妹に婚約者を奪われた公爵令嬢は只今辺境伯に溺愛されています

紬あおい

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57.動き出す時間





一頻り楽しい時間を過ごした後、私達は皇宮を出て、リュグラン公爵家に滞在することにした。

「話し合わなければならないことがあるが、それはまた後日としよう。リュグラン公爵夫妻も孫と会いたいだろうからな。」

「暫く皇都に滞在するのでしょう?皇宮にも泊まりなさいね?次はもっと時間を取るわ。」

「ひと月程滞在する予定です。是非、三つ子に庭園や温室も案内してあげてください。」

「ああ、私と皇后で案内しよう。」

両陛下は微笑んで三つ子の頭を撫でた。

「お祖父様、お祖母様、好きっ!」

レオンがかがんだ両陛下の頬にちゅっと唇を当てると、ロイドやリュカも続き、にかにかと笑った。

「あぁぁ…可愛い子達よ、会えて良かった…」

カレノイド陛下の目に涙が滲み、マリアフィール皇宮に至っては涙が溢れ出していた。

「ヴェルシス、リルア、こんな可愛らしい三つ子を…ありがとう…」

「良い子達ね…ヴェルシスが父親になったのね…リルア、ありがとう。」

「「「また来ます!!!」」」

元気に叫ぶ三つ子は、両陛下を小さな手で抱き締め、私達は皇宮を後にした。






その後、馬車はリュグラン公爵家を目指した。
皇宮からは三十分足らずの短い時間だが、華やかな街並みに三つ子は目を奪われているようだった。

そして、リュグラン公爵家に馬車が到着すると、応接間で父のケインと母のノクリアが待っていた。

「リルア、お帰りなさい!」

母は泣き笑いのような顔をし、父は表情を固くしていた。

「ロイド、レオン、リュカ、お祖父様とお祖母様だ。」

「「「っ!?」」」

「あっ…私のお父様とお母様よ?」

三つ子は、再び現れた祖父母という存在に困惑していたのだ。

「母上の父上と母上も…僕達のお祖父様とお祖母様…?」

「そうだよ、お祖父様とお祖母様は二人ずつ居るんだ。」

ヴェルシスもロイドに今更ながらの説明をして、少し笑った。

「あなた達が赤ちゃんの頃、お祖母様はアルカロイドまでお世話をしに来てくださったのよ。」

「そうそう、三つ子だから小さめな赤子でね、でも、産まれた時から可愛らしくて良い子達だったの。」

「「「そうなんだ!」」」

母が懐かしそうに話すと、三つ子は喜んだ。

「お祖父様、僕はリュカです。初めまして!」

「僕はロイド、こっちはレオンです!」

挨拶をする三つ子に、父は今まで固かった表情が一気に崩れた。
しかし、胸がいっぱいなのか、ぎゅっと目を閉じた父から言葉が出ない。

「お祖父様、いたいいたいなの!?」

「撫で撫ですると痛くないんだよ!母上がいつもしてくれるの!!」

「大丈夫だよ、僕達が居るよ!」

レオンもロイドもリュカも、真剣に心配し始め、父の背中を撫でたり、手を握ったりしていた。

その時、母が穏やかな表情で三つ子に言った。

「皆優しい子ね。大丈夫よ、おじいちゃんは。
嬉しくて胸がいっぱいになると、お話が出来ない時もあるの。」

「「「そうなんだ!」」」

三つ子は体調不良でないことを喜び、また父に話し掛けた。

「お祖父様は僕達に会えて嬉しいんだね!僕もレオンもロイドも、とーっても嬉しいです。
お祖父様は母上と同じ綺麗な髪の毛とお目々ですね!」

はっとして父はリュカを見つめた。
私と父は銀髪翠眼で、顔立ちも似ている。
短い時間でそこに気付いたリュカに、父は驚いたようだ。

「賢い子だな…」

呟いた父の目から涙が溢れ出した。

「嬉しい時も涙が出ちゃうんだよね!」

「母上もたまにそうなります!父上も!!」

「えっ!?ヴェルシスもなの?」

「こらっ!余計なことをっ!!」

賑やかな声が響く応接間。
久しくこんな時間は過ごしていなかったであろう父。

三つ子と会ったことで、父の止まっていた時間が動き出したのだと私は思った。




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