが…少し喉が乾きました。」
「大丈夫だよ。充分役目は果たしてくれている。ちょっと飲み物を取ってくるから、そこの窓側のソファに座ってて!」
レリウスは飲み物を取りに行ってくれた。
私は靴を脱ぎたい位に足が疲れたが、まさかここでは脱げないので、ちんまりソファに座った。
それだけでも、だいぶ体は楽だ。
レリウスは、グラスを二つ手に持ったまま、どこかの令嬢に捕まってしまった。
(モテる人は大変ね…)
そんなことをぼんやり考えていたら、頭の上で声がした。
「ご機嫌よう、リリンス伯爵令嬢。」
顔を上げると、ワイングラスを持ったエリザベート・ダドリー公爵令嬢が立っていた。
エリザベートは、以前から私に嫌味を言うので、最も会いたくない人だった。
しかも、酔っ払いのようだ。
無視も出来ないので、仕方なく立ち上がる。
「ご機嫌麗しゅう、エリザベート公爵令嬢様。」
「あなた、レリウス様とあちこち挨拶回りしていたけど、本当にあの方と結婚なさるの?いくら政略結婚でも、身の程を弁えたら?」
(あー、まただ。この人、レリウス様が好きなんだろうな…)
「身の程ですか…いろいろ思い通りに行かないのが貴族の結婚だと思いませんか?」
エリザベートは、ふんっと鼻を鳴らす勢いで捲し立てる。
「あなたが身を引けばいいじゃない!レリウス様には私のような高貴な身分がぴったりなのよ!」
「それは、レリウス様に言ってくださいませ。私の一存で決められることではありませんので。」
エリザベートは、怒りに任せて、持っていたワイングラスを、思いきり私に投げ付けた。
パリーンというグラスの割れる音が会場に響き、レリウスが気付いて駆け寄ってきた。
「リリンス!これは…血が出ているじゃないか!!」
ワイングラスが私の胸元のネックレスのサファイアに直撃し、割れた破片が首に当たったようだ。
大した傷ではないが、出血していた。
「ダドリー公爵令嬢、これはどういうことだ!」
「いえ、あの、これは手が滑って…」
レリウスの剣幕にエリザベートは真っ青になり、周りは騒つく。
「ほほぅ、手が滑ったのか。随分とお粗末な言い訳だな。俺の婚約者にケガをさせたこと、厳重に抗議する!」
「婚約者って…政略結婚で仕方なく結婚する女でしょう?私の方がっ!」
縋るようなエリザベートをレリウスは一瞥する。
「全く以て魅力を感じないね、君には。俺はリリンスを愛してるからね。今度リリンスに危害を加えたら、いくら公爵令嬢でも覚悟するんだな!」
レリウスは、私を抱き上げると、会場を後にし馬車に乗った。
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