【完結】 私の全てを狂わせた暴君

紬あおい

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2.微笑む妻


「セドリック様、おはようございます。お着替えが済んだら、朝食に行きましょう。」

私は、毎朝、寝起きの悪いセドリックを起こし、着替えを手伝う。
普通は使用人が行うのだろうが、このクリフト伯爵家では、両親が恋愛結婚だった為、妻が夫の身支度をすることが当たり前のことだった。

セドリックは、最初の二日は私をやんわり拒否したが、改めて使用人を呼ぶことが使用人も混乱させ、この伯爵家では異例の事態と認識したようだ。
三日目からは、私に身支度を手伝わせるようになり、ひと月経つ頃には一緒に起床し、お互いの服を選ぶまでになった。

「この家は変わってるな。侯爵家では、母上が父上の支度を手伝うなど見たことがない。でも、俗に入っては俗に従えというしな。」

「申し訳ありません。もしお嫌でしたら、私達の代からは使用人がお手伝いすることを慣例化すると宣言してしまえば済むことですから…」

「いや、このままでいい。君との結婚生活が不仲だと思われるのは本意ではない。」

「承知しました。」

「別に…俺は君を拒否している訳ではないんだ…徐々に慣れていくようにするから、よろしく頼む。」

「そうなのですね。こちらこそ、よろしくお願い致します。」

私は微笑みながら、セドリックの身支度を手伝い、食堂へ向かう。
使用人達は、夫婦仲が良いと認識している。
閨では一切手を触れないことなど、さして重要ではない。

「セドリック様、今日も一日、カーターと執務のご予定でしたよね?何かご不便なことや失礼がありましたら、言ってくださいね。」

「いや、カーターは優秀な執事だし世話になっている。執務も丁寧に指導してもらってるから大丈夫だ。」

「そうですか。侯爵家とは勝手が違うとは思いますが、セドリック様はもうお一人でも大丈夫とカーターは申しておりました。でも、何かお手伝い出来ることがありましたら、お申し付けくださいね?」

「ありがとう。君がいろいろ気を配ってくれるので、問題なく過ごしている。君は、昼間はお茶会だったよな?夜にまた会おう。」

「はい。」

セドリックは、たったひと月で、日常的な執務を完璧に熟すようになっていた。
あとは、会計報告など年に数回行う非定常な執務を覚えるだけだ。
父のギルバートの信頼を得ているのは、こういった真面目で努力家な面なのだろう。




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本文中の『俗に入っては俗に従え』につきまして

あまり耳慣れない表現ですが…
他の土地や社会に入ったら、その土地や社会の慣習や風俗に従うのが良いという意味のことわざです。
自分の価値観や習慣に固執せず、その場の状況に合わせることが大切だという教訓を表しています。

『郷に入っては郷に従え』の方が一般的ですが、現代では、新しい環境に身を置く際に、今までのやり方に固執せず、新しい場所のルールや習慣に従うべきだという場面で使われることが多いそうです。

同じような表現ですが、「従うべき」という強めの表現よりは「合わせることが大切」という優しげな意味合いと自主性を持つので『俗に入っては俗に従え』を採用しました。
感想 7

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