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7.騎士とお嬢様、それぞれの気持ち
しおりを挟むジークフリードの家は、各部屋のインテリアに統一感があり、落ち着いた雰囲気だった。
木の質感に拘った家具に、アイボリーを基調としたカーテンが合っていたり、ソファの座り心地が物凄く良かったり。
住む人の趣味が最大限に活かされていた。
「素敵な部屋ね!でも、公爵邸の私の部屋と似てない?」
ジークフリードは、言われて初めて気付いたようで、呆然としていた。
「そうかもしれません…お嬢様の影響を知らず知らずのうちに受けていたかも…?」
「私の為のお家みたいね。ふふ。」
ジークフリードは、片手で顔を覆っていた。
そして、物凄く動揺していた。
気付かないうちに、レナリアに影響されていたこと、思っていた以上に大切な存在だったこと。
たくさんの想いが頭に浮かぶ。
「ま、まあ、そのように思って快適に過ごしていただけたらいいと…」
「まさか、私が婚約解消することを想定していた?ジークもルーセント殿下の女遊び、知ってたもんね…」
「あっ…まぁ…ここ一年、人が変わったように…どうしたんでしょうね…」
「五大公爵家のバランスを取る為らしいわ。私と結婚したら、セルフォート公爵家だけが力が強くなることを懸念して、ってね。我が家に婿入りする筈だったのに、一体何を言ってるんだろう…そして、自分の行動でそれも無くなったのにね。待つ訳ないじゃない、あと一年。ねぇ、ジーク。私ってルーセント殿下にとって何だったのかしら…?」
「それは……」
先ほどまでの明るさとは違う、レナリアの悲しげな表情にジークフリードは何と答えていいか分からなかった。
ルーセントの意図は別として、行動が目に余ることは、ジークフリードも情報として掴み、不快感を感じていた。
しかし、護衛が主人に伝えるべきことからは排除していた。
「私ね…それなりにルーセント殿下を愛していたと思っていたの。八歳から婚約して、優しかったし楽しかったわ。でも、急に態度が変わって…令嬢の手を取って見つめ合ったり、そこまでは我慢出来た。でも、人気のない場所で令嬢を抱き締めていたり、その頃から私は耐えられなくなってきたわ。心の中にどす黒いものが沸々と湧いてきて、笑顔で居ることが難しくなってきたの。」
レナリアは目に涙を浮かべ、窓の外を見ながら話を続ける。
「ある日、ルーセント殿下が令嬢を抱き寄せて口付けたのを見てから、私はおかしくなっちゃったわ。今ルーセント殿下は、何処で誰と何をしているのだろうって、そればかり気になって。でも、自分で調べたり見に行かなくても、お節介な人達はわざわざ教えに来てくれて。信じたい気持ちと信じ切れない気持ちが、ぐるぐる渦巻いて、頭が変になりそうだった。そして、見てしまったの。パーティを抜け出して、部屋で令嬢と裸で抱き合うルーセント殿下を…」
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「それからも、しばらくはルーセント殿下の行動を確かめることが止められなかった。でも、気付いたの。私の行動は、愛じゃなくて執着だって。長い間一緒に居たから、絶対私の元に戻って来るって、変な自信があったのかもしれないわ。でも、流石に他の女を抱いてるところを見たら、すーっと気持ちが覚めたわ。しかも、ルーセント殿下はあと一年、これを続けるって言ったの。それを聞いて思ったわ。私の時間を返せ!このバカ皇子!!お前なんか、こっちから捨ててやる!!ってね。ふふふ。」
ジークフリードは場違いなのに、泣きながら笑うレナリアを美しいと思った。
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ジークフリードは思わずレナリアを抱き締めた。
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