【完結】 今度は初恋から始めよう〜エミリオンとヴェリティのもう一つの恋物語〜

紬あおい

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32.兄と妹





グラナードとの話の後、エミリオンとグレイシアは執務室を出て、気分転換の為に庭園に出た。

「お兄様とお庭なんて、いつ以来かしら?
自由なお兄様に、遊んでもらった記憶なんてないわ。」

「そうか?これでも、グレイシアが小さい頃は、一緒に過ごしただろう?」

「あれは、一緒に遊んだとは言わないわ!」

グレイシアが庭園を駆け回る姿を横目に、エミリオンは、ベンチに座って本を読んだり、絵を描いていただけだった。
それでも、エミリオンは、グレイシアを見守っているつもりだったのだ。

「お兄様って、何を考えているか分からない人だと思っていたけど、愛情深いし、気性は荒かったのね。
特にヴェリティお義姉様のことだと、お顔付きも豹変するわ。」

「俺もそう思うよ。他人になんて興味がなかったのに、ヴェリティのことになると、感情が抑えられない。今回は、自分が許せなくて…
ブランフォード侯爵は、鞭打ちで玉を潰してやったし、あの馬鹿女の実家は、ちょっと突いたら破産したよ。
これ、ヴェリティには秘密にしてくれよ?」

初めて見た兄の弱気な顔に、グレイシアは驚きながらも、この人間臭い兄が大好きだと思った。

「お兄様は悪くないわ。ヴェリティお義姉様の傍を離れたのは、お兄様なりに今後の社交界でのヴェリティお義姉様のお立場を考えての行動でしょう?
悪いのは、人を人とも思わない扱いをする奴らは、自業自得よ!
玉潰し上等!!あの女も娼館にぶっ込めば良かったのよ!」

「そう言ってもらえて良かったよ。お前もたまには、まともなことを言うんだな。ククッ!」

「あははっ、お兄様より破茶滅茶じゃないわ!」

グレイシアは、心底可笑しそうに笑った。
そんな妹を見て、エミリオンは、そうかもしれないなと思う。

「なぁ、グレイシア。これからも、ヴェリティの良き相談相手になってやってくれ。
俺だけでは足りないこともあるだろうから。」

「当たり前ですわ!ヴェリティお義姉様だけでなく、産まれてくるお子も、私がしっかりお世話いたしますわっ!!」

「あはははっ、頼もしいな!」

握り拳で宣言するグレイシアに、エミリオンは声を上げて笑った。

「そうそう!お兄様は、そうやって元気で居なくちゃね?
起こってしまったことなど忘れてしまう位に、ヴェリティお義姉様に寄り添って、笑顔にして差し上げて?」

「グレイシア、ありがとな。お前に励まされる日が来るなんて…不思議な気分だ。」

「へへへっ、私も、それなりに成長しておりますのよ?
それに、ヴェリティお義姉様が大好きですの。」

「そうか。」

久しぶりに庭園に出て、咲き乱れる薔薇を眺めながら、エミリオンはグレイシアへの敬愛の念を抱いていた。

エミリオンからすると、今までは、自由で破茶滅茶なのはグレイシアの方だった。
しかし、今となれば、お互い似た物同士だと気付く。
そんなことが、何故かとても嬉しく思える日だった。




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