【完結】 今度は初恋から始めよう〜エミリオンとヴェリティのもう一つの恋物語〜

紬あおい

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30.安堵と喜びと悔し泣きと






ヴェリティが目覚めたのは、翌日の昼だった。
傍には、ヴェリティの手を握るエミリオンが疲れた顔で寄り添っていた。

「エミリオン様…」

「ヴェリティ!体は!?」

「ちょっと吐き気がしますが、大丈夫です…
それより、あんなことになって申し訳ありません…
でも、何もされていません!どうか…どうか信じてください!!」

「ヴェリティは、何も悪くない。大丈夫だ、ヴェリティは、必死に抵抗して何もされていない。俺がちゃんと見た。傍を離れて、すまない。」

エミリオンがヴェリティを優しく抱き寄せると、ヴェリティも素直に体を預けた。
その時、エミリオンの体が震えていることに気付いたヴェリティは、この優しい夫を心から愛していると感じた。

「エミリオン様、謝らないで!
助けてくれて、ありがとうございます。
絶対に来てくださると思って、私、頑張って抵抗したんです!」

「ああ、ヴェリティは頑張った。凄く、凄く頑張った。」

微笑むヴェリティに愛しさが募り、エミリオンはその頬に口付けた。
そして、エミリオンはヴェリティに懐妊を告げる決心をした。

「ヴェリティのお腹には、俺達の子が居る。ヴェリティが頑張ってくれたから無事だ。」

「…えっ…?」

ヴェリティは驚きのあまり、しばし黙り込んでいたが、その頬には大粒の涙が伝っている。

「護れて…良かった…」

小さく呟いた後、ヴェリティは微笑んでエミリオンにしがみ付いた。
エミリオンは、ヴェリティが妊娠をしっかりと受け止めていることに安堵し、背中を摩った。

「エミリオン様は、とても若いお父様になっちゃいますね。
でも、楽しみです。私、良い母になります。」

「ヴェリティは、そのままで良い母様になるよ。
ただ、しばらくは安静が必要だとイリスが言っていたが、穏やかに過ごそう。
俺が、必ず、いつも傍に居るから、安心して元気な子を産んで欲しい。」

「頼りにしてます、旦那様!」

弾けるような笑顔に、エミリオンはヴェリティの強さを感じていた。

(母は強しって本当なんだな。でも、しっかり護っていかなくては!)

もう一度、ヴェリティの頬に口付けて、エミリオンは一旦寝室を出て行った。

そして、エミリオンは、廊下の隅で膝から崩れ落ちた。
ヴェリティの前では、絶対に見せてはいけない感情が溢れ出してきたからだ。

僅かな時間だからと傍を離れたこと、体調不良に気付かなかったこと、全てがエミリオンを責め立てた。

(護ると誓ったのに…)

この日、この瞬間、絵に描いたような順風満帆な日々を過ごしてきたエミリオンは、人生で初めて悔し泣きした。




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