【完結】 その身が焼き切れるほどの嫉妬をあなたにあげる

紬あおい

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28.ルーセントはご機嫌

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その夜、ルーセントは激しい後悔に襲われていた。
レナリアに土下座させたかった訳ではなかった。
ただ、あの騎士が気に入らなかったのだ。

レナリアは、何故あの騎士の為に土下座までするんだ。
確かに公爵家なら護衛騎士は必要だ。
しかし、あの騎士の目は普通ではない。
レナリアに懸想している目だ。
俺を見る目付きが尋常じゃない。
殺意すら感じる。
レナリアは俺のものなのに。

それに、レナリアがあの騎士を見る目もおかしい。
レナリアがあんなふうに笑う顔を、俺は随分見ていない。
幼馴染と言える頃から婚約して、ずっと隣で見ていた笑顔を、何故今はあの騎士だけに向けるんだ。
腹が立って仕方ない。

俺は漢を上げる為に行動しているし、レナリアはそれに理解を示した。
レナリアの俺への愛は変わらない筈だ。
だから、あんな騎士は気にすることはないのだろう。
そうだ、所詮あの騎士は平民だ。
公爵がお人好しだから、きっと採用したに違いない。

それに、俺以外の者が近付いても、あの騎士はレナリアを守るのだろう。
きっとそうだ、俺がいちいち気にするような男ではない。
もし今度会ったら、レナリアの未来の夫として、寛大な心を見せてやろうじゃないか。

尊い生まれの者は、身分の低い奴らにも優しくしないとな。
そんな俺の姿を見て、レナリアは感動するに違いない。
寧ろ、愛が深まるかもな。

ただ、あの騎士は俺が公爵家に入ったら、絶対にクビにしてやる。
レナリアには、腕の立つ高位貴族生まれの騎士を付けよう。

俺の愛するレナリア。
完璧な夫となり、レナリアを守る為、人脈は広がった。
レナリアが妻となり、パーティに顔を出せば一躍社交界の華だ。
美しい妻の隣には完璧な俺。
誰もがお似合いだと思う理想の公爵夫妻になるに決まってる。

結婚まであと数ヶ月、結婚したら、今遊んでる令嬢達は疎遠にしよう。
レナリアと蜜月を過ごし、充分可愛がってやり、子どもが三、四人産まれれば、公爵家は安泰だろう。

側室はそれからだ。
公爵たる者、側室が居た方がレナリアの負担も減るだろうし、箔がつくとキャメロン公爵も言っていたしな。
何せ俺は絶倫だからな。
また若い令嬢が列をなして寄って来るだろう。
その中から適当に選んで遊べばいい。
毎晩、レナリアをヒィヒィ言わせるのは可哀想だしな。

昼間は胸糞悪かったが、未来を考えると楽しい気分になるな。
持つべきものは、高貴な身分の親と妻だ。
そこに俺の交友関係が加われば、怖いもの無しの人生だ。

そう言えば、父上の誕生パーティの日は、大事な発表があると言っていたな。
俺とレナリアとの結婚か?
いやいや、兄上の結婚か?
第一皇子が未婚で、俺とレナリアが先に結婚式を挙げるのはまずいのか?

まあ、祝い事だから変な話ではないだろう。
はっきりしないうちは、レナリアをエスコートする訳にはいかないし、ロザリンドでも伴うか。

ルーセントは、気楽に考えていた。
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