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32.胎動
ヴェリティは安定期に入り、悪阻のない穏やかな日々を過ごしていた。
元々少食ながらも食欲も増して、エミリオンはほっとしていた。
そんなある日、庭園を散歩しながら、ヴェリティはずっと気に掛かっていたことをエミリオンに尋ねることにした。
「エミリオン様、ブランフォード侯爵はどうなりましたの?」
エミリオンは、一瞬眉を顰めたが、ヴェリティの気持ちを尊重し、ガゼボで話すことにした。
レオリックとオーレリア への処罰の内容を一つずつ話すと、ヴェリティは思いの外、あっさりと受け入れた。
「そうでしたの。エミリオン様やお父様だけでなく、陛下まで動いてくださったのですね。」
「勝手に決めてしまったが、ヴェリティは…これで良かったのか?」
「はい、もう過ぎたことですから。
ただ結末を知りたかっただけです。
顔を合わせることがなくて、ほっとしました。」
やわらかな微笑みのヴェリティに、不安の色は見えなかった。
「ヴェリティは、赤子のことに専念してくれたらいい。」
「そうします。ーーーっ!?あれ?」
「どうした!?どこか具合でも??」
ヴェリティがエミリオンの手を取り、お腹に当てる。
「「動いたっっっ!!!」」
赤子の拳なのか踵なのか、ヴェリティのお腹の形を変える程、動いていた。
「凄いな、赤子とは…」
ぽこっと泡立つような胎動を感じたことがあっても、はっきりとした動きはこの日が初めてで、エミリオンと一緒に確認出来てヴェリティは嬉しかった。
「エミリオン様、もしかしたら、赤子は双子かもしれません。
何か、右と左が別々に動いたような気がします。」
「何!?双子?そう言えば、お腹が大きいかも?
でも、比較対象がないから分からないな。
よしっ!!すぐにイリスを呼んで、診てもらおう!」
安定期に入り、週に二回訪れていた女医のイリスは、急な呼び出しに、髪を振り乱してやって来た。
「どうされましたか!?」
「イリス、もしかしたら双子かもしれない。」
「ーーっ!?エミリオン様、少々ヴェリティ様と二人にしてくださいませ。」
エミリオンの言葉に、イリスははっとし、急いでヴェリティを診察する。
ヴェリティが精神的に安定し、赤子は順調に育っていたが、ややサイズが大きいとイリスは思っていたのだ。
「ヴェリティ様、失礼しますね?」
イリスがヴェリティのお腹に触れた瞬間、またもや大きな胎動を見せた。
ヴェリティのお腹を蹴り、ぐるりと回ったかのような動きは、恐らく一人ではないと思える程だった。
「ヴェリティ様やエミリオン様のご想像通り、双子ですね。前回診察した時よりも大きく成長されていますし、今の様子だと逆子が直ったようです。」
「えっ!?双子で逆子?」
「はい、お子様がぐるりと回ってくださったみたいですね。これは、お産まれになる前から、とても親孝行なお子様ですわ!」
「そうなのね。あなた達に逢えるのが楽しみだわ。」
ヴェリティが優しくお腹を撫でると、まるで拳を振り上げたように二つの膨らみを見せた。
「ふっ、お返事なさったのですわ。」
「あらまあ、良い子ね!あはははっ!!」
笑いを堪えながらイリスは言い、ヴェリティは声を上げて笑ったのだった。
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